Episode 9
夜中、ハヤタはヒナギクの自宅に来ていた。と言うのも、彼女に呼ばれたからだ。
「で、何で僕を呼んだの?何か訳があるんでしょ?」
その問いにヒナギクは真剣な眼差しでハヤタを見つめる。
「なっ、何かな?」
ハヤタは少し焦り、冷や汗を垂らした。
「いや、こうやって間近で見るとハヤテ君より格好良いなって」
「・・・・・・」
ハヤタは沈黙した。
「冗談よ。本気にした?」
(何を言ってるんだこの人は?)
「所で、そろそろ本題に入りませんか?僕に用が有って呼んだんでしょ?」
「うん、まあ、一寸相談したい事があって」
「相談したい事?」
「うん。実はハヤテ君の事なんだけど、最近ナギがべったりで近付けないのよ。そこで、あなたに頼みがあるんだけど、ナギを暫くの間ハヤテ君に近付かない様にして欲しいの。出来るかな?」
「ナギって、あのクソ生意気なチビですよね?まぁ、出来ない事は無いけど・・・」
この時、ヒナギクは思った。
(マリアさんは生意気じゃないのかしら?)
「で、決行は何時?やるからには本格的にやらないと」
ハヤタは燃えている。
(この人、ナギに何か恨みがあるのかしら?)
翌朝、ハヤタはSPの厳重な警備を掻い潜り、三千院家の屋敷内へ不法侵入した。
(さて、チビは何処だ?)
と、辺りを見回していると、シマウマ模様の虎、タマが何処からか現れた。
(なっ、何で屋敷内に虎が!?)
目を疑ったハヤタが驚いていると、タマが凄い形相で睨み付けて来た。
「虎の分際で睨み付けてんじねえぞコノヤロー!」
ハヤタは睨み返した。が、気に触れたのか、タマがいきなり襲い掛かって来た。
「誰だか知らないがムカ付く野郎だな。食い殺してやる」
「虎が喋んな!」
ハヤタは懐からハリセンを出し、正面から襲い来るタマをバシッと叩き付けた。
刹那、タマは後ろへ吹っ飛んだ。
「いってえな、何すんだボケェ!」
タマは涙目で怒鳴った。
「虎が喋るな」
「そんなのオレの勝手だろ!?」
「・・・もう良い、好きにしてくれ」
ハヤタは呆れ顔で言った。
「所で、ナギとか言うあのクソ生意気な餓鬼は何処にいる?」
「んっ、貴様、今お嬢を貶したな?」
タマは目をキラッと光らせ、ハヤタに襲い掛かった。
しかし、ハヤタはヒラリとかわす。
「虎如きが俺に敵うと思うな」
ハヤタは飛び上がり、直下型キックをタマにお見舞いした。
ドッ!──タマの頭にハヤタの足がめりこむ。
「ナギの下へ案内して貰おうか」
「イ・・・イエッサー・・・」
こうしてタマは、ハヤタを乗せてナギの部屋の前まで向かった。
「で、お嬢には何の用なんだ?SPを掻い潜って侵入するくらいだから、何か訳があるんだろう?」
「ナギを誘拐する。出来ればこの事は隠密に済ませたい」
キーッ!──タマは急に立ち止まった。
「何故止まる」
「そりゃ止まりたくもなるわい!お嬢を誘拐するだと!?何か考えてんだ!?」
「本当ならこんな事はしたくない・・・。だが、そうせざるを得ないんだ」
「殺す、テメエ食い殺す!」
タマは立ち上がり、ハヤタを廊下に落とした。
「そうか、邪魔をすると言うのだな?」
「当然だろ」
そう言ってタマは、ハヤタに襲い掛かった。
「鈍足」
ハヤタはそう呟くと、目にも留まらぬ速度でかわし、タマの背後に回り込んだ。
「悪いが、お前には暫くの間俺のシモベとして働いて貰う」
ハヤタは懐からどす黒いオーラを放った禍々しい首輪を取り出し、タマの首に巻き付けた。
「くっ、体が!貴様、何をした!?」
「呪いの首輪だ。それを填めた以上、俺に逆らう事は絶対に出来ん。
所でお前、俺をナギの下へ運ぶ途中だったよな?」
「御案内します。お乗り下さい」
タマはそう言って、ハヤタを背中に乗せた。
(クソッ、この首輪のせいで逆らえん・・・)
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