Episode 10
ハヤタを乗せたタマは、ナギお嬢様の部屋の前までやって来た。
「タマ、ご苦労だった」
ハヤタはそう言って、首輪を外してタマの背中から降りた。
「ふっ、これで俺は自由だな」
タマはニヤリと笑うと、ハヤタに飛び掛かった。が、ハヤタはヒラリと身をかわし、回し蹴りを放った。
タマはヒューンッと飛んで行き、一番端の壁にドカッとめり込んだ。
「顔洗って一昨日来やがれ」
ハヤタはそう呟くと、ナギお嬢様の部屋の扉を開けた。
「誰だ!?」
と、振り向くナギお嬢様。
ハヤタは目にも留まらぬ速度でナギお嬢様の後ろに回り込み、
「少し眠ってて下さい」
そう言ってクロロフォルムを染み込ませたハンカチを取り出し、ナギお嬢様に嗅がせた。
「うっ」
ナギお嬢様は、呻き声を上げると、意識を失った。
「任務なんだ、ごめんな」
ハヤタはそう言って、ハンカチをしまい、代わりにガムテープを出し、ナギお嬢様の口を塞いだ。そして、身ぐるみを剥がし、ロープを巻き付け、タンスの中に閉じ込めた。
コンコン──突如、扉を叩く音が聞こえ、
「お嬢様、入りますよ」
と、ハヤテの声が聞こえた。
(やべっ、今入られたらまずい事になる!)
ハヤタはナギお嬢様の声で、
「お、ハヤテか。ちょっと待ってくれ」
と、言った。
(早く変装しなきゃ)
ハヤタは猛スピードで身ぐるみを脱ぎ、ナギお嬢様に変装し、彼女の着ていた服を着用した。
「良いぞハヤテ」
ナギハヤタがそう言うと、ハヤテが部屋に入って来た。
「で、何の用だハヤテ?」
「何の用だ、って、お嬢様が呼んだんじゃないですか」
「お、おう、そうだったな。それじゃあハヤテ、一寸お使いを頼まれてくれ」
「お使い、ですか?」
「ああ、今からヒナギクの所へ行ってきてくれ」
「ヒナギクさんの所にですか?」
「そうだ。何でも、ヒナギクがお前に会いたがってるそうだ」
「解りました。では、大至急ヒナギクさんの所に行ってきます」
ハヤテはそう言って、部屋を跡にした。
「作戦成功!」
ナギハヤタはガッツポーズをした。
「何が『作戦成功!』なんだ?」
突然、後ろからナギお嬢様の声が聞こえた。
ナギハヤタが振り向くと、その先には、まっぱ(真っ裸の事)のナギお嬢様が立っていた。
「なっ、お前どうやって抜け出した!?」
ナギハヤタは、慌ててタンスを開けた。中には、口にガムテープを貼られ、ロープで縛られたナギお嬢様が眠っていた。
ナギハヤタは、
「特に異常は無いみたいだな」
と、タンスの扉を閉めた。
「って、異常大ありじゃねえか!つうかおめえ誰だよ!?」
ナギハヤタは振り向き様にそう言った。
「誰って、私は正真正銘三千院 ナギだ」
「ちょっと待て!タンスの中の奴がナギでお前もナギだと言うのか!?そんな事有り得ん!」
「否、何故だか知らんが、下田へ行ってから二人になってしまったのだ(詳しくは市販の小説版参照)」
「信じられっかっ、てめえは偽物だ!」
「お前が言うな偽物。それより服を返せ」
ナギお嬢様はそう言って、頬を赤くした。
「めんどいから嫌だ」
ナギハヤタはそう言って、部屋を出て行った。
「こら待て!」
しかし、ナギハヤタには聞こえていない。
(仕方ない、代わりの服を着るか)
ナギお嬢様はタンスを開け、もう一人の自分を起こさない様、慎重に服を出して着た。
一方、タマは未だに壁に埋まっていた。
「助けてやろうか?」
ナギハヤタはタマに聞いた。
タマは、助けて、と言う表情で頷いた。
「やっぱやめた」
ナギハヤタはそう言って、ナギお嬢様の部屋に戻った。
(お、お嬢に見捨てられた・・・)
涙を流すタマ。
「おい、主役の私が一度も出ておらぬでは無いか!これは一体どう言う事だ!?」
マリアはそう言って、空き地の土管を思いっ切り殴った。
バキッ!──土管に皹が入る。
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