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俺、未来で戦闘機の燃料(エサ)になります! 作者:phantomplus
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【7】俺、戦闘機の燃料になります


 第三層は二つのエリアに分かれていた。
 一つは多くの乗組員や乗客が利用する食堂やジムのある共同エリアがあり、それと場所を二分するようにして運営エリアがあるようだった。

 大型船を彷彿させるこの「テラ」にとっては食堂がある方が前で、これから向かう格納庫がある方が後ろになるらしい。

 食堂を出てすぐの扉を超えると、長い廊下が続いていた。その廊下の両側には、航行部、保安部、生活部、衛生部、通信部等と言ったプレートが掲げられた部屋の入り口が並んでいる。


「ヒイラギとダリアは保安部所属の戦闘機乗り(ファイヤーファイター)なので、保安部と、戦闘機格納庫は許可を得ることなく入ることができる。ちなみに保安部はジムと救護室に関しては優先的に利用できることになっているので必要があったら使ってくれ。詳しいことはダリアに」


 ムクさんがそう言うと、ダリアはきゅっと胸を張った。
 マジマジと見るのも気が引けて、ちょっとだけ視線をそらして頭を下げる。


「お願いします」

「堅苦しいのは無し! なんでも聞いてね。私は初期配属からずっと保安部だから」

「はあ……」


 どうにもアレコレと不穏な単語が気にかかる。生まれてこのかた運動神経を誇れたことのない俺に、こんな仕事が務まるのだろうか。
 それでも、生きていくためには仕方が無いだろう。


「じゃあ、後はよろしく」


 ムクさんはそう言うと「保安部」と書かれた部屋に入っていった。
 俺はちらりと横を見る。ダリアの頭は俺の肩のあたりだから、結構小柄だ。
 ダリアと仕事をするのは願ったりだが、ムクさんが消えると途端に何かが足りなくなった気がした。まあ、あれだけの質量がいなくなったのだから当然かもしれないが。


「じゃあ、とりあえず格納庫、行ってみる?」


 ダリアはにっこりと俺を見あげてそう言った。両手を後ろに組んだ姿もかわいらしい。
 マジでムクさんに感謝だ。
 俺は一瞬前にムクさんのいなくなったことに感じていた違和感を忘れ去って、跳ねるように歩いていくダリアを追った。







「じゃーん。ここが格納庫です。結構広いでしょ」


 ダリアの言うとおり、格納庫は広かった。野球とかができそうなくらいには広かった。
 ムクさんの態度から、戦闘機乗りってのはいかにもな閑職だと思っていたから、これほど大きなスペースを与えられていることには正直驚く。
 広いスペースの左側には目が覚めるような赤と、きらきらと輝く白い、飛行機のようなものが停められていた。もう一台あるようだが大きな水色のカバーがかけられている。


「こっちの機体は私の戦闘機。ルビーって名前なんだ。あっちのカバーがかかってるのは調整中のオニキスっていう機体だけど、今のところ誰の登録も受けてない。で、この白が予備機だったんだけど、今日からはヒイラギの機体だね」

「俺の……?」


 近づいて触ってみると、きらきらとした白の機体の表面がひやりと手のひらを押し返す。


「俺の、戦闘機」


 実感など全然わかないが、口に出してみると意外としっくりきた。


「名前は?」

「名前はヒイラギが決めなよ。私はいつも赤い機体を選んでルビーって名前にしてる」


 ダリアを見ると、誇らしげに自分の戦闘機を見つめていた。
 確かに金色に輝く彼女には、赤い機体が良く似合う。


「戦闘機はどの宇宙船にも複数機配備されているんだ。宇宙空間で絡まれないとも限らないしね。赤は基本色だからどの宇宙船にもあるし」


 なるほどと俺は頷く。配備されている戦闘機に乗り込んで、登録してエネルギーを供給する。これが俺の仕事だ。そして今回腹をすかせてまっているのは、この白い戦闘機ということだろう。


「……出動とかは?」


 そこが重要だ。座っているだけでいいとムクさんは言っていたが、戦闘機と呼ばれているのだ、戦闘に駆り出されることを想定していることは確かだ。それにダリアも「絡まれないとも限らないし」と言っている。


「私が知る限りでは循環航路をたどる定期船がらみでは4回。どれも個人船に絡まれて追い払った程度だよ。軍船になるとたまに警告飛行をするってのは聞いたこともあるけどね」

「警告飛行?」

「そう、他国船籍の船とか、条約外の地域からの船とかが航路侵犯する時があって、それを警告するの」

「へえ……まあ、とりあえず滅多に出動は無いってことでオーケー?」


 ダリアはプッと頬を膨らませたが、頷いた。


「残念ながらね。私4年近く戦闘機乗りなのに一度もフライトしたことないんだ。全自動って言ってもさ、せっかく戦闘機乗りなんだから飛んでみたいのに!」

「平和に越したことは無いだろ」


 俺は苦笑を返してから、ゆっくりと白の機体のまわりを歩いてみた。
 すると俺を迎え入れるかのように梯子のようなものが現れ、コックピットの入り口なのだろう、機体の外装の一部が上部にスライドした。


「まあ、それより。まずは乗り込んで登録しなくちゃね。ほら!」


 ダリアは俺を中へはいれと促す。

 俺は、言われるがままに中に入ってみることにした。


 コックピットは意外と狭い。そう漏らしたらダリアが当たり前だとため息をついたのが、コックピット内のスピーカーを通して聞こえてくる。外の音は拾えるようだ。


「中身がすっかすかだったら衝撃とかで動いちゃうでしょ。狭い方が安全なんだよ」


 言われてみれば、どこもかしこもクッションのような素材で、狭さを無視すれば結構寝心地もよさそうだ。


「まずは自分の名前と機体の名前を登録して。そしたら後は戦闘機についてるシステムが教えてくれるから。私も隣で仕事してくるから、何かあったら私の名前を言ってから「繋げ」って言ってみてね」


 コックピットから下を見下ろすと、白い機体の隙間からダリアが手を振っているのが見えた。
 手を振り返すと、ダリアは歩き去って行った。
 この狭い中に一緒に入るわけではないのかと、ちょっと残念に思ったことは内緒にしておく。
 まあ、とりあえず登録して、此処に寝そべっていればいいのだろう。暇になったらダリアに話しかけてみよう。


「……ええと、登録、登録……ってどこ押すんだ。登録したいんですけどねー、戦闘機さん」


 ポンっと軽い音がなった。


「はい。クルーさん。戦闘機です」

「え?」

「ですから、戦闘機です。ご用件をどうぞ!」





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