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俺、未来で戦闘機の燃料(エサ)になります! 作者:phantomplus
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【28】褐色のむふふ



三者ともに色の違ったスーツを着たまま、俺たちは居住区の最下層へ続く階段を降りていた。
俺にあてがわれた部屋も、居住区内では下層の方に当たるが、今向かっているのはもっと下だという。
居住区は上層の方が人気が高く、下層エリアは共同スペースへの距離が長くなることから不人気らしい。あとから部屋割りをされた俺が下層エリアの部屋になるのは自然のことだろう。

だが、俺の部屋を過ぎてから、結構歩いてるぞ。
どことなく人気がないような気もする。


「あのさ……」

「質問は後だ」

リオンは、ぴしゃりとそう言った。
そのままこちらを見ずに歩を進めていた。

俺も仕方なく、他の人よりも濃い目のグレーの後を追うしかない。

考えてみると。リオンは不思議な存在だ。
他の人とは違った色のスーツを見にまとい、俺の荒唐無稽な話を受け入れる。
人の良さそうなムクさんだって、あの裏表なさそうなダリアだって、一般的なグレーのスーツだ。

いや、違う。
俺とリオン以外で、他の色のスーツを着ている人はいないのだ。
俺がこの色のスーツを選んだのは事故に近いものだったが、リオンは違う。明るいグレーが一般的だと知っていながら、あの色を選択し、変更ができるにもかかわらず、そのままにしている。
好んで、ダークグレーのスーツを着ているのだ。


好んで。


その一言が気にかかる。

だってそうだろう。食事も均一、衣服も均一、外見はまあ、DNAとかもあるから均一にはならないけれど……きっと均一化できるならばしているのではないだろうか。
確かアンドロイドの燃料すら、人間と統一化したと言っていた。
俺はじっとリオンの背中を見ていた。
迷いなく伸ばされた、均整のとれた背中。
限りなくまっすぐに見えて、きっと彼は異質だ。


「着いたぞ」


そんなことを考えているうちに、目的地に着いていたようだ。
辺りを見回しても、俺たち以外の人影はない。
足音すら聞こえない。


「おい、博士!」


ここでもリオンは、いつもとは違った行動をした。
扉を叩いたのだ。それはもう、激しく。
拳でどんどんと扉を叩く様は、まるでベテラン借金取りだ。
だが、ここの扉は勝手に開くのではなかったか。人を察知して、中から操作するのかなんだか知らないが……少なくともリオンの部屋に入るときに扉を叩く必要はなかった。

すぐに、ドアの中央にモニターのようなものが現れた。
モニタには何やら文字が並んでいる。
アルファベット綴られた文字は、するりと日本語に変化する。
この間もこんなことがあったな、と思いながら文字を読むと


「合言葉?」


確かに、画面には合言葉は?という文字が表示されている。


「何のことだ!」


リオンは眉を吊り上げて、軽くドアを蹴った。
それでも、画面では相変わらず合言葉を求めてくる。
こういう場合はアレだ、ちょっと乗っかれば良いんじゃないか。
中にどんな人がいるのか知らないけれど、ちょっとしたお茶目なんだろう。俺はリオンを押しのけて、画面の前に立った。


「あー、ええと。山!」


「は?」


リオンがあからさまに馬鹿にした様子で、俺の顔をまじまじと見た。
あれ、もしかして本当に合言葉があったのだろうか。だとしたら、ただの出しゃばりも良いところだ。
俺は次第に顔に血がのぼっていくのを感じていた。
だが、次の瞬間、モニターには「海」と表示されてからドアが消える。

やっぱ、のっかといて良かったんじゃん、という思いと、そこは「川」じゃねえの、という思いが入り混じる。
ともあれ、俺たちはやっとの事で、その部屋に入るのを許されたのだ。
扉が消え去った先には、ひどく見慣れない、それでいてひどく見慣れた部屋があった。


「ふざけたシステムばっかり組みやがって。博士! 居るんだろ! 博士! 相変わらず汚ねえ部屋だな」


部屋の中は、お世辞にも綺麗とは言えなかった。乱雑と言っても釣りが来そうだ。
辺りには脱ぎ散らかしたスーツが転がり、白い布の塊が積み上げられ、水が入っていただろうボトルが床の上に乱立している。まだ中身の入っているプラスチックケースも、大量に転がっていた。
リオンは、それらを器用に足で脇によけながら部屋の奥へと進んでいった。セレナもリオンが作った道を、小股でたどっていく。
俺もそれに続いたのだが、数歩進んだところで盛大に何かにつまづいた。
足が何かに絡まっている。


「お、わっっとっと」


たたらを踏んだだけでは堪えられず、そのまま近くの何かにダイブしてしまう。おそらくはスーツか白い布だ。
手足を動かして何とか上半身を起こし、足や顔に絡まっていた布地を剥ぎ取った。


「す、すみません……」

「良いさ、すでに着たものだ。欲しけりゃやるぞ」


そんな声が背後から聞こえてくる。


「博士!」


リオンが渋面のまま、こちらに近づいてきた。


「また、あんたはそんな格好で!」


良いながらリオンは近くの布をつかむ。
背後から聞こえる声は紛れもなく女性のもの。リオンが言うセリフの意味はなんだ。
俺が持っているのはなんだ。

てっきりスーツを握っているのかと思っていたが、どことなくクッション性のある、独特の丸みを帯びた部分が二つほどついている……これは、紛れもなく、ブで始まってジャーで終わるアレではなかろうか。


「なんならもう一個あるぞ」


俺の顔の横、背後からふわりと美しい顔が覗いた。短く切られた金色の髪、褐色の肌、細い指が俺の目の前にぶら下げているのは、ブで始まる聖衣。彼女の肩も視界に入るが顔と同じく、滑らかな褐色だ。


「何か着ろ!」


俺はどうして後ろを向いているんだ。


おれはまちがいをおかした。


転ぶ方向を、間違えたのだ。

どうして、背後なんだよ!
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