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俺、未来で戦闘機の燃料(エサ)になります! 作者:phantomplus
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【9】ミントガムがくっつきました

 遠くにちらちらと何かが煌めいているような。それでいて焦点が合わないような。深い黒と言うか青と言うか、そんな空間が一面に広がっている。


「ヒイラギ。生きてますか?」

「生きてるよ! 生きてるけどメンタルは死んでるよ!」


 俺はセレナの問いかけに自棄になってそう言った。


「メンタル的な問いかけだったので、死亡ということで」


そりゃそうだ。セレナはこの戦闘機本体。俺とはなんだかよくわからないけどエネルギーのやり取りなんかがある間柄。そうなれば俺の生体的なデータはお持ちでしょうとも。
 メンタルを聞いてくる機械ってのもシュールだ。

いつの間にか小さなワイプ画面が開いている。そこにはテラから飛び出す瞬間に撮られたらしい写真と、その下のステータス数値らしきものが表示されていた。そこには「M」の項目部分が赤く点滅している。設定が細かい。


「ヒイラギ。死んでいて良いので聞いてください」

「はいはい。聞いてますよー」

「……データを解析したところ、テラ外装部に未確認物体が接着しているようです。天文学的低確率でしか起こりえないと思われる、いわゆる未確認有機生命体のデータが転送されてきています。確認しますか?」

「結構です!」


 とりあえず、俺は帰りたい。今すぐ家に帰りたい。最大限譲歩してテラへ帰るのでもいい。


「では、表示します」

「聞いてた!?」


 セレナはさっきまでムクさんが写ってたスクリーンを拡大し、俺の目の前に表示させた。宇宙空間に占められていた窓の大部分がスクリーンになる。


「すみません。マニュアルだと『表示してくれ』『了解しました』となるはずだったのでつい」


 つい、ってなんだ。つい、って。
 俺は仕方なくと言うか、目を開けていれば必然飛び込んでくるデータを見る羽目になった。
 そこにはカメラか何かで捉えたらしい、緑色の物体がテラの外装らしい白っぽい板にひっついているのが見えた。もっとおどろおどろしいものを想像していたが、これは、アレだ。


「駅の床にひっついてるミントガム」

「……検索しました。確かに似ていますね」

「そうそう、でかいヘラがあったらごりごりやってとれるんじゃない?」


 そう言うと、セレナは一瞬沈黙してから、一枚の画像を出した。


「惜しい! これはもんじゃ用のヘラね」

 まあ、デカけりゃはがせるかもしれないけど。
 そう言っている間に、前を言っていた赤い機体がミントガムに接近した。警戒するように辺りをうろうろと飛び回る。モニターの隙間からそれを確認すると、察したのかセレナはモニターを格納し、俺の視界は再び宇宙空間で占められた。
 飛び出した時はひどい圧力を感じたが、今は飛んでいるのか止まっているのかもわからないほどに何の振動も感じない。
 ただ目の前の光景が緩く動いていることから、この戦闘機が目標物に向かって移動していることは何とか理解できた。


「ダリアと話せるかな」

「つなぎます」


 一瞬の後に、小さなスクリーンが現れる。


「ダリア。それ、何なの?」

「あ、ヒイラギ。……何って、そんなの分かんないよ。もうちょっと近づいてみようかな」


 ダリアはスクリーンの中でも大きく笑っている。これはID用の写真なんだろうか。どうして俺のだけアトラクションの落下地点で取られた写真みたいなのを使用されているんだろうか。


「近づくって、自動運転なんでしょ」

「そうだよ。だから「近づいて」って指示を出せば近づいてくれるの」


 そう言う意味の自動運転なのか。俺はコックピット内を見回してみた。そう言えば自動と言う割にはボタンやレバー等が装着されている。そのどれもが勝手に操作されているようで、現に俺の前にある操縦桿は絶えず小さな上下を繰り返していた。
 そんな観察をしている間にも、ダリアは大胆にミントガムに接近している。


「ちょっと、そんなに近づかない方がいいんじゃないの?」

「だって、なんだかわかんないじゃん。もうちょっと」


 そう言ってダリアはまるでそのガムに突っ込むように機体を滑らせていった。
 そして。


「ほら、言わんこっちゃない」


 俺は想像していたんだ。そいつがスライムみたいに変形して、襲いかかってくるのを。
 実際には餅のようにひっついていたガムの一部が膨らんでダリアの機体の一部を取り込んだのだ。


「あー!!」

「あーじゃねえよ。そんなに近づくからだろ。バックしろバック」


 赤い機体は小刻みに上下を繰り返しながらガムから逃れようとするが、どうにもうまくいかないようだ。


「とーれーなーい!!」


 ダリアの悲壮な叫びが聞こえてくる。


「まじか……セレナ、こういうときはどうしたら?」

「帰還して報告してください」

「ダリアは?」

 俺はその後に救出されるであろうダリアを思って、そう言った。
 だが、セレナの答えは非情だった。


「テラにはもう一基戦闘機がありますから、一機ロストしても複数配備要件を欠く事態にはなりません」

「ちょっとまて、それは、ダリアを見捨てろってことか」

「運営部の判断如何では。ですが、99パーセントを超える確率で、あの生命体の付着は放置されると思います。外装は62層構造で、表4層はラッピング部分です。放棄しても航行には問題がありません」

「外装を放棄する?」

「それが一番損害が少ないので」


 セレナのかわいらしい声が、今は不気味に思えてくる。


「損害って」

「10メートル四方の外装板一枚と、戦闘機一機、人員一名です。相手の情報が全く分かりませんから、救助を選択すれば二次被害もありえます。ルビー機の様子からすると近づくと取りこまれるのでしょう。だったら」

「でも、何も試さないなんて!」

「試して何になるんです?」


 当然と言わんばかりの返答に、俺の背中には冷たい汗が流れおちた
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