《映画クレヨンしんちゃん&銀魂》大嵐を呼ぶ!踊る暇がありゃ映画を救え!!(8/30)縦書き表示RDF


酢乙女邸へ招待されたマサオくん…。それを目にして酢乙女邸へ潜入する沖田…。彼の仕事探しにも決着が?第8部、スタートですっ!!
《映画クレヨンしんちゃん&銀魂》大嵐を呼ぶ!踊る暇がありゃ映画を救え!!
作:虹純晶



その八:どうせ選ぶんなら儲かる仕事に就け


巨大な広間に通されながら、マサオは嫌な胸騒ぎを押さえ切れずにいた。
ずっと恋焦がれてきたあいの家に呼ばれたというのに、あまり喜べないのにはわけがある。ここ最近のあいの様子が、明らかにおかしいからだ。
いつもはしんのすけに夢中で自分になど目もくれないあいが、やたら優しくしてくれる。これまでとは打って変わって………。
そんなの、僕の好きなあいちゃんじゃないっ!
それにどうして、しんのすけたちと一緒ではなくたった一人でここへ呼ばれたのだろう?マサオはただ招待に応じただけで、その目的までは知らなかった。
何であいちゃんは、僕だけに来てほしかったんだろう?
ふかふかした豪華なソファに下ろした腰を、マサオはもう早々に上げてしまいたい気持ちになっていた………。
























「おい、何者だ貴様!」
酢乙女邸の庭先では、あいも予想せぬ大騒ぎが繰り広げられていた。

一人の青年が、何人もの男たち相手にこぶしを振るい、足を振り回して暴れまくっているのである。
そうしながらも彼は、着実に屋敷の方へと近づきつつあった。

沖田総悟である。

「待てーっ!」
怒鳴りながら追いかけてくる男を飛び蹴りで片づける。
それでもまだ押し寄せてくる男たちの集団を見やりながら、沖田はため息をついた。
(ちっ…あの塀に、あんな厄介な仕掛けがあるとは思わなかったぜィ。)
酢乙女家を守る塀を難なく乗り越え、首尾よく屋敷に潜り込めるかと思っていたのに、実は塀にセンサーらしきものが仕掛けてあったのだ。それに見事引っかかった沖田は、今こうして追われているというわけであった。
それにしてもキリがない。何とかしてこいつらを振り切らなければ。沖田は屋敷の方をちらりと見て、マサオが今どんな接待を受けているのかと思いをめぐらした。

「こいつめ!」

ブロロロロロ!

「………?」
振り返った沖田の目に、黒いバイクに乗り自分目がけて走ってくる男たちの姿が映った。


ちょっとだけ驚いた表情を見せた沖田が、すぐに口の端を吊り上げて性悪な笑みを作ってみせた。







































「沖田さん、遅いですね…」
「そうか?まあ気にすんな。あいつなら心配せんでも大丈夫さ。」
時刻は既に、三時を回ろうとしている。
おやつの時間にはいったん帰ってくると言っていた沖田がいつまでも現れないので、トオルは気をもんでいた。
しかし銀時たちの反応は、何とも冷めたものであった。
「トオル、来ないんならあいつのクッキー、食べてもヨロシ?」
「ダメですよ!沖田さんが帰ってきた時に可哀相でしょう!!」
「ハイアル…」
しゅんとして引き下がる神楽。なにげにこの子すごいな、と、新八はトオルを眺めていた。宇宙でも恐れられる夜兎やと族の怪力娘に、一言で言うことを聞かせられるとは………。
そんなことができるのは、こっちではお妙だけだ。
「でも心配だな、確かに。」
「土方さん!」
トオルがほっとしたように、土方を見る。
土方はクッキーの上にいちいちマヨネーズをかけながら(生クリームではない)、低い声で続けた。
「今頃あいつ、やけになって強盗でもしてんじゃねーかな…」
「そっちの心配ですか!?」
トオルは沖田という人間の評判の悪さに、あらためて驚いた。
「…でも心配するな。場所の分かる方法ならある。」
「!本当ですか?」
「ああ。ほら、これに………」
と、土方が取り出したのは、小さな液晶スクリーンのついた装置みたいなものだった。画面上で、ピコン、ピコンと赤い点が点滅している。
「この赤い点が、あいつだ。」
「へえ………何で分かるんですか?」
「最近から、あいつの髪に高性能の小型発信機を取りつけたんだ。風呂に入っても大丈夫なやつをな。やっとその性能を試す時が来たぜ…」
土方の言葉を聞きながら、トオルは考えていた。
土方さんに発信機をつけさせるほど用心させる沖田さんって、一体………普段、どんな性格なんだろう?
トオルの頭の中にも少し、別の心配が頭をもたげてきた………。

「むっ!?」
土方が、眉をひそめてうなった。
「ここは、もしや………!」














「た、助けて…」

マサオはまさに、絶体絶命のピンチというやつに陥っていた。
屋敷内のサングラスをかけた男たちに捕われ、床に押さえつけられているのである。
目の前に立って顔色一つ変えずにそれを眺めるあいの姿が、今の状況をさらに悪夢的なものにしていた。
「あ、あいちゃん………これは…一体……?」
「ごめんなさい、マー様。」
あいが変わらぬ口調で言った。
「でも、あいはマー様を捕まえなくてはなりませんの。本当はもっと遅いはずだったんですけど、仕方がないですわ。」
「…何を言ってるの?」
「そのうち分かりますわよ。」
あいはくすくす笑うと、男たちに命じた。
「マー様をアジトへ連れていきなさい。」
「はい。」
男たちはうなずき、マサオを乱暴にかつぎ上げようとした。抵抗するマサオを、一人が殴りつける。マサオは床に倒れ、痛みにあえいだ。
あいの呆れた声がする。
「もう、力もないくせに抵抗したりして。まったくなんて下等な動物なのかしら、人間は………」
マサオは目をつぶり、涙を流しながら祈った。誰でもいい、何でもいい、助けに来て下さい。悪魔でも大魔王でもかまわなかいから………。
































ドガアァァン!

「…えぇっ!?」
祈りが通じたのか、突如扉がぶち破られて何かが飛び込んできた。悪魔でも大魔王でもない。目の前に現れたそれは………。






ブロロロロロ…!

バイクであった。
「な、何なの!?」
金切り声を出すあいだったが、そんな場合ではなかった。進み続けるバイクが、こちらの方へ向けて突進してきたからだ。
「あっ…ちょ、ちょっと待って!止まって!!」
「ええー、そんなこと言われても…」
バイクにまたがり、顔をしかめる茶髪の青年。
沖田であった。






「止め方、分かんねェ。」
「いやああああああ!」
あいの絶叫が、部屋の中に響き渡った。

ドガッ!

跳ね飛ばされたあいは、壁に叩きつけられて動かなくなり、そしてバイクはまだ止まらない。爆進を続けている。
「ああもう、めんどくせぇなァ。」
沖田はそう呟くと、ひょいとバイクから飛び降りてしまった。
操縦者のいなくなったバイクは、壁へと激突し、ようやく動かなくなった。

しかも見事、あいの倒れていた場所で。
「き、貴様…!」
男たちが一斉に沖田めがけて殺到したが………。

ドゲドゲドゲ、ドゲン!

数十秒後には、全員床とお友達になっていたのだった。










「あ、あの…」

マサオは、自分を助けてくれた(?)謎の青年に、おそるおそる声をかけてみた。そして青年がこちらを向くより早く、気づいた。
「あ!さっき門の所にいた……」
「あぁ…大丈夫だったか?」
「は、はあ…」
殴られた所が少し痛いが、別に我慢できないほどでもない。
(誰なんだろう、この人………別に泥棒って感じでもなさそうだし……それにどっかで…見たような……)

「お兄さん、名前は何て言うんですか?」
「ん?えーと…沖田総悟。」
「えっ!」
マサオが驚愕して目を見開いた。












「もしかして…『銀魂』の真選組一番隊隊長の、沖田総悟?」
「なっ!?お前なんでそんなことを…」
今度は沖田が驚かされる番であった。
「信じられない!僕、あの漫画とアニメ大好きなんですよ!!ちょっと下品なとこあるから、ママとかみんなには内緒にしてるんだけど………」
「へえ……」
そういえばここでは、俺たちの世界の出来事がアニメとして放送されてるんだっけな、と、沖田はトオルの言っていたことを思い出した。漫画まであるのか、知らなかったぜ。

そして何より意外なのは、マサオが『銀魂』のファンであるらしいことだった…。

「でも何で…」


















ゴッ!

背後から飛んでくるものを感じ、沖田はとっさにマサオを抱いて横に飛びすさった。
「危ねェ!」

ドガアアァ!

「な…何なの!?」
マサオが震えている。さっきまで二人のいた所の床に、大きなえぐれができていた。

「よくもやってくれましたね…」
扉のところに、黒磯が立っていた。
いや、これはどう見てもニセモノだろう。人間ですらないようだ。腕の部分が盛り上がり、巨大な鉄砲みたいな形を作っていた。
「…何だ、その腕は。」
沖田の言葉に、黒磯は答えず、大砲型に変化した右腕を向けた。

ドン!

先端の穴から、目には見えないがものすごい圧力を持った弾が放射された。マサオを抱えたまま、素早く横に転がってよける。またしても床に穴が開いた。
なるほどな、と、沖田は妙に納得していた。ドラえもんに出てくる、空気砲みたいなやつか………。
とにかく、狭い室内では不利だ。外へ逃げようと、窓に向かって走った。














「させない!」
「うおわっ!?」
間一髪だった。
今度は何か細長いものがいくつも飛んできて、もうちょっとで沖田の足に刺さるところだったのだ。何とか横ざまに倒れるようにして、回避する。












酢乙女あいだった。
可愛い顔に似つかわしくない憎悪の笑みを浮かべ、沖田をにらんでいる。そして黒い髪の毛がざわざわと伸び、今沖田を串刺しにしようとした細長い刃物状のものに変化しつつあった。
嘘だろ?何だ、この化け物は…。
「許しませんわよ…よくもあいの腕を……」
バイクを押しのけ、あいは立ち上がった。
「あっ…」
マサオが思わず、叫び声を発した。
バイクが激突した時に吹っ飛んでしまったのだろうか、あいの左腕がなくなっている。それでいて、一滴の血も流れていなかった。
それだけではない。付け根から、肉の芽とでも言うべきものが植物のように生え出してきて、みるみるうちに腕を再生していくのである。
さすがの沖田も、言葉を失うより他になかった。
「お返しは………百倍にさせてもらいますわよ!」
言葉が終わるか終わらないかのうちに、さっきの細長い刃が恐ろしいスピードで襲いかかってきた。
「………!」
次の瞬間、沖田の身体が風のように動き、すれすれで全ての刃をかわした。かなり息が上がっている。
その時、沖田に抱えられているマサオが悲鳴をあげた。

「沖田さん!後ろ!!」









ニセの黒磯が、巨大空気砲を構えていた。

しまった…よけきれない!

沖田は歯噛みした。バズーカ砲か、せめて刀が一本でもあれば…!























ズガアァン!



轟音が響き………しかし何も起こらないので、とっさに目を閉じていた沖田は首をかしげた。
(あり?そーいえばさっきと発射音が違うよーな…)
目を開けて黒磯のいる方を向き、そして、束の間息が止まった。















「土方さん………」
「ったく……相変わらず好き勝手なことして大暴れしてんだなァ、このガキ。」
バズーカ砲を構えた土方が、もくもくと煙が立ち込める中で、煙草をくわえて立っていた。よく見ると、左足で何か黒焦げになったものを踏みつけている。
バズーカ砲撃を背後からまともに浴びた、ニセ黒磯のなれの果てだった。
「あ、あんた、よくも…!」
ニセのあいが怒りの叫びをあげ、刃を土方に向けようとしたが………。









ドガアアァッ!

「きゃあああああ!」
本日二度目になるバイク突入に(今度は窓から飛び込んできた)、ニセあいは再び跳ね飛ばされたのであった。








「どうもぉ、万事屋でーすっ!本日は人助け参りましたぁ!!」
銀時が、ヘルメットを上げてにやりと笑ってみせた。



























「本当に知らないのよ!」
「嘘つけ!!」

今、傷だらけ、穴だらけになった酢乙女邸の居間では、ぐるぐる巻きに縛り上げられたニセあいの尋問が行われていた。
いくらなんでも刀とバズーカ砲を突きつけられた状態では、もう抵抗するわけにはいくまい。ここには万事屋と真選組のメンバーを加え、トオルまで勢ぞろいしていた。
トオルと新八は、混乱気味のマサオを部屋の隅に連れていき、これまでのことの説明をしてやっているところだった。
そして残る面々は尋問というわけだが…。






「アジトの場所を知らねえわけねーだろ!お前らの本拠地だろーが!!」
「残念だけど、あたしたちは自分の記憶操作が自由にできるのよ。だから忘れたいと思ったことを、完全に忘れ去ることができるの。敵に知られちゃまずいこととかもね…」
「何だとてめぇ、いい加減なこと言ってやがると…」
沖田がバズーカ砲をさらに近づけたが、ニセあいはせせら笑うだけだった。
「殺したいんなら、どうぞ。別にかまやしないわ。また酢乙女あいの代わりが新しく作られるだけ………どっちにしろ、あたしからアジトや黒幕の正体を聞き出すのは、あきらめることね。」
「ちっ…」
敵が本気で言っていると分かったのか、沖田は舌打ちと共にバズーカを少し引っ込めた。






一方マサオは、トオルと新八の話をどうにか理解することができていた。
「へえ、あるんだねえ、そういうことって…。」
「うん……でも知らなかったよ。マサオくんが『銀魂』のファンだったなんてさ。」
トオルの言葉に、マサオはちょっと照れ笑いを浮かべた。
「えへへ、みんなには内緒にしてたんだよ。ちょっとお下品なところがあるから………でもいつも古本屋さんとかで、漫画の立ち読みしてるよ。」
「僕たち、漫画にもなってるのか…」
いまいち実感のわかない新八であった。
「ねえ、よかったら風間くんも今度一緒に行かない?すっごく面白いんだよ!」
「ほんと?じゃ、暇があったら行くよ。」
こんなに個性的な人たちが活躍する漫画なのだ。さぞ面白いに違いないとトオルは思った。
それに、銀さんたちのことをよりよく知ることにもなるしな……。

「銀さん、姉上。どうでしたか。」
新八の問いに、残念そうに首を振るお妙。
「ダメよ…ケツの穴にコンパスぶち込むって脅しても言わないの。本当に忘れられるみたいね……。」
「ちょっとお妙さん、そんな下品な言い方…あれ?それ僕のコンパスじゃないですか!返して!」
「まあとにかく、今の問題はこいつをどうするかだな。」
銀時がニセあいを、あごで示した。
「そうだな…野放しにするわけにもいかんしな。」
と、煙草の煙を吐く土方。まともに浴びた山崎が、げほげほ言っている。
「やっぱり殺っちまうしかないアルヨ、銀ちゃん。」
「そうでさァ、旦那、土方さん。俺ァこいつのせいで職探しを邪魔されたもんでさ。」
「いや、だからそれはお前が勝手に首突っ込んだんだろ。」


















「あの、ちょっと待って下さい。」
「?」
おずおずとした声に、銀魂一行は話をやめて振り返った。
マサオがみんなに見つめられ、もじもじしながら言う。
「あの…総悟さん、仕事を探してるんでしょ?」
「?そうだけど。」
沖田も他の面々も、マサオが何を言おうとしているのか分からない。そこでマサオは、思い切ったように言った。






「じゃ、このニセモノのあいちゃんに、SPセキュリティーポリスとして雇ってもらったらどうですか?だって、黒磯さんのニセモノは…やられちゃったみたいだし。」
マサオの目は、黒焦げになってしなびているニセ黒磯の残骸に向けられていた。
「給料もいっぱいもらえると思いますけど。」
マサオのこの言葉に、沖田たちは初めのうちは驚きの眼差しで互いを見つめ合っているだけだったが、やがてそれぞれの顔に、あまり人のよくない笑みが浮かんできた。
「なるほどなぁ、こんな豪勢な家だから、金もたんまりあるだろうしなぁ…」
「なっ……」
銀時の不気味な呟きに、ニセのあいがぎくりと目を見開いたが、無視された。土方も重ねて言う。
「こいつを見張ることもできるしな。」
「お前、案外悪知恵働くじゃねぇかィ。」
沖田に言われて、マサオは顔を真っ赤にした。
「いえ………ただの思いつきですよ。それに、助けてもらったんだし。」
「ちょっと、ふざけないでよ!誰があんたなんか…!」

ニセモノのあいが最後まで言えないうちに、沖田のバズーカ砲が顔面に押しつけられた。
「嫌ってんならこれ食らわせる前に、さっきのお返したっぷりさせてもらうぜィ。身体で払うか金で払うか、どっちにする?」

































「ねえ、あいちゃん。」

双葉幼稚園で、ネネがあいに話しかけた。
「ボディーガードの人が変わってるじゃないの。黒磯さんは?あの人だあれ?」
「ええ、その…黒磯が急用で実家に帰ることとなりまして。臨時に雇ったんですの。」
そう答えるあいの表情が、微妙に引きつっている。
「ふうん、そーなの………でも、結構イケメンじゃない?良かったわね。」
「…いえ、いいのは顔だけでして……」





「あん?あいお嬢様、今何かおっしゃりましたかィ。」
臨時のボディーガードなる茶髪の若者が、茂みの中から顔を出した。あいの身体がびくっと緊張する。
「い、いえ、何も…」
「ダメっすよお嬢様、言いたいこと黙ってちゃ。ささ、二人でじっくり話でもしましょうや。」
「え…あっ…ちょっ…!」
茂みの中へ引きずり込まれるあい。それを見送りながら、しんのすけ、ネネ、ボーちゃんの三人は腑に落ちないという顔になっていた。
「何か、変…」
「そうよね…ボディーガードって感じがしないわ。」
「なんか脅かされてるみたいだゾ。」
「やあね、しんちゃんてば、嫌なこと言わないで。」















後ろの方で見守っていたトオルとマサオは顔を見合わせ、そして思わず、ぷっと吹き出した。


マサオくんも仲間に加わり、沖田も無事仕事(?)を見つけてようやく一安心………と思いきや、いよいよ敵が本格的に動き出す!?次回からはデパート編に突入予定!アミーゴを見てない人は予習しておいた方がいいかも…。お楽しみに!!











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