《映画クレヨンしんちゃん&銀魂》大嵐を呼ぶ!踊る暇がありゃ映画を救え!!(28/30)縦書き表示RDF


サブタイトルからも分かるかも知れませんが、今回で銀時たちはしんのすけたちと別れることになります………。何で銀時たちがそもそもこの世界に来たのかも、ある程度明かされます!
《映画クレヨンしんちゃん&銀魂》大嵐を呼ぶ!踊る暇がありゃ映画を救え!!
作:虹純晶



その弐拾八:別れの時には振り返るな


日が柔らかに注ぎ、あちこちで小鳥がチュンチュンとさえずっている。もうそろそろ暑くなってくる頃だというのに、春日部は春まっさかりのように穏やかな空気と天気に包まれていた。





銀時たちが帰る時が来たのは、そんな日のことだった。





ニセモノ事件のせいで破壊された生け垣や塀が全て元通りになった中で、定春に倒された野原家の生け垣の一部はそのままになっていた。そこに隠されていた大きな穴も、今なおぽっかりと口を開けている。


「………本当に、行っちゃうの?」


穴のそばに立っている銀時たちに、ネネが呟くように言った。

銀時はネネを見下ろして、少し笑った。


「ああ。………だいぶゆっくりしちまったからな。」




























ニセモノたちのアジトから出てきた時、銀時たちは身体の色んな部分に傷を追い、しかもニセモノたちの返り血を浴びたせいでそれぞれすさまじい有様になっていた。

特に銀時はひどく、全身紫色のネトネトまみれだった。───このままだとくさくてたまらないと神楽が言い出したので、真選組の隊員の一人がみんなを案内し、敵のアジトの入り口近くに設けられた真選組の陣地へと導いた。





陣地に入ったしんのすけたちは、驚いて声を上げそうになった。───土方が腹から胸にかけて包帯でぐるぐる巻きにされて横たわっているのにもびっくりしたが、何より彼らを驚かせたのは、土方のそばに影のようにして寄り添っているボーちゃんの姿だった。


そうして銀時たちは、土方が壁の隙間からボーちゃんとテルを助け出して逃げ、敵と闘い気絶するまでのいきさつと、その後の出来事を説明するボーちゃんの話を聞いたのだった。


土方が倒れた後、シロとリンドに導かれてボーちゃんは真選組の元へと連れて行かれた。そして隊員たちはボーちゃんの話を聞くやいなや、すぐさま土方の救出と手当てを行い、ボーちゃんにはここから離れないようにと言いつけた。


ちなみにシロとしんのすけを除く野原一家は、ニセモノたちが現れる間際に真選組と九兵衛たちの手により救出されていたのだ。


新八たちが一番知りたかったのは、九兵衛たちがどうやってこの世界にやって来れたのかということだった。───その答えはなんと、そもそもどうして銀時たちが突然、クレしんの映画の世界の中へ引っ張り込まれることになったのかということにも繋がっていた。


幕府は魔虞蛇博士の家のテレビに接続されていた機械を綿密に調べ、やがてこの装置が、テレビで放送している番組の中へと実際に潜入できるようにする機能を持つということを突き止めた。一緒に調査していた近藤はさっそく真選組駐屯所に帰り、そのことを土方や沖田に知らせようと思った。………それが、ちょうど銀時たちがいなくなった金曜日の夕方のことだったのだという。


ところがここで、問題が起こった。───他でもない、警察庁長官であり『破壊神』の異名を持つ、松平片栗虎まつだいらかたくりこのせいで。


何でも彼は、
「これさえありゃエロビデオの中にでも入れるじゃねぇか、めっけもんだな。」
とか言って、それだけならまだしも装置を手の平でバンッと思いっきり叩いたらしい。

案の定というか何というか、装置は奇妙な音を立てて震え、しかも………光り始めた。


爆発するかも知れない───そう考えた近藤たちは、反射的に部屋の外へ逃げようとした。しかしそうこうしているうちに、装置の光はみるみるおさまっていき、やがて震えも止まってしまった。


やれやれと冷や汗をぬぐった近藤たちだったが(松平はいつの間にやら姿を消してしまっていた)、近藤はふとあることに気づき、不安になった。

調べていた時、装置の電力が急になくなったりしないよう、その機械は巨大な充電器に繋がれていた。そしてその充電器は、江戸の人間たちが使う電気の供給源でもあるのだ。

そんな大切なものを一つの装置のために使ってしまうようなところに、松平片栗虎という男の性格が現れている。

それはともかく、その充電器は江戸中に電気を送っているのだ。さっき機械が変なことになった時に、何か有害な電波などがその中に混じったかも知れない。そう考えて、近藤は不安な気持ちになったのだった。


そして急いで帰ってきてみると………土方と沖田と山崎の姿が消えて、大騒ぎになっていたというわけであった。


その後の調べで、銀時たち三人に定春、お妙もいなくなっていることが判明した。しかも行方不明になった者たちが最後にいたと思われる部屋ではテレビがつけっぱなしになっており、しかもクレしんの映画が流れっぱなしになっていたのだ。


こいつは何かある───と考えた近藤は、ふと思い出した。


魔虞蛇博士の家に踏み込んだ時、あの装置が接続されていたテレビのDVDプレーヤーに、クレヨンしんちゃんの映画のディスクが入っていたのだ。名前は、確か………。


その映画の名と土方たちが見ていた映画が一致したことを知り、さらにあの装置の件のことも考え合わせて、近藤はほとんど確信した。





トシたちは、博士と同じように映画の世界に入ってしまっている!





「………で、僕らがいなくなってから、どれぐらい経つんですか?」

新八が我慢しきれなくなったように口を挟んだ。

「そうだな………ちょうど一週間ぐらいだ。」


なぜすぐに助けに行けなかったのかと言うと、先の松平に食らった一撃のせいで機械が狂い、すっかり使い物にならなくなって、直さざるを得なくなったからだ。何しろ見たこともない機械なので、綿密に調べたとはいってもすぐに修理できるはずがない。しかしできるなら、早めに助けてやりたい。近藤のその気持ちをばねにしたかのように、修理は順調に進んで予定よりも三日も早く終わった。そうしてこの世界に、真選組の面々が投入されたというわけであった。


九兵衛はお妙がいなくなったと聞いていても立ってもいられなくなり、幕府から情報をつかむとすぐに近藤の元へ走って自分も連れて行ってくれるように頼んだ。

初め、近藤は首を縦に振らなかった。当然だろう。警察の仕事に、一般人を巻き込むなど論外だからだ。
しかし九兵衛の滅多に見せない熱心さや、その剣術の腕を見込んで、最終的には協力してもらうことに決めた。


近藤はあの装置を慎重に操作して、クレヨンしんちゃんの映画に通じる道を何とか作り出した。───その出口がなんと、定春が見つけた野原家の生け垣の下の大穴だったのだ。

入り口は目立たぬよう、九兵衛の家である柳生家の地下室に設置された。そこへ行って天井の大穴の下に立ち、装置のスイッチを押してもらえば一気にクレしんの世界へ直行というわけだ。


しかし、彼らが敵のアジトに通じる抜け道を見つけたり、陣地を作ったりと色々している間に、ニセモノたちの本格的な攻撃が始まってしまい───後はしんのすけやトオルが知っている通りだった。


ただ近藤は一度だけ、ここに来たことがあったらしい。土方に電話がかかってきたのは、その時だったのだ。





土方は、アジトでの闘いのことを横たわったままで聞いた。


つい先刻に目を覚ましたこともあって、土方の顔は血の気がなく真っ青だったが、意識は驚くほどはっきりしていた。顔を山崎たちの方に向け、ボーちゃんの小さな手に右手を握られたまま、自分の部下たちがそれぞれ興奮した表情で闘いにどんなふうに勝利したのか話すのを黙って聞いていた。

話がイリスとギルザについてのところまで来た時、土方は初めて口をきいた。


「………マサオと、こいつのニセモノを……倒した?」

「はい。イリスの方はリオルにやられたんですが………」


「………そして、そのリオルも、死んだわけか。」

「はあ………」

副長がわずかに眉を寄せているのを見て、山崎は不思議に思ったが、多分自分が戦闘に参加できなかったのを不満に感じているんだろうなと考えて、何も言わなかった。そして服や身体に染み着いた汚れと匂いを落とすために、真選組の陣地に設置されたいくつもの五右衛門風呂の一つへ、向かっていった。


しんのすけたちは五右衛門風呂を珍しがり、面白がった。しんのすけは
「ネネちゃんもご一緒する?」
などと言ってみさえにげんこつを食らった。


風呂から出て身体をふき、いつの間にか用意されていた浴衣を着ると、トオルは陣地から少し離れた場所に立って、深々と息を吸い込んだ。


終わったんだ───そんな思いが、何だかすがすがしい気分と一緒に胸いっぱいに広がった。













怪我にもかかわらず、銀時たちはすぐにあの穴を通ってこちらの世界に戻るように言われた。


「急で悪いんだが。」
と、近藤は本当にすまなそうに言った。
「実を言うと、あの装置はまだ不完全で不安定なんだ。だいぶ早急に修理したんでな。いつまた故障して、穴がふさがっちまうか分からないんだ。」

そう言われた銀時たちは、しばらく考えた後に答えを返した。───三日だけ、こちらにいさせてほしい。四日目の朝になったらすぐに帰るから、と。


しばし迷った後、近藤は承諾した。
















銀時たちは残された三日間を、昼は幼稚園で、夜はトオルの家で、ゆっくりと身体を休めて過ごした。特に怪我のひどい土方は、刀を手に届くところに置くこともなく、ただとろとろと居眠りしていることが多くなった。………身体が抜け殻になってしまったかのように、だるかった。

土方が幼稚園でいる時は、ボーちゃんがいつもそばにいた。二人は大した会話を交わすわけでもなかったが、ボーちゃんは土方のそばにいるだけで満足らしく、いつも近くで集めた石をしげしげと眺めたり、鼻水芸の練習をしたりしていた。───土方もまた、そんなボーちゃんを追い払おうとはしなかった。


沖田はマサオをそばに連れて、バズーカの撃ち方を教えようとして山崎にたしなめられていた。一方で山崎は、しんのすけとのミントンの試合に熱中していた。


ニセモノたちの暴走のせいで、あちこちの塀や家の一部が壊されていたが、主に神楽と定春の協力のおかげで、それらは驚くべきスピードで復旧されつつあった。神楽の力に春日部の人々が目を丸くしているのを見守りながら、新八とお妙はのんびりと散歩したり、話をしたりとゆったりした時を過ごした。


みおりはあの騒動が終わってから、一日だけ春日部に滞在しただけで、トオルのマンションの部屋の前に置き手紙を残し、さっさと旅立っていった。───今どこにいるか、それはトオルも知らない。


テルとリンドは、なんとジャッキーたちSRIに、彼女の父親と共に引き取られることになった。

ジャッキーも計画の初期のうちに捕まり、父親と共に監禁されていたのだ。ワゴンに乗って爽やかな笑みを浮かべながら去っていたジャッキーの顔を、しんのすけは今も心の中に焼きつけていた。

「あの二人を………処分する気にはなれないの。」

ジャッキーは肩をすくめてそう言った。

「いい奴みたいだし………なんか、調べてみたら面白いことが分かるかも知れないから。」















二日たつと、土方はもうほとんど元気を取り戻していた。そして銀時と顔を合わせた途端に早速、二人でいがみ合いを始めた。


「俺がネネの夫役をやってやる。だからお前はガキ役でもやってろ。」
「何言ってんだ、てめーは犬役だろーが。」

「じゃ、じゃあ二人共ネネちゃんの夫役になればいいんじゃない?」

マサオが慌てたように口を挟んだ。助け船を出したつもりだったのだろうが、とんでもない。


「何だお前は?こいつは俺の女だ、とっとと出ていかねぇと斬るぞ!!」


いつもにましてすごい内容のおままごとになってしまった。


「ああ、俺を斬るだぁ?てめー誰に向かって口をきいてやがる、このマヨラーが。」
「うるせぇ!マヨラー関係ねぇだろうが!!」

ネネもどうやって割り込んだものか、困った顔をしている。


結局その日のリアルおままごとは、銀時と土方のののしり合いだけで終結したのだった。
















「…ったく、あのマヨ野郎のせいでネネとの最後の時間が楽しめなかったじゃねーか。」


自分のことは棚に上げてぶつぶつ言っていた銀時の視線が、ふと少し離れた所に座って本を読んでいるトオルの姿をとらえた。


表情が明るくなっている。───それを見て、たとえうわべでは平気そうに装っていても、今までこの少年がいかに怯え、気を張ってきていたかがよく分かった。


不意に、視線に気づいたかのようにトオルが目を上げてこちらを見た。

銀時をみとめて、その大きく黒い瞳が、揺れた。


銀時は歩み寄ると、そっと手を伸ばしてトオルの頭に置き、呟いた。


「………悪いな。」

トオルがけげんそうにこちらを見上げる。そのまなざしを、銀時はまっすぐに受け止めた。


「勝手に上がり込んできたかと思ったら、また勝手に帰ることになっちまってよ。」


トオルは顔を歪め、またあの時のように、銀時の腰に手を回して抱きしめた。


「───俺らがいなくなっても、ちゃんと俺らの活躍は見守っといてくれよ。………俺たちも、そうするからな。」

トオルがうなずいた。

その腕から伝わる温もりを、銀時は長いこと感じていた。





最後にみんなで記念写真を撮って、その日の幼稚園は終わりになった。










気持ちよく晴れた日だった。


















野原一家の穴のところへは、しんのすけたちはもちろん、幼稚園の先生やひまわり組のほとんどの園児が見送りに来てくれた。
ネネとマサオはおみやげにと、手作りのクッキーをみんなにプレゼントした。しんのすけは何もあげるものなど考えていなかったので困ってしまったが、悩んだ挙げ句に半ケツダンスを披露して、その場を大いにわかせた。
トオルは銀時たちのそばにより、銀時の袖をつかむようにして(銀時たちは『銀魂』の登場人物である時の服装に戻っていた)一言二言、さよならというようなことを呟いていたが、それだけですぐに身をひるがえし、しんのすけたちの間へと戻っていった。


最後にボーちゃんが、彼らしくもなく何だかもじもじしながら、そっと土方に何かを差し出した。───それはボーちゃんの手の平よりも大きな、一個の石だった。

「………あの……これ、僕が拾った、とっておきの、石。土方さんに、あげる。」

心をこめて磨いたのだろう。その石は、まるでダイヤモンドのようにきれいに輝いていた。

さて副長はどうするだろうと山崎ははらはらしながら見つめていたが、土方は少し首をかしげてボーちゃんを見下ろし、ふん、と言って石をつかみ取るとそのまま上着のポケットに突っ込んでしまった。
そして、沖田と山崎を振り返った。

「………行くぞ。」


もう他の真選組の隊員たちは、帰ってしまっている。お妙ちゃんが帰るまではここに残ると言い張っていた九兵衛も、東城の説得に負けてつい昨日、向こうに帰っていった。

今ここにいるのは、最初にトオルと会った七人と一匹だけ───万事屋一行に真選組の三人、そしてお妙だけだった。


土方はもう穴の縁に立ち、中を覗き込んでいる。


「まずは俺たちからだ。それからお妙さん、万事屋の順に、それぞれの家の中へ直接送り届けてもらうことになってる………俺らが飛び込んでから穴が光ったら、すぐに飛び込めよ。───総悟、後ろで何してる。」

「いや、何でもありやせんぜ、土方さん。」

沖田がさりげなく、しかしやや残念そうな目つきで手を引っ込め、土方の隣に移動した。反対側の隣には、山崎が立つ。


「じゃあな、あばよ。」





まるでついでみたいに言われた一言に、トオルがはっと顔を上げると、三人の背中が穴の中へ消えていくところだった。すぐそばを誰かが通り過ぎたので見上げると、お妙だった。


「お別れね、トオルくん。」

「お妙さん………」

声をかける暇すらない。穴の中が光ったかと思うと、お妙は何のためらいもなく、後ろを振り返りもせずに、穴へ飛び込んだ。


今度は神楽が、定春に乗って進み出た。


「定春、みんなにバイバイするアル。」


神楽に言われ、定春は尻尾を振りながらつぶらな瞳でみんなを順々に見回していったが、突然身をひるがえし、さっきのお妙と同じように脇目もふらずに穴に飛び入った。


「神楽さ………!」


新八が眼鏡をしっかり押さえながら、悲しげな目でトオルを、みんなを見つめた。


「悪いけど、振り返らないよ………別れが余計つらくなるからね。」


言い置いて、新八もさっと飛び込んだ。





穴の縁に、銀髪の男が一人だけ残った。





「銀さん!」

トオルは我慢できなくなって叫んだ。しんのすけもネネもマサオもボーちゃんも、ほとんどみんながそう叫んだ。



「銀さん!」
「銀八先生!」


銀時は、てんでに泣きそうな顔をしている子供たち───ひまわり組の園児たちを、一人一人眺め回してニヤッとした。


「じゃあな、園児諸君。」

そう言いながら、こちらに背を向け、するりと穴に歩み寄る。


「───いい子ならジャンプはちゃんと、買って読めよ。」





銀時が穴の中に足を踏み入れた瞬間、視界が涙にかすんできて、トオルはぎゅっと目をつぶった。






ようやく目を開くと………そこには穴がなかった。生け垣は倒れたままだったが、穴があった場所にはまっ平らな地面があるだけ。大きな穴など、どこにも見えなかった。






銀時の姿もまた、見えなくなっていた。
































トオルの話から、だいぶ長いこと落ち続けるんだろうと覚悟していた銀時だったが、闇の中の落下の旅はあっという間に終わった。





「………あ、来ましたね、銀さん。」


少し先に立っていた新八が、振り返った。その横には定春を連れた神楽の姿も見える。


───彼らが今いるのは、夜の暗闇にうっすらと包まれた町だった。

春日部のようにこぎれいな、きちんと整頓された場所ではない。居酒屋やら、キャバクラやらのいかがわしげな店や、ゴミが積み上げられた路地、雑多につめ込まれたように見える家々………。


銀時たちのいた場所───そして、これからもずっといるべき町だ。





「帰ってきましたねぇ………」


呟くと、新八が首をねじ曲げて、銀時を見た。その目には、明るい───それでいて、わずかに悲しげな光があった。

新八は、微笑んだ。


「銀さんも、そう思うでしょう?帰ってきたなって。」


銀時は小さくうなずいた。

そう、自分たちの居場所はここなのだ。たとえ別世界に引き込まれたとしても、そしてその世界にいる人々のことを、どんなになつかしく思っているとしても、自分たちが本当にいるべき場所、いたい場所はここに他ならない。


そのことが今になって、胸にしみ入っていくような気がした。









暗くて狭くて人気のない路地を、新八たちはゆっくりと歩いていった。





やがて、家と家の隙間から見慣れた建物が見えてきた時、新八は胸に熱いものが突き上げてくるような気持ちになった。神楽も同じなのだろう。何も言わず、ぼうっとした顔をしている。





しばらくの間、誰も動こうとしなかった。───そして不意に、銀時が顔を上げた。


「───ん?」


袖の中で、カサカサと何かがすれるような音がわずかにする。無造作に手を突っ込むと、大きくて固めの紙片みたいなものが手に触れた。


引っ張り出してそれを眺めた銀時の顔色が、一瞬変わった。

そしてふっと笑い、新八と神楽の方にそれを差し出した。───不思議そうに受け取った二人の顔にも、驚きと、自然な笑みが浮かぶ。





それは、昨日幼稚園で最後に撮った集合写真だった。


(そうか………)


トオルが銀時の袖をつかんだあの時───そっと中に、この写真を忍ばせたのだ。そういえば集合写真を撮ろうと言い出したのも、トオルだった………。


(…バカだな、お前は。)

銀時は心の中で呼びかけた。


(こんなことしなくても、忘れたりしねぇよ。)


写真の中のしんのすけたちは、笑っている。そのそばには銀時たちがいる。───今も、これからも、ずっと。





ようやく写真から顔を上げて、もう一度前方の建物を見やった。


二階は電気が消えているが、一階は明るい。中からがやがやと、人の声もしてくる。今夜もスナックお登勢とせは、それなりに繁盛しているようだった。





銀時は後ろに新八たちを連れて、一階の入り口の戸に近寄り、手の平でバンバンと叩いた。


「おーい、帰ったぜ、ババァ。なんか食うもん用意してくれ。」


声をかけると、聞き慣れたぶっきらぼうな怒鳴り声が、返事を返してきた。





三人は顔を見合わせてちょっと笑い、定春も入れるように大きく戸を開け放つと、中に入っていった。


最後になって、銀時たちを彼らの世界へ帰すことができた時には、私も思わず胸が熱くなってしまいました(笑)。話自体はこれで完結ですが、最後にエピローグみたいなものと後書きを兼ねた次回予告みたいなものを書いて終わりにしたいと思います。………長きにわたって私の書く未熟な話に付き合ってくれた皆さん、評価感想を下さった皆さん、本当にありがとうございましたm(_ _)mこれからもよろしくお願いします☆











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