《映画クレヨンしんちゃん&銀魂》大嵐を呼ぶ!踊る暇がありゃ映画を救え!!(27/30)縦書き表示RDF


銀時とリオルの決闘………勝利は一体どちらの手に!!?今回はちょっとグロテスクな描写がありますので、ご注意下さい。
《映画クレヨンしんちゃん&銀魂》大嵐を呼ぶ!踊る暇がありゃ映画を救え!!
作:虹純晶



その弐拾七:脇役があってこそ主役はひき立つんだよな


銀時はじっとリオルをにらんだまま、すっと前に一歩踏み出したかと思うと、一気に駆け寄ってきた。


飛びかかってくる気かと思ったリオルははっと身構えたが、銀時はリオルの脇をさっと通り過ぎ、何かを拾い上げた。


木刀だった。『洞爺湖』と書かれているが、今までの闘いでべっとりと紫色に染まっているためにほとんど読めない。





銀時はこれを投げてリオルの気をそらし、トオルを救ったのだった。





「………」

リオルは無言で、銀時をにらみつけた。燃えるような怒りが全身を駆けめぐり、かえって言葉を出なくさせているかのようだった。


どうして今日は、こんな邪魔ばかり起こるんだ?───リオルは心の中で呟いた。


どうしてこんな奴らが、漫画の中からやって来たりしたんだ?


そうだった。こいつらがいたせいで、リオルが仕組んだ出来事が次々とご破算になったのだ。新八、山崎、沖田がいなければ、トオルの友達はずっと前に捕まえられていたはずだし、トオルを孤立させることも可能だった。土方がいなければ、本物のボーちゃんとテルが救出されることなどなく、結果的にテルが新八の命を救うことなどなかったはずだ。


いや、そもそも神楽に邪魔されなければ、トオルの母親のニセモノが、とっくのとうにトオルを捕まえていたはずだったのだ………!





全部、こいつらのせいだ───そう思った瞬間、リオルの胸の中に渦巻いていた怒りと憎悪が、一気に噴き上がってきた。


(殺してやる………この世から、消えていなくなれ!)












銀時は心臓目がけて無数の殺気が飛ぶのを感じ、何を考える間もなく、思い切り飛びすさって逃げた。


───と、今度は喉元めがけて、鋭く光るものが一直線に迫ってきた。


びくっと首をすくめた途端に、熱い痛みが走った。攻撃が、ほんのわずかにだが、首の横の皮を切り裂いたのだ。


深く息を吸い、木刀をかまえ直して、銀時は次の攻撃へと備えた。





リオルの武器は、自由に伸び縮みする爪だった。それだけだった。何だかイリスやギルザと比べても、ずいぶんオリジナリティに欠けている気がする。確かに自由にしなり、四方八方から襲いかかってくる十の爪は、厄介ではあったが………。





爪にかすられながらもたじろがず、徐々にリオルに迫っていた銀時は、ふと目を上げて驚いた。





リオルの瞳が、真っ赤に光っている。





血の赤だった。危険を知らせる、不吉な赤だった。しかもその奥には、真剣な殺意と悪意がうごめいている。


銀時は気持ち悪くなり、目をそらそうとした。───が、できなかった。不気味な力を秘めたその赤い光を見るうちに、奇妙な震えが腹の底からこみ上げてきた。





顔が冷たくこわばり、周囲の景色が白茶けて見え、無数の光の粒がちらちらと視界を覆っている。息が苦しかった。






倒れてはいけない。───必死で気を保ち、体勢を立て直した瞬間、視界がさあっと晴れた。銀時は目を大きく見開いた。





自分の見ているものが、信じられなかった。





銀時は、果てしなく広がる野原の中にいた。薄暗い中を舞い飛ぶ鳥の羽音が聞こえ、胸の悪くなるような匂いが漂っている。───そして地面には、とてもこの世のものとは思えない光景が広がっていた。






るいるいと、見渡す限りに死体が散らばっている。ほとんど全てがよろいを身にまとい、刀を手にしているものもあった。


矢が何本もつきたった死体。全身を無惨に切り裂かれた死体。ほとんど白骨化し、どくろの虚ろな眼窩がんかが宙をにらんでいる死体………。





そしてその中には、銀時がよく知っていた者たちに、よく似た死体もあった。





銀時はあえいだ。手足も首も顔も、全てが冷たい。胸に分厚い板を押しつけられているような気がした。





息苦しさの中、銀時の目に見えている光景から、色が消えていった。





















「お、お前銀ちゃんに何したネ!」





神楽が、床に膝をついた銀時を見て金切り声を上げた。


「別に。な〜んにもしてないよ。」

軽い口調で答えるリオル。その目はまだ赤く光り、足元の銀時を見下ろしている。


「ただちょっと、僕の力を思い知らせてやっただけさ。」


「お前の……力…?」


新八が首をかしげて呟くと、リオルがようやくこちらを向いた。

その瞬間、新八は嫌な匂いでもかいだかのように気分が悪くなった。───走馬灯のように、色んな光景が目の奥にちらついている。どれも借金取りに苦しめられていた時に実際に味わった、つらい経験ばかりだった。


一瞬にして新八は我に返り、まるでマラソンをたった今走り終えたかのように、荒い息をしていた。





何だったんだ、今のは?





「分かったかな?」


リオルは再び銀時に視線を戻した。

「僕のこの瞳をまともに見た奴は、みんな無理やりに記憶をひっかき回されて、最終的には最悪な記憶を目の前に突きつけられることになるんだ。」

リオルはしゃべり続ける。あざけるような、からかうような、軽い笑みを口元に浮かべて。

「君はそうでもなかったらしいけど、この銀髪の男の最悪の記憶は、どうやらひどいものらしいね。こんなにも動揺するなんて。





───ま、すぐにその苦しみからも解放してあげるよ。」


新八ははっと気づいた。銀時の木刀が、いつの間にかリオルの手の中にあった。

銀時は木刀を奪われたことに、まるで気づいていないらしい。目をカッとばかりに見開き、顔から血の気を飛ばして、今やガクガク震え始めている。


その頭上で、リオルが木刀を振り上げた。





新八はしゃにむに立ち上がろうとした。神楽も傘をかまえようとした。沖田もバズーカを持つ手を上げた。
だが、どう考えてもリオルの動きの方が早かった。


(間に合わない!)


新八は、血が出るほどに強く唇を噛みしめた。あの木刀が振り下ろされれば、全てが終わる………。





その時、しんのすけが勇敢とも無鉄砲とも言える行為に出た。


リオルが大きく木刀を振りかぶった瞬間、しんのすけはみさえの制止を振り切って前に飛び出し、勢いよく右足を蹴上げた。───リオルを蹴ろうとしたのではない。その顔面に、自分の靴を飛ばしたのだ。


さすがのリオルにも、これは予想外だった。はっとして、リオルがとっさに木刀で弾き上げたしんのすけの靴が、銀時の頭にこつんとぶつかった。


銀時の、焦点が合っていなかったまなざしに、不意に光が戻ってきた。束の間眉をひそめ、それからはっとなって、銀時は顔を勢いよく上げた。


意識がこちら側に戻ってきたのを感じた。さっき見た光景は、ただの悪夢に過ぎなかったのか………リオルが自分の木刀を手にしているのを、銀時は目にした。


リオルが次の攻撃を始める前に、銀時はこぶしをリオルの胸に叩き込んだ。


防ぐ隙を与えないよう、唐突に腕を突き出したので、銀時が与えた一撃は通常なら肋骨をへし折るほどの威力を持っていた。リオルは完全に不意をつかれてのけぞり、仰向けに倒れた。

しかし、さすがにそのまま倒れてはいなかった。見事な身軽さでぱっと跳ね起き、リオルは銀時と向かい合って、動きを止めた。


リオルは無言だったが、その真剣な殺意は言葉で聞くよりもはっきりと伝わってきた。もう瞳の赤い光は消えている。小細工など使わず、今握りしめている銀時の木刀で、直接銀時を始末することに決めたようだった。


銀時は武器を持っていない。ざっと周りに目をやって、代わりになりそうなものが何もないのを確かめると、銀時はため息をつき、左手をすうっと顔の前に持ってきた。


銀時が何をしようとしているかに気づき、新八は全身に冷水を浴びせられたかのような気持ちになった。

(左手を犠牲にする気だ………)

それで相手が気をそらした隙に、飛びかかって木刀を奪うつもりなのだ。


リオルはそれに気づいているのかどうか、銀時をにらみ、再び木刀を振りかぶった。その瞳には笑みのかけらもなく、氷のかけらのように鋭く冷ややかだった。





左腕をやられた瞬間に、リオルの喉を右手で一撃する。───そう銀時が心に決めた瞬間、リオルの顔にまた何かが飛んだ。しかし、今度飛んできたものは明らかに靴より小さく、しかも光っていた。


リオルが右手を上げたが、間に合わなかった。次の瞬間、リオルが恐ろしいわめき声を上げ、右目を押さえた。激しい苦痛を訴える叫びだ。───彼がそんな声を出すところを、初めて聞いた。





リオルが右目を押さえている、その指の間から見えたのは、小さなコンパスだった。





その一瞬が、銀時の運命を変えた。銀時はさっとリオルに近づくと、その左手首に手刀を食らわせ、木刀をもぎ取り、その勢いを利用してリオルの肩からわき腹にかけて、斜めにすっぱりと切り裂いた。

リオルが再び叫んだ。今度は獣が吠えるような声だった。


紫色の血を全身に浴びながら、銀時は木刀を振り上げ、リオルの喉元に、まっすぐ突き込んだ。


リオルの口と首から、紫色の血が噴き上がった。それはまるで、グロテスクな噴水のようにも見えた。





リオルは白目を向き、今や本物の風間トオルとはかけ離れた形相となってのけぞり、床に倒れていった。





「銀さん!」
「銀ちゃん!」
「旦那ァ!」

新八や神楽、沖田たちが、叫びながら駆け寄ってきた。銀時は木刀をぶらさげたまま、ぼんやりと床に倒れたリオルを見つめていた。


リオルの顔は死ぬ間際にあっても、まだ怒りと憎悪の色を失っていなかった。喉の奥からごぼごぼと耳障りな音を立て、次第に人としての形を失っていきながら、リオルはふところをまさぐり、何かを取り出した。


ところが定春は、リオルの不審な行動を見逃してはいなかった。その巨体からは想像できないほどの速さで、さっとリオルの手からその何かをかすめ取り、ぽとりと床に落とした。


リオルが再び怒りと失望のわめき声を上げた。神楽が床に落ちたものを拾い上げる。


「………何アルカ、コレ。リモコンみたいアル。」


突然はっと息を呑む音がした。そちらを見ると、外国人の男が───この映画の、本来の黒幕になるはずだったアミーゴスズキが、大きく目を見開いて神楽の手の中にあるものを見つめていた。

ジャッキーがその腕に手をかけた。

「パパ、それが何か知ってるの?」

「いざという時のために作っておいた、このアジトの自爆スイッチだよ。スイッチを押してから十分で起動する……そうか………これもそいつが持っていたのか……」


沖田が半ば呆れたような、半ば感心したようなまなざしを、足元に広がるリオルの残骸に向けた。

「どうせ死ぬんなら道連れに、ってわけか………まったく往生際の悪い奴でィ。」

「定春、お手柄アルネ。」

神楽はぽんぽんっと定春の巨大な頭を叩いた。





銀時は、リオルが痙攣けいれんし、やがて動かなくなり、ただの紫色の水たまりに変わっていくまで、目をそらさずに見つめていた。───そしてようやく、しんのすけたちが固まっている方へと目を向けた。


しんのすけと目が合うと、銀時はちょっと笑みを浮かべてうなずきかけた。


「………さっきは助かったぜ、野原しんのすけくんよ。」

しんのすけは頬を紅潮させて、銀時を見つめていた。

「先生、すごくカッコよかったゾ!」

銀時はふんと鼻を鳴らした。

「俺は先生なんかじゃねぇ。だから、先生って呼んでもらう必要もねぇ。………まあとにかく、あの靴がなかったら正直俺は危ないとこだった。どうもあんがとよ───トオル、お前もな。」


ぽかんと口を開けて、リオルのなれの果ての姿に見入っていたトオルは、え?というような声を出して銀時を見上げた。

「あれはお前だろ?コンパスをリオルの目に当てたのは。」

トオルの頬が、しんのすけと同じぐらい赤くなった。銀時から目をそらし、トオルは呟くように言った。

「ポケットの中にたまたま入ってて………でもまさか、あんなにまともに当たるなんて思ってませんでした。」

「俺だってできねぇよ。まぐれってのは恐ろしいねえ。」

そう言ってから、銀時はふと思いついてリオルの残骸のそばにいき、紫色の血だまりの中からあるものを拾い上げた。───紫色に染まった、トオルのコンパスだった。

銀時はそれをつまむと、トオルを見た。

「───こりゃあダメだ。汚過ぎて使えねーよな。」

トオルはコンパスを見て、思わずといった感じで笑った。

「そうですね………新しいのを買わなきゃ……」









「銀ちゃん。」


突然後ろから呼ばれたので振り返ると、目の前に神楽が立っていた。なぜか妙にばつの悪そうな顔をしている。


「…どうした?」


尋ねると、神楽は手に持っていたものを、そっと銀時の方へ差し出した。








リオルから奪い取った、あのリモコンだった。





「コレ………いじってたらスイッチ押しちゃったアル。」



















「こっちだ!早くこれに乗れ!!」


銀時は闘いの最中にも出さなかったような怒鳴り声を上げて、混乱した春日部市民たちを次々に簡易エレベーターのようなものに押し込み、上に運んではまた下げてを繰り返していた。


「ったく、神楽のバカやろうが!!ていうかずっと前にもなかったっけ、こんな展開?」

「銀さん、しゃべってる場合じゃないですよ。」

手伝っている新八が、釘をさした。


もう春日部市民のほとんどが、安全な外へと脱出していた。───あと残っているのは、しんのすけたち春日部防衛隊とその家族たち、幼稚園の先生方、風間みおり、ジャッキー親子、そして銀時たちと真選組だった。





「よし………これで終わりだな。」

「あと三分五十秒ですよ。」

山崎が、やや神経質に言った。

「早く乗りましょう!」


みさえの声にせかされるようにして、一同はエレベーターのような乗り物に足を踏み入れた。ぎゅうぎゅうづめで、何とかほとんどが乗り込んだが………。





「………俺は乗れねーみてーだな。」

銀時が、ただ一人エレベーターの外に取り残され、頭をごりごりかきながら言った。
確かにエレベーターの中はもうぎゅうづめで、もう一人乗れそうな余地は全くない。


みんなは顔を見合わせた。





「銀さん………」


何か言いかけたトオルを遮るようにして、銀時が突然、エレベーターの上昇ボタンを強く押した。


「銀さん!?」


重たそうに上がり始めたエレベーターの上から、新八が叫んだ。銀時もまた、下からこちらを見上げて叫んだ。


「タイム・イズ・マネーだ!着いたらさっさと下りろよ!!」


まさかあの銀時に、『時は金なり』とさとされる時が来るとは思っていなかった新八だったが、言われるまでもなくエレベーターが地上の倉庫のような所に出るなり飛び降りた。神楽などは慌て過ぎて、つまづいて沖田の腰につかまり、二人で派手に転倒した。


また大ゲンカを始めた二人を尻目に、新八たちはエレベーターが再び下がっていくのを不安げに見守っていた。とっさに腕時計を見て、トオルは青ざめた。───あと三十秒しかない。


エレベーターが下りていく音が、異様なほどゆっくりに聞こえた。トオルはぎゅっと目をつぶった。今まであんなに頑張って闘ったのに………こんなふうに終わるなんて………そんなはず………。








ドガアアァァァン!






耳をろうする大音響が、春日部山中に響きわたった。


同時に爆風が吹き上がる。熱気が押し寄せてきたかと思うと、炎が高く高く燃え上がり、アジトの入り口になっていた小さな小屋を吹っ飛ばした。





爆風に髪をなぶられながら、トオルは涙を流していた。


銀時がどうなったか、考えるまでもなかった。



周りにいる全ての人々が、凍りついたように動きを止めている中、神楽がトオルと同じように涙を流しながら、前に進み出てきた。





「銀ちゃん!」


神楽はかすれた声で叫び、深く息を吸った。そして、さっきよりも大きな声でまた叫んだ。


「銀ちゃーん!」












「………うるせーな。山びこはやっほーだろうが。」





背後から聞こえてきたぶっきらぼうな声に、みんなは弾かれたように飛び上がり、一斉に振り返った。





坂田銀時が、木立の中に立っていた。


髪も服もボロボロだった。あまりにひどい様子なので、新八は一瞬幽霊になってでてきたのではないかと思ったほどだ。しかしところどころ焼け焦げた服と、身体中にくっついた木の葉を見て、新八は合点がいった。


爆発が起こった時、エレベーターで上がりかけていた銀時は、爆風によって一気に押し上げられ、地上へ飛び出したのだ。そして運良く、木の茂みの中へと落下した。





何ともみすぼらしくなってしまった銀時の姿を見ているうちに、新八の視界が涙でにじみ始めた。


トオルはまた泣いていたが、さっきとは全く違う、喜びを押さえかねた涙だった。袖で目をめちゃくちゃにこすりながら、銀時に近寄ろうとする。───しかし、神楽の方が早かった。





「銀ちゃアァァん!」


叫びざま、神楽は銀時の身体にしがみつき、力いっぱい抱きしめた。





「いてえぇぇぇ!!!」


炎の明かりに照らされた春日部山に、叫び声が響きわたった。


銀時たちとしんのすけたちの冒険も、次の次ぐらいで一応の終結となる予定です。これまで応援して下さった皆さん、どうもありがとうございます。最後まで、どうかお付き合い下さい(o^_^o)











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