《映画クレヨンしんちゃん&銀魂》大嵐を呼ぶ!踊る暇がありゃ映画を救え!!(26/30)縦書き表示RDF


今回はどっちかっていうと新八がメインです。リオルの主要配下の二人がどうなるのかも、注目しておいて下さい!☆感想お願いします☆
《映画クレヨンしんちゃん&銀魂》大嵐を呼ぶ!踊る暇がありゃ映画を救え!!
作:虹純晶



その弐拾六:どんな奴でも死ぬ気になれば十倍は強くなる


あれだけいたニセモノたちが、もうほとんどいなくなってしまっていた。





床にも壁にも銀時たちの身体にも、紫色のどろどろしたものが飛び散り、部屋の中にはたとえようもない強烈な異臭が立ちこめている。今、この部屋で闘いを繰り広げているのはたった四組になっていた。





イリスと九兵衛、ギルザと新八、リオルと定春………そして、まだケンカ中の沖田と神楽である。


東城は九兵衛の後ろで、いつでも助太刀に回れるような体勢をとり、銀時は木刀を左手でつかんで右手であごをなでながら、やんちゃな弟を見守っているような表情で神楽たちの激闘(?)を眺めている。山崎は仲間たちの手でしんのすけたちがいるのと同じ場所に運ばれたが、まだ意識がぼんやりしているようだった。




















紫色の血しぶきを上げて、イリスの右腕が───槍の形に変形した腕が、斬り飛ばされて宙を舞った。


(こいつ………!)


強い。だが少し前に、同じように自分の腕を切り落とし、昏倒せしめたあの男とは別種類の強さだ。あの男には野獣が牙をむきだして飛びかかってくるような、そんな獰猛さを秘めた力強さがあったが、今闘っている若者の動きはずっと整っており───しかも、無駄がない。


休む間も、息をつぐ間すらなく、九兵衛の神速の刀が襲いかかってくる。上から、下から、横から、正面から。


それに何だ?さっきから感じる、この妙な違和感は。こいつと闘い始めてから、ずっとその感覚が胸を押さえている。この若者と他の奴らとの間に、何か徹底的な差があるような気がしてならないのだ。


腕を斬られ、こちらが動きを止めざるを得なくなったところへ、上から刃風が迫る。───ところが身をよじって逃げようともしないうちに、突如刀がイリスの頭上5センチぐらいのところで止まった。


目を丸くして見上げると、九兵衛の顔が目に入った。





鼻筋の通った、きりっとした印象を与える整った顔立ち。鋭い光をたたえた右目。しかしその奥に、イリスはわずかにだがためらいの色を見て取った。そして、男にしては長く黒々とした髪の毛に、色白の肌………。





………え?男にしては?





「──お前………女、か?」


九兵衛の瞳が揺れた。───それが、イリスがこの世で見た、最後の光景となった。






九兵衛の刀とは違う、硬く鋭い何かが、背中から胸へと貫通した。


───それはまっすぐに、イリスの心臓部分を深く貫いていた。

































「………貴様。」





九兵衛は呆然としていた。何もできないまま、溶けていくイリスの身体と彼にとどめをさした者とを交互に見比べていた。





「なぜだ………こいつは、お前の仲間だったんじゃないのか!?」

「まあね。」


リオルが九兵衛の方を見ずに答えた。なんと、片手で定春の頭を押し、動きを止めている。


「じゃあ、何で殺したんだ?」


「あれ、さっき言わなかった?僕、バカは嫌いだって。そいつもバカだから殺したんだよ。闘いの最中に、腕を落とされたっていうのに再生しようともせずにぼんやりしてるなんてさ。───ま、人間一人片づけられない時点で処分決定だけど。」



今まで通りの軽い口調の中に、ひやりと冷たい刃が感じられるようなしゃべり方だった。───九兵衛は金縛りにあったようになって、リオルの顔を見つめていた。仲間をあんなふうに殺すなんて、彼には………いや、彼女にとっては考えるだに嫌なことだった。


それなのに、今そこにいる少年は小さな虫を踏みつぶすような軽い気持ちで、仲間を殺している───。





「あぁもう、いい加減にどいてよ。」


リオルが舌打ちして、定春の顔に蹴りを繰り出した。定春がぎゃっと叫んで後ろに下がった隙に、リオルは一瞬にしてそこから姿を消し、次の瞬間、今度はギルザのそばに姿を現した。


ギルザはイリスがやられた時から真っ青になっていたが、リオルの姿を間近で見た途端、唇まで真っ白になってしまった。


「ギルザ、分かってると思うけど。」


リオルが言った。ギルザが怖がっていることは百も承知らしく、からかうような薄い笑みを浮かべている。


「さっさとそいつを倒しちゃわないと………君も、イリスと同じことになるよ。」


新八は、ギルザの身体が震えるのを見た。───しかしその次の瞬間、顔を上げたギルザを見て、思わずぎくりとなった。

単純なのっぺりした顔に、激しい敵意がみなぎっている。普段ボーちゃんがそんな顔をしているところを見たことがないだけに、変化が余計はっきりと見えた。しかし一番新八の目を引きつけたのは、表情の変化ではなかった。


鼻水が、真っ黒に変わっていた。





リオルが手を打ち、弾んだ声を上げた。


「あはは、やーっと本気になってくれたみたいだね。───その黒い鼻水にちょっとでもかすったら、確かあっという間に毒が回って死んじゃうんだっけ。」


お妙が息を呑み、震える手で口を覆った。

「新ちゃん………」





耐えがたい緊張をはらんだ沈黙が、広い部屋の中に、煙のように充満していった。
















新八は、自分の喉めがけて、鋭い風が襲いかかってくるのを感じ、さっと身をかがめてよけた。瞬間、黒い鼻水が消えた………と、思った途端、下から鼻水がはね上がってきた。

反射的に刀で鼻水を弾きざま、新八はすくい上げるように刀を振り、ギルザの膝に叩きつけた。

ギルザは飛び上がって回避し、上から攻撃を繰り出してきた。何とか受け流したが、手がしびれるほどの激しく重い衝撃が来た。


(まずい………)


全身が、氷のように冷え切っている。今まで何度となく危険な出来事に巻き込まれてきたが、これほど死を身近に感じたことはなかった。汗だくになって刀を振る新八の姿は、まるで舞をまっているように見えた。───が、それは気を抜いた途端に命を失う、命がけの舞だった。


新八は、攻撃を必死に受け流しつつ、じりじりと前に出た。





しんのすけたちも、沖田と神楽も、真選組の隊員たちも、ようやく目を覚ました山崎も、凍りついたように動きを止めて、お互いの生をかけた、すさまじい闘いを見つめていた。










振り下ろされてきた新八の刀を弾いて軌道をずらすと、ギルザの鼻水が新八の刀の刃にぐるぐると巻きついてきた。応戦する間もなくぐいっと引っ張られ、引き寄せられた新八の喉に、ギルザの手が伸びてきた。

首を強く締めつけられる前に、新八はぐいとあごを引き、ギルザの手首を思い切り噛んだ。一瞬ギルザがひるんだのを見逃さず、全身の力をこめてギルザを突き放すと、新八は刀をかまえ直した。


新八が噛んだ手首から、床に紫色の血がしたたっていたが、ギルザは全く表情を変えず、再び黒い鼻水を繰り出してきた。


わずかな動きで攻撃を弾き、軌道をずらすと、新八はギルザとの間合いをするりとつめた。

それから自分がやったことは、半ば無意識のうちにやったことなので、新八自身にもどのようにしてやってのけたのかよく分からなかった。───ただ、自分がもう無我夢中の心境でいたことは覚えている。


新八は自分の脇から襲いかかってきたギルザの鼻水を弾き、その勢いを利用してくるりと刀の向きを変えると、刀の刃ではなく柄の方をギルザに向け、勢いよく跳ね上げてギルザのあごを下から叩いた。


刀を握る手に、鈍い衝撃が伝わってきた。───血を吐きながら、ギルザはのけぞり、飛びのいた。





口からだらだらと紫色の液体を垂らし、ギルザはますますすさまじい形相になって、一気に飛びかかってきた。














二人の身体が交差した瞬間、ギルザの首から血がしぶいた。


それとほぼ同時に、新八がよろめいた。───その左肘に黒く光る破片が深々と突き刺さっているのを、トオルは悪夢を見ているような気持ちで眺めていた。


ひと呼吸の後、ギルザが首を押さえてどさっと倒れた。新八も膝をつきそうになり、刀をつっかいぼうにして身体を支えながら、ギルザが動かなくなり、ただの紫色の水たまりになるまで見守っていた。

敵を討ち果たしたのを確かめると、新八は腕に刺さったギルザの鼻水のかけらを、力をこめてぐいっと引き抜いた。………しかし、もう遅すぎるのは分かっていた。傷口が奇妙な具合にしびれ始め、それが次第に全身へ広がっていくのが感じられる。

僕は、ここで死ぬんだ………。





誰かが身体を抱きかかえてくれるのを感じた。顔を上げようとしたが、力が入らない。目がかすんできたらしく、眼鏡を通して見える風景に霧がかかり始めていた。すぐ近くで泣いているのは、お妙だろうか。


何だか眠かった。全てが霧に覆われている中、何か温かくて柔らかいものが怪我をした肘辺りに触れるのを感じたが、別に何とも思わなかった。





遠くの方から聞こえる声に包まれながら、新八はゆっくりと目を閉じた。





















お妙は、これで今日三回目の涙を流していた。


「嘘よ………」

呟くようにして、そう言っている。

「嘘よ、こんなの………嘘だわ………」





「残念ながら、嘘じゃないよ。」





リオルがギルザの残骸に目を落としたまま、静かに言った。


「ギルザの黒い鼻水にほんのちょっとでも傷をつけられたら、それでもう終わりなのさ。毒が染み渡って息絶えるまで、多分一分もかからないだろうな。」


リオルがようやくこちらを向いた。───その顔が嬉しそうに輝いているのを見て、トオルは自分の目を疑った。


「ちょうどいいや。前にギルザが動物を殺したのを見たことがあるけど、人が死ぬとこは初めてなんだ。ここでじっくり見させてもらうとするよ。」


楽しそうな口調から、しんのすけたちはリオルが本気で新八の死を楽しんでいるらしいことを知った。

トオルは激しい怒りがわき上がってくるのを感じたが………だからといって自分に、何ができるだろう?沖田を一撃で倒したような相手だ。イリスを呆気なく、見えない攻撃で殺したような相手だ。

人の死を、顔色一つ変えずに見ていられるような奴なのだ。



怒りが冷えていく中、突然不思議な気持ちに襲われた。


笑っている、リオルの顔。それと同じ笑みを、いつか、どこかで、前にも見たことがある気がする。霧がかかったように曖昧で、ぼやけた記憶の向こう側で、これと同じ笑顔が自分に笑いかけているのを見た気がする………。





足元に柔らかいものが触れ、トオルは我に返った。


シロと、シロにそっくりだけど空色の目をした犬が───確か、テルという名前だ───新八の近くに寄ってきていた。シロはじっと新八の顔を見つめて動かなくなったが、テルは新八の怪我した腕に身を寄せ、座り込んだ。





















新八は、湿ったものが傷口に繰り返し触れるのを感じた。


目を細め、必死に焦点を合わそうとすると、白い小さな犬の姿が見え、またぼやけた。目が空色に光っているのが分かる。───テルが、腕の傷をなめているのだ。


始めのうちは、なめられるたびに鈍い痛みが走っていたが、次第に何も感じられなくなっていった。麻痺してきているのかも知れない。世界がぐるぐる回りながら、遠ざかっていくようだった。


これが死ぬってことなら、そんなに悪いことじゃない───新八はそう思った。むしろ、これまでにないくらい、とてもいい気分だ………。










だが………これが本当に死なのだろうか?


霧の中に消えかかっていた辺りの光景が、またはっきりと見え出した。身体の感覚も次第に戻ってくる。何気なく、自分の腕に目を下ろすと、テルがまだ肘をなめているのが見えた。





傷は、消えていた。





「どけ。」


突然、尖った声がした。トオルと同じ声だが、これはおそらくリオルのものだろう。


「聞こえないのか、このクソわたあめ。───どけ!」


周囲の空気をビリビリと震わすような大声がした。テルはびくっと顔を上げ、再びシロと一緒に、しんのすけのそばへ戻った。


リオルは顔を真っ白にして、新八の左腕を見つめていた。───彼は明らかに、しんのすけたちと同じぐらい驚愕しているようだった。





「テルの………唾液………」


リオルがかすれた声で、呟いた。


「そうだ………博士が言っていた………強力な………癒しの力……」


リオルが新八を見つめた。彼の顔にこれほどのショックが浮かぶところを、みんなは初めて見た。


しばらくして、リオルがまた呟くように言った。

「だがまあ、そんなことはどうでもいい。ギルザはどうせ殺すつもりだったし………お前らぐらい、僕一人で充分倒せる………。」


リオルが近づいてきた。神楽と沖田が歯を食いしばり、傘を、バズーカを、そろそろとかまえる。真選組隊員たちもはっと我に返ったようになり、しんのすけたちを守るような体勢へと動き始めた。


起き上がろうとした新八は、姉に押さえられた。


「ダメよ、新ちゃん。さっき死にかけるほど頑張ったんだから、もうゆっくりしてなさい。」





リオルは何も持っていない。素手だった。それなのに、何のためらいもなく、刀をずらりとかまえる男たちの方へ歩み寄ってきた。





何が起こったのか、誰にも分からぬうちに、隊員の一人が吹っ飛び、くるくる回りながら壁に激突して動かなくなった。


沖田は脇をすり抜けていくリオルの髪を捕まえようとしたが、手に熱い痛みを感じて引っ込めてしまった。神楽がすっと動き、見事な身のこなしで飛び上がると、傘を滑らかな動きでリオルの頭に叩きつけた。


リオルはひょいと傘の下をかいくぐり、信じられないような跳躍力で神楽の頭を越えそうなぐらいにまで飛び上がった。そして、神楽に反撃する間を与えず、さっき打ち倒した隊員から奪った刀を、神楽の肩に突き刺した。


神楽がうめいた。リオルは宙に舞い上がったまま刀の柄に両足を乗せて体重をかけ、さらに刃を深々と神楽の身体に食い込ませた。


そして、刀を踏み台にして神楽を飛び越え、向こう側に降り立った。───トオルの、目の前に。





トオルは動けなかった。目の前で展開される、恐ろしい闘いを目の当たりにして、沖田の手や神楽の肩から血が噴き出すのを見て、身体がしびれたようになっていた。


リオルが自分を見て、また微かに笑った。───その瞬間、雷に打たれたような感覚がトオルを襲った。


間違いない。僕は前にもこんな笑いを見たことがある。









「………まずは、君からだよ。」


リオルの手が、トオルの喉へと伸びた。

















風間くんが、やられる………!


しんのすけは今までに味わったことのない、激しい恐怖を感じた。何もできないまま、目の前で友達が殺されるなんて、考えるだに恐ろしいことだった。


しんのすけは我を忘れ、リオルの腕にしがみつこうとした。───その途端、顔を殴りつけられた。この細い腕にこれほどの力があるのかと思えるほど強烈な一撃で、しんのすけは床に倒れ込み、そこでも強く頭を打って束の間息がつまった。口の中に、血の味がする。





「しんのすけ!」


ひろしが震える手で、とめどなく鼻血を流してぐったりしているしんのすけを抱き起こした。───瞬間、何かが耳をシュッとかすめるのを、ひろしは聞いた。






リオルも何か感じたのか、振り返ろうとした………しかし、ろくに後ろを見ないうちに、何か細いものが背中に激突した。リオルは、しんのすけのように床に倒れ込みはしなかったが、完全に不意をつかれてよろけ、もうちょっとで膝をつきそうになった。トオルの首をへし折ろうとしていた手は狙いからそれ、その隙を見逃さなかった山崎はトオルの腕を引っ張って、リオルの手が届かないところへと連れて行った。





怒りと屈辱と動揺とで震えながら、リオルはゆっくりと振り返った。
















銀色の髪をした男が、少し離れた所に立っていた。───その活気のない死んだ魚のような目には、普段滅多に見せることのない光が………鋼のような冷たさと鋭さを秘めた光が、宿っていた。


書いている途中に、新八ってこんなに強かったっけってふと思ったんですが、ま、サブタイトルと同じような意味で受け流して下さい(おぃ)。イリス、リオルの二人も倒され、残るはリオルだけ………次回は皆さんお待ちかね(?)、銀さんが大暴れします!!そしてリオルもとうとう本気を………!?お楽しみに!!











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