その弐拾参:回想もたまにはいいけどなるべくほどほどにしとけ
扉のこちら側と向こう側にいる人物たちは、しばし呆気にとられて立ち尽くした。
「………何なの、あなたたちは?」
岩床に座り込んだ二人のうち、女性の方が尋ねてきた。───その声を聞いた瞬間、銀時は深い驚きに打たれて息を呑んだ。
(………まさか。)
間違いない。『踊れ!アミーゴ!』の中で何度も聞いた、あの女性の声だった。
「僕たちは………」
言いかけて新八は、二人が手首と足首を縛られていることに気づいた。足首を縛っている縄は、床にしっかりと繋がれている。
閉じ込められているのだ。
山崎が一瞬、ためらうようなそぶりを見せたが、扉の向こう側に入っていって、ふところから小刀を取り出し、二人を縛っている縄を慎重に切った。
「ありがとう。」
男性の方が、縛られていた足をさすりながら、呟くように言った。しかしその目は相変わらず、銀時たちにじっとそそがれている。
その男性の方にも、銀時・神楽・沖田の三人は見覚えがあった。
「───ジャッキーのパパアル。」
自分がしゃべったことにも気づいていないような表情で、神楽がぽつりともらした。
「おいっ、神楽………!」
銀時は慌てて神楽の口を押さえようとしたが、もう遅すぎた。二人の不審そうな表情が、ますます色濃くなっていく。
「何で私たちの名前を知っている?」
銀時は思わず、ため息をついた。
また同じことを繰り返さなければならないのかという気持ちの溶け込んだ、重いため息だった。
「さてと………」
リオルが部屋の真ん中に置かれた椅子に腰を下ろすのを、イリスとギルザは緊張したまなざしで見守っていた。
マサオはリオルのちょうど向かい合う形で机を挟み、同じように椅子に座らされている。ただしリオルと違うのは、椅子に鎖でがんじがらめに縛り上げられていることだった。
イリスは内心驚いていた。佐藤マサオは泣き虫で、気弱な男の子だと聞いている。しかも今は視力を失っているのだ。それなのに、うつろな目を自分たちに向けてくるマサオの顔は、意外と冷静だった。怯えていることは確かだったが、取り乱してはいなかった。
リオルもそれに戸惑ったのかも知れない。ちょっと顔をしかめてマサオを見つめた後、左手で頬杖をつき、右手の人差し指と中指で、机をとんとんと軽く叩き始めた。
これが集中して考え込んでいる時のリオルの癖だということを知っているイリスは何も言わなかったが、それにしても妙な癖だと改めて思った。風間トオルにも同じような癖があるのだろうか、それとも───。
リオルは机を叩くのをやめ、イリスとギルザに視線を戻した。
「………それじゃ始めてよ、二人共。」
「………銀ちゃん、新八!」
神楽の呼ぶ声に、説明に追われていた銀時と新八は、これ幸いとそちらへ逃げた。
「どうしたの?神楽ちゃん。」
「五百円玉でも拾ったか?」
銀時の問いを無視し、神楽は傘の先で壁を指し示した。───隠し扉のあった所から、三メートルと離れていない所だった。
「ここも、ちょっと変みたいアルヨ。」
そう言って、神楽は壁を傘で叩いてみせた。返ってきたのは、金属なら響かせないような鈍い音だった。
「ほんとだ………」
新八は呟き、ふと思い立って、その壁の周辺辺りを手さぐりし始めた。
探していたものは、すぐに見つかった。───質の違う壁のすぐ右側、ちょうど新八の目線ぐらいの高さの部分の壁に、ほとんど見えない真四角の区切れがうっすらと見える。銀時のそのことを伝えると、彼は少し顔をしかめて言った。
「どうすんだ?………開けるか?」
銀時の考えていることは、よく分かった。新八とて、この扉を開ける勇気はなかなかわいてこなかった。
しかしせっかく扉とその開け方を見つけたというのに、それをそのままにしておくというのは一層すっきりしないものであった。
「………開けましょう。」
ささやくようにしてそう言うと、新八はそっとスイッチに手を伸ばした。後ろで誰かが───多分お妙だろう───はっと息を呑む気配がしたが、新八は無視した。
新八の指に押され、壁が小さな真四角に、がくんとへこんだ。
壁がゆっくりと上がり始めた。
壁が開き切ろうとする寸前、数人の悲鳴が上がった。お妙や、ネネのも混じっていた。
男が一人、倒れている。それもただ倒れているのではない。死んでいた。うつ伏せになり、背中にナイフを突き立てられて。
異様に頭が大きく、そのくせ背は新八や神楽より小さい。肌にはやや青みがかっていた。
新八は目を細め、男を凝視した。
(………まさか、天人?)
ありえないことだとは思ったが、目の前で死んでいる男の容貌は、人間とは言いづらいものだった。
それだけではない。少し前───ここに来る前、こんな姿の男をどこかで見たことがある気がする。どうしてだろう?
しかし、新八がどこでどうその男を見かけたのか、思い出す機会は結局失われた。
扉が開き切った瞬間、死体の倒れている向こう側の暗闇に立っている、小さな青い影があらわになったのだ。
銀時が、呆然と呟いた。
「トオル………!」
暗い部屋の中で、ルビーは冷たい床に座り込み、じっと虚空を見つめていた。
目覚めてからずっと、あの男に殴られた頭が割れるように痛かったが、心を占めている苦痛に比べれば、そんなものは何でもなかった。
どうしてあの時───あの男の腹を切った次の瞬間に、とどめをさしてしまわなかったのだろう?
自分の力を過信していたことは、よく分かっていた。でも本当はもっと別の理由があったのではないかと、今になって思い始めていた。
そう………あの男の顔を見た時から、何か自分の中で異変が起こったのをルビーは感じていた。
あいつと初めて対峙した瞬間、奴の顔に並ぶようにして、もう一人、別の男の顔がぱっと心の中に浮かび上がったのだ。
それは稲妻がひらめくよりも速い、ほんの一瞬の出来事だった。しかしルビーは、外見は相変わらず無表情を装いつつも、内心激しく動揺していた。それは今まで一度も味わったことのない、奇妙な感覚だったからだ。
───いや…本当にそうだろうか?
何だか前にも、こんな気持ちになったことがあるような気がした。───ずうっと昔、まだ記憶も定かでない頃に。それをたぐり寄せようとしてみても、すっと遠ざかってしまう。でも確かに、そんなことがあったような感じがしていた。
ルビーはこめかみを押さえ、目を閉じた。ばかばかしい。どうせ頭が混乱したことによる勘違いか何かだろう。自分は生まれた時からずっと、アジトから外と言えば春日部にしか行っていない。あんな物騒な男のような奴と知り合ったのは、後にも先にもあの時だけだ。
湧き上がる頭痛をこらえながら、ルビーはじっと考えをめぐらせていた。こんなに長い間、何もせずにじっとしているのは初めてのことだ。色々考えてみるにはいい機会だった。
ルビーは自分が生まれてからのことを思っていた。───自分に力を与えてくれた、あの頭でっかちな、変わり者の男のことを。
そして、リオルのことも考えた。
魔虞蛇博士は確かに天才だった。ルビーは博士がやって来る前に作り出されたニセモノの一人だったので、彼が現れた時のことをよく覚えている。
あの時、突如ルビーたちの前に出現した魔虞蛇博士は、自分に協力すれば強大な力と生命力、そして意思を与えてやると約束したのだ。
あの時はただの操り人形だった自分たちにとって、『意思』は大して魅力のある言葉ではなかったが、『強大な力』にはみんなが心惹かれた。それはルビーも同様で、ニセモノたちは深く考えることもなく、博士に協力することを決めたのだった。
ルビーたちは自分たちの生みの親であるアミーゴスズキを襲った。まさか自分が作り出した忠実な部下たちに襲撃されるとは思ってもいなかったアミーゴスズキは、呆気ないほど簡単に捕らえられ、いつの間にか魔虞蛇博士が作ったらしい二つの隠し扉の向こう側に閉じ込められた。
魔虞蛇博士は約束を守った。───どうやったのか知らないが、ニセモノたちに力を与え、どうやったのか知らないが、意思をも与えた。自分たちに多大な変化をもたらしたこの贈り物がどうやってなし遂げられたものなのか、ルビーは今でも知らない。別に知りたいとも思っていなかった。魔虞蛇博士の方でも、わざわざ教えるような親切なことはしてくれなかった。自分のことを恩人として、畏怖すべき存在として、いつまでもあがめさせておきたかったのだろう。今ならそれがよく分かる。
実際、博士は自分がアミーゴスズキの二の舞にならないよう、細心の注意を払っていた。ニセモノたちの心臓部分は、常に博士が握っていた。反抗しようとした仲間の一人が呆気なく倒れ、死んでいく様を、ルビーはこの目で見たことがある。あの時はさすがに恐怖を覚えたものだ。
それほど巧妙に、ニセモノたちを支配下に収めつつあった魔虞蛇博士を破滅に追い込んだもの───それは、風間トオルのニセモノ・リオルを作り出したことだった。博士は風間トオルの子供らしからぬ思考能力の高さを踏まえて、そのそっくり人間にニセモノ全体を指揮させようと考えていた。ニセモノたちの数も膨大なまでに増え、一人で支配するのにはさすがに無理がでてきたからだった。
だから魔虞蛇博士は、リオルに他のニセモノ全ての力を足しても余るほどの力を持たせることにしたのだ。
でもそのことが、必ずしも博士の命取りになったわけではないだろうとルビーは考えていた。
───リオルは、最初に会った時から他のニセモノたちとは違っていた。言葉でどうと表現するのは難しいが、何かが違う。顔は笑っていようがどんな表情をしていようが、その内面には何かひやりとするものが、いつも存在している───そんな雰囲気の持ち主だった。
何よりも、他のニセモノたちと違うところは、自分が入れ替わることになる本物の風間トオルに、強い悪意を抱いているらしいことだった。始めのうちルビーは、よりためらいなく強大な力を使えるようにと、博士がそのような感情をリオルに植えつけたのだと思っていたが、どうもそうではないらしい。博士が早く入れ替わってニセモノたちを指図しやすい立場につけと何度も言っているのに、リオルが従わずにいる場面を幾度か目撃している。
そういう時リオルは、眉一つ動かさずに決まってこう答えた。
「ダメですよ。風間トオルを捕まえるのは一番最後です。───お楽しみは、最後にとっとくものでしょう。」
そして、ニセモノたちを指揮することになるリオルは、他のニセモノたちは教えてもらえない様々なことを博士から享受していた。───そしてとうとう博士は、ニセモノたちの製造方法まで詳しくリオルに教えてしまったのだった。
リオルが初めからああいうつもりだったのかどうかは、分からない。───リオルに聞いたって、本当のことは教えてくれまい。
ある日、ルビーが春日部の偵察から帰ってくると、博士の部屋から悲鳴が聞こえてきた。
はっとして、そこへ駆けつけた途端、床に倒れている魔虞蛇博士とそれを見下ろすリオルを目の当たりにしてしまったのだ。博士の背中にはナイフが深々と突き刺さり、もう動かなくなっていた。
凍りついているルビーを振り返ったリオルの端整な顔には、毛ほどの動揺すら現れていなかった。
『あぁ、そういうことでルビー、これからは僕が一人で君たちを指揮するから。他のみんなにもそう言っといて。』
それだけ言うと、リオルは手を振って、ルビーを部屋から追い出したのだった。
あの死体をどう処分したのか分からなかったが、なぜリオルが魔虞蛇博士を殺したのかは薄々見当がついていた。ここ最近、特に風間トオルへの対処のし方について、二人は意見が対立しがちだった。でも命を握られているリオルは、結局は博士に従わざるを得なかったのだ。
それなのに、突然博士を殺害したということは………。
そう、恐らくリオルは、博士が自分たちの生命力を支配しているその方法を、知ってしまったのだ。ひそかに探り出したのか、それとも博士が自分の負担を減らしたいために、うっかり口を滑らせたのか。
いずれにしろ、それさえ分かればもう、博士を恐れる必要はない。
ルビーはふと、思考から意識を引き戻した。
隣の部屋が突然、騒がしくなった。………そちらは確か、春日部から捕まえてきた本物の人間たちが閉じ込められている大部屋のはずだが………。
次の瞬間に響いてきた、聞き覚えのある声を耳にした時、ルビーは思わず背筋を伸ばした。
そして顔をしかめて、目の前の壁をじっと凝視していた。
「トオル………!」
銀時が呟くと、笛のような細い音を立てて息を吸い込み、風間トオルは近づいてきた。
「銀、さん…新八さん……神楽さん……」
ささやくように言って、トオルは死体を慎重にまたぎ越え、こちらへ歩み寄った。
そしていきなり、むしゃぶりつくようにして銀時の腰辺りに抱きついたので、新八はびっくり仰天した。トオルがこんなふうに感情をあらわにしたところなど、ほとんど見たことがなかったからだ。同じように驚きに打たれた人々が、後ろでざわめいているのが聞こえた。
銀時もまた、負けず劣らず驚いていた。───自分にしがみつき、腰をつかんでいる手の震えと、その温もりが伝わってきて、銀時は思わず口元をほころばせ、トオルの頭に手を置いた。
「………そうか、心配してたんだな。悪ィ悪ィ。」
銀時たちとはぐれてしまってからずっと、トオルは彼らがどうなったのか気にし続けていた。たとえどんな形だろうと、再び会うことができて、トオルの中にため込まれていた感情が一気にあふれ出してきたのだ。
「風……間、くん。どうしてそんなとこに?」
我に返ったらしいネネが、おずおずと問いかけてきた。
どうやらその時初めて、トオルは銀時たちの後ろにいる人々に気づいたらしい。ぱっと顔を赤らめて、銀時から離れ、ばつが悪そうに目をそらした。
「う………うん。実はね───」
トオルが語って聞かせる話を、銀時たちも、ネネたちも、みんな熱心に聞き入った。どうやらトオルの出現は、自分たちにとってプラスに働いたらしいと新八は見ていた。トオルが銀時たちと親しくしている様は、新八たちの言葉を裏づけるには充分な証拠だったに違いない。事実お母様方の自分たちに向ける視線が、明らかに柔らかめになった。トオルはいわゆる『優等生』タイプの少年だから、周辺の人々の間ではなかなか評判がいいのだろう。
「へぇ………定春が、そんなことを………」
話を聞き終えた新八が、目をまん丸くしている。神楽も驚いているようだった。
「定春って誰ですの?」
酢乙女あいが、不意に口を挟んできた。
「あぁ、僕たちの………ペットだよ。」
新八は曖昧に言葉をにごした。定春のことは、説明するよりも実際に見てもらった方が分かりやすいだろう。
沖田はもっと別の部分に反応した。
「近藤さんと連絡を?無線機はどこにやったんでィ。」
「あっ、そうだった!」
トオルは慌てて隠し扉の向こう側に行き、無線機と、懐中電灯を手に持って戻ってきた。さっき扉がいきなり開き始めたので、びっくりして落としてしまったのだ。
「いきなり切れちゃったから、近藤さん、心配してるかも………」
「ほんとに近藤さんだったんだな?よーし。」
と、沖田はトオルの手から無線機を取り上げ、そして山崎に突きつけた。山崎がきょとんとして沖田を見る。
「隊長、一体何を………?………あ、そうか!」
何か気づいたらしい山崎は、慌てて無線機を沖田から受け取り、電源を入れた。
「言え!いい加減に何か吐けよ!!」
「だって………本当に何も思い出せないんだもん。」
「嘘をつくな!何か一つぐらいあるはずだ!!」
イリスはあせっていた。そのあせりが、声に出てしまっていることもよく分かっていた。
あせりは敵に、かえって余裕を与えてしまう。それを知っているのにどうしても心が急いでしまうのは、後ろでリオルが見物しているからだった。横にいるギルザも同様だろう。
二人は、リオルの手により作られたニセモノたちだったから、生まれつき他のニセモノたちに比べてより強い力を持ち、より凶暴な性格を有していた。リオルの前には何とかいう博士がニセモノを作り出していたそうだが、詳しいことは知らない。
リオルは強力な配下をそろえるために、恐ろしい手段を行使した。───自分が作ったニセモノと、博士が作ったニセモノとを対決させ、お互いに殺し合わせたのだ。
強力かつ凶暴なリオル側のニセモノたちは、博士側のニセモノたちを容赦なく襲い、殺していった。こうしてニセモノたちは全て、リオルによって作り出された者ばかりとなった。
───ただ、一人を除いては。
イリスは今でも、あの闘いをありありと覚えている。いや、ギルザも、他のニセモノたちも、もしかしたらリオルでさえも、あの時のことを脳に焼きつけてしまっているかも知れない。
もうその頃には、アジトはリオル側のニセモノばかりになっていた。そんな中、アジトの奥深くにある倉庫の中でひっそりと暮らしているところを見つかり、リオルの前に引き出されてきたのが桜田ネネのそっくり人間───ルビーだったのだ。
イリスはあの時、ルビーを捕まえて引き立てていった者の一人だった。ルビーは全く抵抗しなかったが、その目に見つめられた瞬間、イリスは思わず背筋を伸ばした。………そうせずにはいられない何かが、彼女の目の中にはあった。
リオルは自分が作ったネネのニセモノとルビーに、みんなが見ている前で闘うよう命じた。
その場にいる誰もが、ルビーが無惨に敗北して散るだろうと確信していた。しかもリオルは、彼女が放火能力を使うことを禁じた。───だからこそ、次の瞬間に展開された光景は、みんなの度肝を抜くものだった。
勝つ気満々で襲いかかってきた相手の攻撃を、ルビーは表情一つ変えずにかわしていった。しかも最小限の動きで回避しているのが、イリスにはよく分かった。
まずそれで激怒した相手は、すぐさま腕を変形して、ルビーの頭をまっすぐに狙った。一方ルビーは、武器として与えられた一本のボロ刀を、敵の顔に突き出した。
ルビーの左目の上辺りから、ぱっと紫色の血が飛んだが、敵は刀を余裕でかわし、奪い取り、へし折ってしまった。
これで勝負が決まった───と、その時誰もが思った。実際次の瞬間、相手の変形した腕が襲いかかり、ルビーはあっという間に肩を深々と切り裂かれた。
斬られたルビーは、ごく自然な動作で、ふわりと敵のふところに入った。傍目には、倒れ込んだように見えなくもなかったが………。
相手が首から血を吹き出して倒れたのは、まさにその瞬間だった。
その時の光景を理解するのにしばらくかかったことを、イリスは覚えている。ルビーの手に折られた刀の破片があるのを見ながらも、ただ呆然としているばかりだった。
それはきっと、リオルも同様だっただろう。
敵の上にかがみ込み、息が絶えていることを確かめると、ルビーは全身を紫に染めたまま、刀の破片を拾い集めて出て行った。
それだけのことをする間、ルビーの顔には何の感情も浮かばなかった。───今と同じように。
背後でため息が聞こえて、イリスははっと我に返った。慌てて振り返ると、リオルが笑いながらこちらを見ている。
「やっぱりその程度じゃ吐かないみたいだね………仕方ない、やり方を変えてみようよ。」
イリスとギルザは緊張した。『やり方を変える』ということは、手荒な方法に切り替えるということだ。
「でも………相手は子供ですよ?下手をすれば、死んでしまいます。」
「最初は脅すぐらいでいいさ。例えば───これなんかで。」
リオルがいつの間にか手にしているものを見て、イリスは目を大きく見開いた。
「バズーカ?一体……一体どこから、そんなものを!?」
「うん、これはね………」
バーン!
突然、けたたましい音を立てて扉が開いた。イリスとギルザは飛び上がって振り返った。
「誰だ………!!?」
沖田総悟が、目を怒りに燃え上がらせて、そこに立っていた。
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