その弐拾弐:カモフラージュって英語?え、フランス語なの?
あまりにも強いショックを受けると、逆に冷静になってしまう。頭が驚きについていけないから───という話を聞いたことがある。
今のトオルは、まさにその状態だった。刑事ドラマや推理アニメなどでは、死人の第一発見者は決まって大きな悲鳴を上げているが、トオルは叫ぶどころか、声を出すことすらしなかった。ただ懐中電灯の光を足下に倒れる死体に向け、妙に冷めたような気持ちで見つめているだけだった。顔が見えなかったからか、それとも血がほとんど流れていなかったからかも知れない。目の前が暗くなるようなこともなかった。
「どうしたんだ?大丈夫か?」
返事がないので心配になったのか、近藤が無線機の向こうから、せき込むような口調で話しかけてきた。トオルは今、男のそばに膝をついていた。
「…死体を見つけました。」
自分でも呆れるくらい、平静な声が出た。
「何だと!?」
近藤は明らかに動揺していた。声が裏返っている。
「男の死体か?それとも………」
「はい、男です。」
答えながら、トオルは男をつぶさに観察していた。本当に変わった体型の人だ。それに何だか………肌の色が………。
トオルが死んでいる男の奇妙な体型のことを話すと、にわかに近藤の口調が緊張した。
「頭がでかい?───まさか、肌が青みがかったりしてないだろうな?」
トオルはびっくりして、手の中の無線機を見つめた。
「何でそんなこと分かったんですか?」
今度は驚きが声に出た。近藤は、何か考え込んでいるのかしばし黙っていたが、やがて低い声で、ほとんど呟くように言った。
「ここで話せるようなことじゃない。すぐに外へ戻ってくれ。」
「どうしました?局長。」
「………」
「局長?」
「……見つかったらしい。」
「は?」
「魔虞蛇博士だ。殺されている。」
「えぇっ!?」
「間違いない。あんな特徴的な容貌を持つやつなど、そうそういないだろうからな。」
「それにしても………一体誰に……」
「そうだな。───ま、予想はついているが。」
「それに、奴はどうやって穴の中に入ったんでしょう?」
「俺が一番気にしてるのはそこなんだ。とにかく、トオルくんが戻ってきたらすぐに保護してくれ。そういやもうすぐ出てくるはずだが………」
「まだ足音とかも聞こえませんよ。」
「心配だな。ちょっと連絡してみるか。」
「トオルくん?大丈夫か?」
「……………」
「どうしたんだ。さっきから足音が聞こえないが。」
実を言うと、トオルは死体を見つけた場所からまだ離れていなかった。男を発見した時と同じように、懐中電灯の光をあちこちへ遊ばせていたら、また大変なものを発見してしまったのである。
通せんぼしていた岩壁が、動き始めている───ゆっくりと、上がり始めたのだ。まるでシャッターのように。
ただしシャッターと違うのは、音が全くしないことだった。
逃げなければならない。頭ではそう分かっているのに、動けなかった。
トオルの手から、無線機が落ちた。雑音と共に、通信がぷつりと切れる音がした。
なすすべもなく見守るトオルの目の前で、岩壁のシャッターが開き切った。
「沖田隊長!もうやめて下さい!!」
「うるせェ!早くしねェとマサオが…マサオが……!」
マサオが連れていかれてからずっと、沖田は金属製の扉を拳で叩きまくっていた。いくら真選組一の剣の腕前を謳われていても、素手で鉄の扉をぶち破れるはずはない。しかし手に血がにじんできても、沖田は扉を殴るのをやめなかった。それを他の人々が、目を見開いて見つめている。
「…るせぇな……」
「う…うぅーん……」
部屋の片隅で、うめき声が上がった。半ば目を閉じて泣いていたお妙が、ぱっと顔を上げた。
「し、新ちゃん!?」
「う…姉上?」
「新ちゃん!」
新八たちが意識を取り戻したのだ。お妙はまた泣きながら新八を力いっぱい抱きしめ、新八は声が出せなくてモガモガ言った。
「何だ、ここ?」
銀時が半身を起こして、活気のない目をぱちぱちさせた。
「…もう晩飯アルカ。」
神楽はいまいち目が覚め切っていないらしい。
「旦那、覚えてないんですか?ほら、俺たちバスに追っかけられて、そこにトオルくんのそっくり人間が現れて、みんなやられて…」
「あー、そーいえばそんなこともあったな。で、ここどこ?」
「敵のアジトですよ。」
「捕まったのかよ!どーしてくれんだ、警察のくせによォ、この税金泥棒がァ!!」
「いや、あの展開なら捕まるって予想できるでしょうが、大体警察関係ないし!!」
「こんなとこに誘拐されて閉じ込めるなんて、セクハラアル!もうお嫁に行けないアル!!」
神楽のこの意見は全員に無視された。
「銀さん、山崎さんを責めたって始まらないですよ。」
ようやく姉の腕から解放された新八が、会話に参加してきた。自分の言葉に誰も反応しないので、ふくれっ面をしてそっぽを向いた神楽は、ふと扉の所にうずくまる沖田の姿を見つけた。
「あれ、お前も捕まってたアルカ。そんな所で何してるネ、小便アルカ?」
「神楽ちゃん、やめなよ…」
新八は慌てた。こんな所で神楽と沖田の闘いが勃発したら困る。それは避けたい。
しかし、沖田はまるで反応しない。扉をじっとにらみつけたまま、血の出ている拳をぶるぶる震わせている。そのただならぬ様子に、銀時たちも何かあると感づいたらしい。
「………お前、どうしたんだ?」
「実は……」
山崎が、沖田の様子を伺いながら早口で、事情を説明した。話を聞くにつれて、三人の顔に衝撃の色が浮かんだ。
「そんじゃ、トオルの居場所をマサオから聞き出そうとしてるわけか?」
「まぁ簡単に言えばそういうことになりますけど………実際はそんなに穏やかなもんじゃないでしょうね。」
「サイテーアルナ!」
「マサオくんは目が見えないのに!」
「目が見えないですって?」
突然割り込んできた声に、銀時たちはぎょっとして振り返った。
マサオの母親が、不審そうにこちらを見つめている。
「おばさん!おばさんがニセモノたちに捕まってる間にね、マサオくん、何か事故に遭ったの。それで目が見えなくなって───」
ネネが助け船を出そうとしたが、マサオのママは銀時たちから目を離さない。あんまりじっと見つめるので居心地悪くなってきたその時、マサオの母親が突然叫んだ。
「思い出したわ!」
「…?」
わけが分からず目をぱちくりさせる新八たち。それには構わず、マサオママは続けた。
「あなたたち、さっきからどこかで見たことがあると思ったら………そうよ、マサオの好きな漫画に出てくる人たちと、同じ顔してるじゃない!」
「あ………」
銀時たちは思わず顔を見合わせた。そうだった。マサオは確か、『銀魂』が好きでアニメもよく見ていると言っていた。でも母親が嫌がるので、こっそり見ざるを得なかったとか………。
そうだ。この中にだって、『銀魂』を見ている人がいるかも知れない。そして自分たちの姿をよく知っている人たちだって、何人かいて当然なのだ。今までそれに気づかなかったとは、なんてうかつだったんだろう。
新八が予測した通り、マサオのママの言葉に触発されたのか、人々が一斉にざわめき始めた。
そうだ、確かにあいつらは、あの漫画に出てくる奴らと同じ顔をしてるぞ、あいつなんか本物の銀髪だぜ、いやかつらだろ、でも漫画に出てくる奴がこんな所にいるわけないよなぁ、わけ分かんねぇよ───。
ネネも風間みおりも青ざめた顔で、こちらを見つめている。新八はため息をついた。
「これは銀さん………いっぺん、ちゃんと説明する必要がありそうですよ。」
銀時は、自分たちに刺すような視線を向ける人々をざっと眺め回した。
「───だな。」
銀時の口から、新八のよりももっと重いため息がもれた。
「………そんじゃあんたたちは、本当に『銀魂』っていう漫画の世界から来たっていうのかい?」
みおりが、これで何回目になるか分からない質問を繰り返した。
「本当に?」
「もっぺん同じことを言わせたら───」
銀時は神楽の傘に手を伸ばしながら、大声を出した。いい加減うんざりしていた。
「お前の鼻の穴に突っ込むぞ。この………」
「確認しただけじゃないか。」
みおりは涼しい声でそう言って、大きくあくびした。
みおりはもともとものに動じないタイプらしく、リアクションは拍子抜けするほど薄かったが、他の人々はそうもいかなかった。特に『銀魂』をアニメでよく見ていたり、漫画で読んでいたりしている人たちがそうだ。みんな混乱した顔で、信じられないという顔で、お互いに顔を見合わせている。
当然だろう。銀時たちには彼らの気持ちがよく分かった。わけも分からぬうちにこの映画の世界へと引き込まれてしまった時、全く同じような経験をしたからだ。
ネネは片手を頬に当てて、じっと目をつぶっている。そうやって今聞いた途方もない話を、頭の中で整理しているのかも知れなかった。
「あなたたちが本当に、その………『銀魂』の登場人物だって分かる方法があるとでもいうの?」
マサオの母親が声を張り上げた。
「ないね。」
銀時はあっさり答えた。
「ただ、分かってもらいたいのは、」
マサオママがあからさまに不快そうな表情を浮かべたので、新八は慌てて割り込んだ。
「僕たちが決して、敵じゃないということです。僕は皆さんの味方なんです。」
「何でそんなにはっきり言えるのよ?」
ネネの母親───桜田もえ子が、きつい口調を隠そうともせずに言った。
「まぁ少なくとも同じ敵を持っているのは確かだ。そんで十分じゃねぇか?」
「いいえ!あなたたちは信用ならないわ!!」
突然もえ子が大声を上げた。銀時たちも、春日部の人たちも、みんなびっくりしてもえ子を見つめた。
ネネが叫んだ。
「ママ!何を言ってるの!?」
「ネネ、あなたは黙ってなさい!」
「だって銀八………じゃなくて銀時さんは、最近ずっと幼稚園の園長先生だったし、土方さんはひまわり組の担任だったのよ!ママだって毎朝ネネがバスに乗る時、あいさつしてたじゃない!何でそんなに嫌うの!?」
もえ子はしばらくの間、何も言わなかったが、その目つきは相変わらず険しいままだった。それを見ているうちに、新八の頭に不意にひらめいたものがあった。
「………桜田さん。」
何と呼んだらいいかとしばし迷った後で、新八は言った。
「あなたが僕たちを嫌うのは………あなたが『銀魂』を嫌っているからですか?」
もえ子は一瞬、ぎくりとしたような表情を浮かべて新八を見たが、すぐにまた堅い表情に戻り、うなずいた。
「あなたたちには悪いですけどね。こうなったらはっきり言わせてもらいますわ。───私だけじゃなくて、ほとんどの人たちの中でも、『銀魂』の評判はかなり悪いのよ。」
「どうしてアルカ。」
神楽の言葉だ。
「だって、下品な言葉とか出てくるし。」
「あーなるほど。」
と言いながら、銀時は神楽にちらっと目をやった。
「それにサディストな人もよく出てくるわ。」
「ふーん…」
銀時と神楽は沖田の方を、妙にこっそりと見た。
「斬り合いみたいな残酷なシーンまであるのよ。」
「あるな、確かに。」
「どっちかっていうと殴り合いの方が多いネ。」「いや、あんたら何納得してんですか。」
こんな時でも新八のツッコミは健在だった。
「とにかく、あなたたちが本当に『銀魂』の登場人物なら………なるべく子供たちを関わらせたくないってことは、分かりますよね?」
最後の問いかけは、周りにいる大人たちに向けられたものだった。銀時たちにとっては何ともまずいことに、もえ子と同意見の親御さん方は多いらしい。そうだそうだと賛同する声まで聞こえ始めた。
「私はそうは思いませんね。」
静かな声が割り込んできたのは、その時だった。
「えっ?」
みんなが振り返った先にいたのは、トオルの母親のみね子だった。
みね子は青ざめてはいたが、落ち着いた口調で言葉を続けた。
「この人たちのお話によると、トオルちゃんは私がいない間、色々とこの人たちにお世話になっているようですね。」
新八はやや足をもじもじさせた。どっちかというと世話になっているのは新八たちの方で、トオルが住む所を提供してくれなかったら、文字通り路頭に迷っていたかも知れなかったからだ。
新八がそれを言うと、驚いたことにみね子はにっこり微笑んだ。
「そうですわね。でもトオルちゃんがあなたたちを助ける気になったのは、あなたたちがニセモノからトオルを助けたからじゃありません?」
銀時たちが何も言えないでいるうちに、みね子は淡々と話を続けた。
「それにちゃんと働く所を見つけて、生活費を稼いでくれたそうですね。」
それを聞いた新八は、かなり複雑な気持ちになった。山崎はともかく、沖田が見つけてきた稼ぎ所は『仕事』と言えるかどうか………。
「ネネちゃん、一つ聞いてもいいかしら。」
急に呼びかけられたネネは、あからさまにびくっとしてみね子を見つめた。
「銀時さんと土方さんが先生だった時に、何か嫌なこととかあった?」
ネネはちょっとびっくりしたみたいだったが、すぐにきっぱりと首を振った。銀時は彼女への感謝念がこみ上げてくるのを感じた。
まつざか先生と、(眼鏡をかけ直して服も着替え直した)上尾先生も口を挟んできた。
「確かに言葉づかいが乱暴だったり、少しいい加減なところはありましたけど───あ、すみません、銀時さん───悪い人には見えませんでした。ええ、土方さんだってそうです。」
「土方先生は………一度、いじめをしている子たちを厳しく叱ってくれまして………最終的には『腹切りだ!』とか怒鳴って全員泣かせちゃったんですけど。」
そりゃ泣くだろう。こんな時だというのに、山崎は吹き出しそうになった。幼稚園の先生になってからも、鬼の副長だった頃の習性からは抜けられなかったらしい。
まあそもそも、土方が幼稚園の先生をやるということ自体が常軌を逸しているのだが………。
他にも双葉幼稚園の子供たちはたくさんいたが、皆まつざか先生たちに賛成の意を示した。中にはあんな奴大嫌いだと毒づく意地悪そうな男の子たちもいたけれども、あれはおそらく土方に泣かされた子供たちだろう。
しかし、桜田もえ子はまだ負けていなかった。
「幼稚園でいい人だったとしても、他のことは分からないわ。例えばもし、風間くんが本当はこの人たちに脅かされて住む場所を提供してあげてたんだとしたら、どうするの?」
これにはさすがに銀時たちも怒った。
「ひどいアル!そんなの嘘ネ!!」
神楽の大声に、もえ子は思わずびくっとすくみ上がった。それに追い打ちをかけるように、銀時が言葉を続けた。
「あんたたちが『銀魂』のことをどう思っていようが、そのせいで俺たちのことをどう思っていようが、俺は何とも思わねぇ。───だが、トオルのことは別だ。そんな卑怯なことをした覚えは、金輪際ねぇ。」
低い声だった。神楽のように、怒鳴っているわけでもなかった。───それなのに、銀時の声は、神楽の声よりもずっとすごみがきいて、迫力があった。その場にいる数人が身震いしたのを、新八は見た。
もえ子は言葉を失ったようだった。青ざめた顔で、銀時たち一人一人を見回している。そんな母親の様子を、ネネはじっと見つめていた。
「………あれ?」
張りつめて、重苦しい雰囲気が満ち始めていた部屋の中で突然、間が抜けていると言っていいほど場違いな呟き声がした。
みんなが振り返った先では、いつの間にか扉の前から移動していた沖田が、左側の壁の一点に手を置き、なぞるように指を這わせていた。
「………どうしました、隊長。」
重い空気から逃れたいという気持ちもあって、山崎はすぐさま沖田のもとへ駆け寄った。沖田は眉の間にしわを寄せ、扉と同じ金属質の壁をにらんでいる。
「違う………」
「えっ?」
「音が違う。」
そう呟いて、沖田は自分が見つめている壁の一点を、曖昧に指し示した。
何気なく、沖田が示した場所を軽く叩いてみた山崎は、驚いて息を呑んだ。───沖田の言う通り、叩いた場所から聞こえてきた音は、壁の見た目とは違って金属質ではなかった。むしろ、堅い岩を叩いた時の音に近い。そこから少し離れた所の壁は、ちゃんと金属の音を響かせている。注意深く触れてみると、どうやら感触もわずかに違うようだ。
「どうしたアルカ?」
沈黙に耐えられなくなったらしい神楽が、苛ただしげに問いかけてきた。山崎は振り返った。
「───壁のここの部分だけ、質が違うみたいです。石か何かに塗装して、金属に見せかけてるみたいだ。」
銀時たち三人は一瞬、顔を見合わせたが、すぐに立ち上がって沖田と山崎のいる所へ走り寄った。お妙は少しだけ迷ったような顔をしたが、新八の後ろについてきた。
「本当だ………何だか、感じが違う。」
壁を触り比べながら、新八は呟いた。銀時は普段滅多に見せることのない、真剣に考え込む表情をしている。神楽は傘で壁をあちこちつつき回し、時折傘に隠された豆鉄砲で壁を撃ったりしてみていたが、壁はまるでびくともしなかった。
「ここから………こう、ここまでが、違うのか。」
銀時が、指先で壁を慎重になぞっていきながら言った。それを見ていたお妙が、思わず口が出たというような感じで呟いた。
「長四角………まるで、扉みたいね。」
「え?」
「形が扉みたいだって言ったのよ。ほら、よくあるじゃない、壁に隠された隠し扉。」
銀時たちがこの意見に言葉を返せないうちに、神楽がひゃっと叫んだ。
「どーした神楽、踏まれた猫みたいな声出しやがって。」
「銀ちゃん、見て!」
切迫した神楽の声につられるようにして、銀時たちは言われるままに壁へ目を戻した。───そして、自分たちの見ているものが信じられずに立ち尽くした。
さっき周りと質が違うことを確かめた部分の壁がそっくりそのまま、天井へ吸い込まれていくように上へと上がり始めたのだ。
まるで単純なシャッターが上がっていくかのようだった。呆然とそれを見つめていた新八は、上がっていく部分のすぐ右側の壁に、神楽が豆鉄砲で撃ったらしい跡がついていることに気づいた。近づいてよくよく見ると、撃たれた部分の壁が小さな真四角にきれいに区切れ、しかも少しへこんでいる。
新八ははっと思い当たった。
(……そうか。)
お妙の言った通り、周りと材質の違う部分はやはり壁に隠された扉だったのだ。そしてやはり壁と同じようにカモフラージュされていたスイッチを、神楽がたまたま撃ってしまったのだろう。
そんなことを考えている間にも、扉はゆっくりと上がっていく。
みんな無意識のうちに一歩下がった。特に話し合ったわけではなかったが、中に敵が潜んでいる可能性は充分過ぎるほどにあるからだ。あるいは、もっと恐ろしいものが───。
しかし、扉が開ききった向こう側に見えたものに、新八たちは思わず目を丸くした。
そこには、恐ろしげなものは何もなかった。───ただ、一組の男女が、岩がむき出しの地面に座り込んでいるだけだった。
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