《映画クレヨンしんちゃん&銀魂》大嵐を呼ぶ!踊る暇がありゃ映画を救え!!(16/30)縦書き表示RDF


土方、山崎が登場!でももちろん銀時たちも登場するので、ご安心を(笑)
《映画クレヨンしんちゃん&銀魂》大嵐を呼ぶ!踊る暇がありゃ映画を救え!!
作:虹純晶



その拾六:車を運転する時は乗ってる人のことを一番に考えろ


ようやく敵が来なくなったのを確かめ、土方は刀を見下ろした。べっとりと紫色の液体にまみれている。無意識に顔をしかめて見回すと、周囲の壁や床も同じような有様になっていた。土方は後ろを振り返った。

「平気か?」
「ボー………」


土方にぴったりとついてきている、鼻水を垂らした少年は、曖昧な返事をしてうなずいた。その足元でくんくんと不安げに鼻を鳴らしているのは、小さな白犬だ。奇妙なことに、野原家の愛犬・シロとそっくりな姿をしている。ただし目が空色であることと、首輪をしていないことだけが違っていた。





土方は壁の隙間に監禁されていた者たちを見て、驚愕した。縛り上げられていた鼻水の少年が、本物のボーちゃんなのだと悟ると(ボーちゃんはかなりきつくつねられて、相当痛い思いをした)、銀時たちに知らせるためにすぐ神楽を行かせたのだ。
そしてシロと瓜二つの犬のことを問いつめてみたところ、ボーちゃんはその犬がテルという名前で呼ばれていて、なぜかずっと一緒に閉じこめられていたのだと教えてくれた。
なぜこんな所に二人だけで閉じ込められたのかについては、ボーちゃんは何も知らなかった。分かっているのは、テルという名のその白犬が何とも不思議な力を持っているということだった───それが、いわゆる『テレパシー』だった。
この能力はやたら体力を要するらしく、そう気安くは使えないらしい。あの時土方の頭の中でした声も、まさにテルの仕業だったのだ。ボーちゃんもこの能力のおかげで、比較的テルと親しくなれたのだった。
しかしなぜ閉じ込められたのかについては、テルは決して話したがらず何も答えなかった。


二人がちゃんとついてきていることを確かめると、土方は声には出さず、手を下にぐいと向けてすぐそばにある階段を下りるように伝えた。ボーちゃんとテルもまた何も言わずに、こっくりとうなずいてみせた。
下に下りた途端に敵に囲まれるのではないかと予想していた土方は、何も出てこないので却って気味悪く感じた。今やマンションの中は、土方たち以外誰もいないかのように静まりかえっていた。土方にとってはむしろ、お化け屋敷にいるような不気味な静けさよりも斬り合いの方が歓迎だった。

「………離れるな。」


低く囁くと、刀をきつく握りしめ、土方は二つの小さな影を伴って廊下を歩き始めた。


































「銀さん!大丈夫!?」
トオルが真っ青な顔をして、一番後ろの座席に寝ている銀時を振り返った。
「お前、何回同じ答えを言わせたら気が済むんだ。」
銀時が面倒くさそうに手を振った。
「どの傷もかすっただけだ。目くじら立てるほどのことじゃねーだろ。」
確かに、心配されている当の本人は頭をボリボリ掻きながら、どこかに隠し持っていたらしいジャンプを読んでいる。実際銀時のことをこんなに心配しているのはトオルだけだった。
「風間くん、そんなに心配しなくても大丈夫だよ。」
トオルの隣に座っていたマサオが言い、そしてしんのすけたちに聞こえない程度の声で付け加えた。
「銀さんって、漫画でもすっごくタフなんだ。あれぐらいじゃへたばらないよ。」





銀時、神楽、ボーちゃんを除いた春日部防衛隊、そしてまつざか先生は、今ふたば幼稚園の送迎バスに乗っていた。

銀時と神楽は、このまま戦い続けていてもこちらが不利になるだけだと悟り、逃げる決意を固めた。とはいえ敵がそうあっさり逃がしてくれるはずもない。そこで二人が目をつけたのが、ピンク色で虎猫型の幼稚園バスだった。
しんのすけたちは一度、このバスで逃亡を計ったことがある。だからみんな奇妙な偶然だなと思ったが、実は偶然でも何でもなかった。銀時たちはその逃亡シーンを映画で見て、バスを利用することを思いついたのだ。とにかく、敵の気をそらしながらトオルたちにバスに乗るよう合図するのが大変で、それから自分たちが乗り込むのはさらに大変だった。
しかし乗ってしまえばこっちのものだ。銀時は疲れたと愚痴をこぼしていたので、ハンドルを握ることにしたのは神楽だった。これはどう考えても未成年運転だが、そんなとを気にしている場合ではない。しかし神楽の運転が恐ろしく危なっかしいということは否定できなかった。事実幼稚園を出る際に、子供たちのニセモノのうち何人かが犠牲になったのは確かだった。

しんのすけは持ち前の脳天気さを発揮し、神楽の隣の助手席ではしゃいでいた。一方ネネは勇敢にも(と、トオルとマサオは思った)自分の席でぐっすり眠ってしまっていた。

そんな中でも、一番混乱した様子でいるのがまつざか先生だった。先生は銀時の豹変ぶりや神楽の出現に驚くばかりで、質問することも忘れ、不安げに後ろの方に座って、あっちこっちへ目をやるばかりだった。





「ねっ、だから銀さんのことは心配しなくていいってば。」
マサオがもう一度、励ますように言うと、なぜかトオルは怒ったような口調で言い返した。

「でも、敵が毒を持ってたらどうするんだよ? 」
「へ?」
マサオは完全に面食らった。風間くん、一体どうしちゃったんだろう?

「何でそんなこと言うの?」
「だって………」
だって何なのか、結局聞けずじまいに終わった。トオルが何か言いかけた途端にバスが跳ね上がり、二人とも天井に嫌というほど頭をぶつけてしまったのだ。ほぼ同時に、少し後ろの方で
「きゃっ!」
という叫び声がした。ネネが目を覚ましたらしい。
「神楽、もうちょい身体と心とジャンプに優しい運転をしろ!」
一番後ろで怒った声がした。トオルが振り向いてみると、無防備な体制で寝ていた銀時が下に転がり落ちていた。そして彼の手には、さっきの衝撃でまっぷたつに破いてしまったジャンプが握られていた。
トオルは思わず吹き出した。それで胸を支配していた重苦しい気持ちがやや振り払われた。そうだ、今はそんなことを考えてる場合じゃない。それにしてもこんな時に『あのこと』を思い出してしまうなんて………。


マサオを見ると、なぜかひどくうつろな目つきをしていた。トオルは少し心配になった。さっき頭をぶつけた時、何かあったんだろうか?
「あの、マサオくん………大丈夫?」
「……えっ?何?」
マサオがきょとんとしてこちらを向いた。見ることのできない目は再び正常な感じに戻り、うつろさなどみじんもなくなっていた。
トオルは慌てて、
「ううん、何でもない。」
と答え、窓に顔を向けた。ゴミバケツが一個、大きな音を立ててはね飛ばされるのが見えた。
















「うおっと!」

突然どこからともなく飛んできたゴミバケツを、山崎は間一髪でよけた。それと同時に、ピンク色の大きなものがすごいスピードで走り去っていくのが、隠れていた路地の隙間から見えた。
何だあれは………車?バスか?何であんなに慌てているんだろう。

山崎はため息をついて立ち上がった。なんとか敵をまいてここに隠れたものの、町中ニセモノだらけだし、いつここから出られるかと思うとかなり気が滅入った。副長か沖田隊長に連絡したいところだが、運悪く携帯をコンビニにおいてきてしまったので、彼らに助けを求めるすべもない。そのうち誰かがここにやってきたら………。


山崎の前に突然現れた三人の子供たちは、どうやらニセモノたちのリーダー格らしい、と彼は見ていた。彼らが一斉に迫ってきた時にはもうダメかと思ったが、幸い山崎は腕利きの隠密おんみつでもあった。何とかかんとか逃げ出し、今ここに隠れているというわけである。
しかし、一つの場所にずっと隠れているのはまずい………移動するのなら、辺りに人気のない今がチャンスだ。





山崎が一歩踏み出すか踏み出さないかのうちに、その右肩に後ろから手が置かれた。


山崎は全身の血が流れ去っていくような気がした。振り返るより先に、すぐ後ろで低い声がした。





「…ちょっと聞きたいことがあるんだが、いいかな?」
























イリスは怒り狂っていた。


「あのクソ野郎!こざかしい真似をしやがって………!!」
「ぎゃーぎゃーわめかないでちょうだい、イリス。そんなことをしてもあいつが見つかるわけじゃないのよ。」
「ぎゃーぎゃーなんか言ってねえよ。」
ルビーの冷たい言葉に、イリスがむっとした口調で答えた。
「大体リンドの奴はどこ行ったんだ?いつでもどこでも、ひょいっといなくなりやがって!」


彼らが探しているのは、当然山崎退だった。しかしルビーはともかく、イリスはこういう探索みたいなちまちました作業が好きではない。その上リンドもいつの間にか姿を消してしまい、イリスのイライラは頂点に近づきつつあった。

「リンドのことはほっときなさい。」
ルビーが冷静な口調で言った。
「今の最優先事項は山崎退を始末すること。いいわね?」
イリスはフンと大きく鼻を鳴らした。そんなことは言われなくても分かっているといわんばかりだった。
「それにしても…ただの気弱そうな奴だと思ってたのに、そんなことなかったのね。あたしたちから逃げ出すなんて。」
「一時的にだろ。」
イリスがまた怒りを秘めた口調で言った。
「あいつがたまたま、ちょっと幸運だっただけだ。どうせすぐ捕まるさ。」
「そう…」
ルビーの声は相変わらず無表情だった。イリスはさっきから辺りをしきりに見回していたが、突如何かを見つけたらしく、あっと声を上げた。
「おいっ、あれ…!」
「何?」

イリスの指さす方を向いたルビーが、少しだけ、ほんの少しだけ、目を見開いた。


イリスとルビーが立っている公園の向こう側の路地に、そろそろと消えていく人影があった。山崎ではない。人影は二つあり、 一つは大人、もう一つは子供のものだろう、イリスとルビーぐらいの大きさしかない。
大きい方の人影は、右手に何か長くてぎらぎらするものを持っていた。その後ろにぴったりくっつくようにして、子供が歩いていく。そしてよくよく見れば、子供の足元に小さな犬がいる。真っ白でフワフワの毛を持つ、わたあめみたいな犬だった。

公園の二人の視線は、この白い犬に向けられていた。
イリスが歯の間から、シーッと怒りと嫌悪の吐息を漏らした。
「間違いねぇ、テルだ!あの鼻水のガキまで一緒にいやがる………くそっ、テルの奴助けを求めやがった!!」
「驚きね。昨日あんなに脅しつけてやったのに、まだ抵抗する気力があるなんて。感心しちゃうわ。」
「感心してる場合じゃねぇだろ。早くあいつを捕まえなきゃ、リオル様に叱られちまうぜ。うまく手なづけりゃ、テルは使い勝手があるんだからな。」

ルビーはしばらくの間、路地の中に消えていく影を見つめていたが、やがて小さくため息をついた。





「いいわ…山崎退は後回しにしましょう。」


























送迎バスでの旅の状況は、ちっともましにならなかった。それどころか神楽の運転のし方はますます荒っぽくなる一方で、銀時は少なくともあれから二回、バスの床に倒れ込んだ。


「僕、まだ生きてるのが信じられないよ。」
マサオが血の気の失せた顔でネネに言った。ネネはもうとても眠るどころではなく、トオルに席を替わってもらってからはマサオの腕にしがみつきっぱなしだった。助手席にいるしんのすけも、さすがにはしゃぐ余裕がなくなったのかもう何も言わない。まつざか先生は前の座席の背もたれにしっかりつかまって、振り落とされまいと必死になっていた。
「ったく、いつまでこんなもんに乗ってなきゃいけねーんだ!」
銀時がいまいましげに叫んだ。彼がこの恐怖のバスの旅を続けるよりも、敵との戦いの方がましだと考えていることは火を見るよりも明らかだった。
トオルはといえば、マサオとネネの座っている席の後ろで窓の外を眺めていた。全てが恐ろしい勢いで過ぎ去っていくので逆に酔ってしまいそうだったが、春日部がどんな状況になっているのか見たかったのだ。今のところ、襲ってくる敵の姿は見られなかった。









キキキキキーッ!!!

突然バスが急ブレーキを踏んで止まった。不意打ちを食らった乗客たちは、みんな座席から転がり落ちたり天井や前の座席の背もたれに頭をぶつけたりして、声のない悲鳴を上げた。
「もうたくさんだ!」
床から起き上がった銀時が、カンカンになって叫んだ。しかし神楽は別に、いたずらで急ブレーキを踏んだわけではなかった。ようやく座席に腰を落ち着けたみんなが前方のフロントガラスに目をやると、誰かがバスの真ん前で右手を振っているのが見えた。
よれよれの長いコートを着た、背の高い人物だった。フードをかぶっているので顔は全く見えない。

そしてその隣で、困ったような混乱しているような複雑な表情をしている山崎がいた。





「やあ、どうも。」
フードの人物が近づいてきて、運転席の開いた窓ごしに神楽に話しかけた。さすがの神楽もこれにはどう対処していいのか分からず、ぽかんと口を開けるばかりだった。
「なんか大変なことなっちゃってるみたいだねぇ?悪いけど乗せてくんないかな?」
陽気でハスキーで、フードをかぶった不気味なイメージとはかけ離れた声だった。そのせいか、それとも山崎がいるせいか、みんなが何か言うより早く、しんのすけがドアの開閉ボタンを押してしまっていた。
開いたドアから、コートの人物と山崎が乗り込んできた。山崎は銀時たちがいるのを見て狐につままれたような顔になったが、それは銀時たちの方でも同じだった。ただしコートの人物だけは、フードに隠れた顔をあっちこっちに動かしてきょろきょろ見回していた。





そして突然叫んだので、全員が飛び上がった。

「いた!」

そして神楽たちが何か言う間もなく、コートの人物は大股で歩いていき、後ろから二番目の席のすぐそばに立った。









ちょうど、トオルの座っている席に。



トオルは呆気に取られて目の前の人物を見つめていたが、口が開いていることに気づき、慌てて閉じた。

「久しぶりだねぇ………トオル。」


そう言われてもまだ、トオルはわけの分からないという表情をしている。それに気づいたらしいコートの人物が、軽くため息をついてフードに手をかけた。
「やれやれ…あたしの顔を忘れたのかい、トオル。」

ぱさっと落ちたフードの中から現れたのは、なんと若い女性の顔だった。黒髪に、黒い瞳。白い透き通るような肌。くっきりした端整な目鼻立ち。

すごい美人だ。それなのに、その顔を目にした途端トオルの顔がさっとこわばった。












「うっ………みおり叔母さん……!」





しばし、車内に愕然とした沈黙が満ちた。










「ええぇぇぇーっ!叔母さんん!?」


いやあ、とうとう出しちゃいました、ねつ造キャラ(汗)。風間くんって親戚とかいるのかなあって考えてたら、どうしても作りたくなってしまいまして…(どんな理由だ)。風間くんの顔がこわばった理由は、次回明らかになります。お楽しみに!











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