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金曜日に世界は終わる

 しぜんに鼻歌が出た。気持ちのいい晩だ。ひんやりとした風が木の葉の香りを運んでくる。僕はさっき会社を辞めた。

 会社を辞めるということは別に珍しい事でもない。もちろん理由はあるが、それを言うのはやめておく、理由を整理してみても意味のあることとも感じられないし、別にそのことを誰かに分かってほしい訳でもないからだ。


 ただ、一つ思うに、明日からあの小さなタイル張りの汚くて狭いトイレに行く事も、もうないということが頭に浮かんでくる。中に入ると背中が海老のように折り曲がる狭いトイレ、僕はそこに入るたびに押さえつけられるような感覚を味わったのだ。そして、体を折り曲げた目の前には営業所の月例目標と個々人の週間のノルマが、貼り付けてある。トイレという一人の空間に居てもノルマを忘れさせまいという訳なのである。そして、笑ってしまうことにこのトイレに行くのにさえ、こそこそと急いでいって戻らなければならないのだ。


 僕はここに勤めた長い間、このトイレを数え切れないほど磨いた。就業時間外にトイレ掃除の当番があるのだ。そんな時、僕はこのトイレの便器に奇妙な愛着を感じた。薄汚れ、悪臭を放つ便器を雑巾でぬぐうと、僕はこのトイレが大嫌いだった筈なのに不思議と落ち着いた気持ちになったものだ。僕は誰にもこのことを話した事はない。もしかしたら軽い倒錯かもしれないし、それを話して変に同情なんてされるのも恥ずかしい気がするからだ。


 ***


 僕は三十五を目の前にして、会社をやめる決意をこのトイレの中でした。そして、一ヶ月前のある日、僕は所長の元に向かった。錆びだらけの階段を登り、事務室にいる所長に退職を言い出すためだ。声をかけ事務室に入ると所長は一人でコピーをしていた。所長はつまらなそうに左手を腰にあて壁に寄りかかると、黙々とコピーをしていた。所長は僕が事務室に入ってきたことにすら気が付かなかったのだ。僕は所長の傍らに行き大きな声で「聞いてもらいたいことがあります」と言った。すると、禿げ上がった頭に二重顎、太って突き出た腹、疲れきって隈が出来て充血した小さな所長の目は、ようやく気が僕に付き、いかにも面倒だと表情を浮かべると、あごで早く言えというそぶりを見せた。そのぞんざいな態度に怒りを覚えたが「今月限りで辞めさせてもらいます」と僕は手短に、感情を押し殺すと、なるべく冷静に退職することを伝えた。”辞める”という単語に、所長ははじめて僕を食い入るように見つめて、何を言っているんだと言う表情をした。


 その後、所長は辞めるなと食い下がり、激しい言い合いをすることになった。こうなると予想はついていた。先月も同じようなやり取りをして辞めて行ったのだ。その時に、その人(入社時に僕に仕事を教えてくれた人)が拳で散々所長を殴りつける事件が起こした。よくわからないが給与か保険のことで何か不正なことを会社がしていたようなのだ。結局、それ以上の問題にはならなかったが、そのことで、所長はどうも学んだようだった。しばらく言い合いをするとすると、所長は顔を真っ赤にしてとうとう「ああ、好きにしろ。逃げ出しやがって、お前は無責任で良いよな、ここ辞めたって他にいい仕事なんてあるわけないんだからな」とはき捨てるように言った。僕はこの言葉に怒りがこみ上げた。もちろんそんなこと分かっていると言いたかったが、止めた。そんなこといっても仕方がないからだ。


 ***


 それから一月は瞬く間に過ぎ、ついさっき僕は持ってきたバックに私物を詰めると事務所で退社の手続きをした。所長は僕に殴られるのを恐れたのか、それとも忙しかったのか、現れなかった。僕は下の工場へ行くと、何人かの古株に別れの挨拶をした。会社を出ると僕は振り返ってもう一度社屋を見た。大学を出て今まで勤めてきたその間にあった、色々な思い出がよみがえってきた。良い事もあった。そして、ずいぶん長い間ここに勤めたんだなと思った。


 とにかく長く務めると、いろいろな事がある。そう、そういう事は入り組んでいて、なかなか口では説明出来ることではないのだ。でも、もう限界だったのだそれしか言うことはない。

 僕はそれから駅まで歩いたが、電車には乗らないで、二駅も歩いてその辺りをさまよった。なんだか奇妙な高揚感と開放感に誘われ、僕はふらふらと歩き回った。途中でコンビニにいって、ロング缶のビール(発泡酒でない)を三本買って、すぐに近くの公園で一本呑んだ。すごく美味かった。それから少し酔ってきたので、電車に乗って帰り、商店街のスーパーで普段は絶対に買わない寿司を買って家に帰った。


 家に帰ると僕は寿司を食べ、残りのビールを呑んだ。それからソファーに寝転がり野球中継を見た。僕は野球を見ながら、ごちゃ混ぜになった過去の記憶を取りとめもなく思い出した。会社の仕事の事とか、高校時代の友達のことをわけもなく思い出したのだった。

 そうしているとだんだん酔いがさめてきたので、風呂に入り、僕は一息つくと、布団を出して寝た。だが、しばらく寝付けなかった。布団の中で長い時間起きていたが、やがて疲れから眠りの世界に落ちていった。


 ***


 僕はその夜こんな夢を見た。

 僕はボンネットのバスに乗っている。昔に走っていたイルカのおでこように先の出ているバス、今は走っていない車だ。どこから乗ったという意識はない。気が付くとバスの中にいる。バスはもうかなり走ってきたという感覚がしている。


 バスは時折ブレーキを軋ませ、曲がりくねった山の中の道を走っている。舗装されていない道をゆっくりと進むと、バスの前方にはトンネルが見えてくる。バスはトンネルの手前の停留所に停まり、僕はなぜかそこで降りるのだ。僕はここで、ああこの唐突な展開は夢なんだなと思うのだ。あたりを見回すと郊外の丘陵地帯、里山が広がって、民家がまばらにある。木々は冬枯れている。

「おまえ、ここにどうして来たんだ」

 緑色の服を着た、ごま塩頭のぎょろ目で、痩せた針金のような老人がいきなり話しかけてくる。

 僕は誰に話しかけているんだろうかと、周りを見まわす。でも、僕しか居ない。僕に話しかけているんだろうと自覚した。


 やはり夢だ。こんな感じには覚えがある。意識の残っている夢はこんな感じだ。正気の部分が、不躾な、と感じさせる。

「どうして来たって。私にだって分かりませんよ」

 僕も適当に返す。

 見回すと、少女と、痩せた老人ともう一人の太った老人が、少しはなれたところから、僕の事をじっと見ているのに気がついた。年は十歳になるかならないくらいだろう、おかっぱ頭で、古臭いオーバーオールを着て、汚いスニーカーを履いていた。

 僕はその風変わりな姿と雰囲気にその少女を思わず見つめてしまった。少女は暗闇で見る猫のような大きな瞳を持っていた。僕は少女の濁りのない瞳に無垢さと、野生さを感じると同時にどうしたことか、とても懐かしい印象を感じたのだった。

僕は何かを話しかけようと、思い少女のところへ踏み出すと、唐突に少女は何かを口走り、走りよると僕の手を掴んだ。ものすごく強い力だった。

「何をするんだ」


 僕は驚いて手を振り解こうとして、大声を出すと、少女はすぐさま手を離した。僕は急に手を離されたので、そのまま舗装をしていない砂利道に尻餅をついた。すぐに太った老人が手を貸してくれて、僕を起こしてくれた。僕はズボンについた砂を払った。僕はむっとすると少女をにらみつけた。

 すると「あなたねえ、その子はあなたを助けようとしているのですよ。トンネルの手前にある坂を登ると、病院がありますからね。貴方を連れて行って上げようとその子は思ったのですよ」と痩せた老人が言った。


「そんなどうしてここに来たかも分からんような人を連れて行っても無駄ですよ」と痩せた老人が突き放すように言った。

 僕はこう言われると、なんだか急に心細い感じがしてきた。だんだん夢の中に入り込んできているのかもしれないと強く感じた。

 少女はまた走りよってくると、真剣な表情で、僕の顔を見つめ、手を取るとぐいぐいと引っ張った。

 老人たちの言う病院へ僕を連れて行こうとしているのだろう。

 僕もついて行ったら何があるのか興味を感じ、おとなしくついて行く事にした。トンネルの手前の坂を登り切ると、下見張りの平屋の緑色のペンキを塗った、とても古い造りの診療所があった。


 驚いたことに診療所にはたくさんの患者が列を作っていた。僕はその長い列の最後に並び、長い間診察を待っていた。その間、僕は自分自身どこが悪いのか考えてみた。僕はここ何年も怪我一つしたこともなかったはずだが、どこかが悪いような気がした。僕はあたりを見回しこの医院について聞いてみようと少女を探したが少女は消えていた。


 僕はそれからずいぶん長い間、診察を待っていた。僕の後ろに次々と暗い顔をして何かを思いつめたような老若男女がやってきた。しかし、待てども人々の列は進まず僕は待ちくたびれてしまった。とうとう僕はその列から離れるとトンネルを見下ろせる場所(急に帰り道が心配になり)がないかその辺りを歩いてみた。

 辺りには大人の背丈ほどの笹が密集していた。そして、密集した笹の中に穴倉のような道が出来ているのを見つけた。僕はどうしたわけかそこに入って行った。笹の中は予想よりも深く迷路のようになっていた。僕はやみくもに笹の中を歩いた。進めば進むほど、自分がどこに居るかが判らなくなった。僕は前も後ろもわからなくなり、途方にくれて座り込んでしまった。そこでまるで断ち切られた映像のように夢は終わった。


 ***


 目覚めたのは六時半だった。

 長年の習慣と言う物は意識して変るものではないらしい。僕は立ち上がるとトイレに行き、それから冷蔵庫のスポーツドリンクを飲んだ。

 そして、ソファーの背もたれにスーツが出しっぱなしになっていたのに気がついた。僕はそれをハンガーに架け洋服箪笥にしまうと、もう一度布団に入りとそのまま寝た。


 再び明るさに目が覚めてテレビをつけるとドラマの再放送をやっていた。僕はテレビをつけっぱなしにして、台所に行き、残ったご飯で卵の雑炊を作って食べた。それからインスタントのコーヒーを飲んで、洗濯を始め、干し始める頃には昼を過ぎていた。

 窓を開けると、気持ちのよい風が吹いていた。


 僕はつけっぱなしにしていたテレビを消すと椅子を持ってきて、ベランダから外を眺めた。空は良く晴れていた。日はこちらに直接当っていなかったが、まだ夏の続きという感じで暑かった。僕はビルの間から見える青い空を見ていた。そんなことをしていると、なんだか無性に外に出たくなってきた。僕はチノパンにブルーのシャツを着て、髪を整えると髭をそり、茶色のトートバックを持って外へ出た。部屋に鍵をかけ、階段を早足で降りると、初秋の強い日差しが照りつけてきた。

 僕はなんだか全く知らない世界にいるのだという感覚がした。ずっと働いてきた僕にとって平日の昼下がりは未知の世界だったのだ。いつも深夜に買い物をするコンビニもマンションの前の通りも僕には全く違って見えるのだった。僕は駅前にでも行ってみることにした。


 途中で銀行に立ち寄ると、ATMで生活費を引き出した。貯金は今まで倹約を続けてきたおかげで数ヶ月は持ちそうだった。貯金がなくなっても失業保険がおりるのでとうぶんの間は生きていけそうだった。

 まあ、なんとかなるさと思った。


 駅前に来ると、電車に乗ってハローワークにでも行ってみようかなと考えがよぎった。でも、気持ちが乗らない上になんだかだるかった。僕はバスのロータリーのベンチでバスを何台か見送った後、駅前のマクドナルドに行って昼食にフィレオフィッシュのセットを食べ、オレンジジュースを飲みしばらく時間を潰した。

 もう結構な時間だったので、少し遠回りになるが川沿いの道を歩いて、部屋まで戻る事にした。僕は駅前から鉄道に沿って歩き、小さく暗い電車の鉄橋をくぐり、川の縁に沿って続く道をゆっくりと歩いた。日をさえぎる物はなく赤々と西日が射して暑かった。僕は川風を期待してここを通ったのだが全くの期待はずれだった。


 僕は途中でふと気になって川を取り囲むフェンスにしがみつくと川を覗いてみた。強い西日が川底に向かって射しこみ、濃い日陰と光のコントラストを作り出していた。だいぶ日陰に覆われはじめた川の底はコンクリートで塗り固められ、レジ袋やゴミが散乱し、ほとんど水も流れていなかった。しかし、よく見ると干上がりかけた僅かな一筋の流れが、真ん中の窪んだ所をするすると流れているのが見えた。

 僕はフェンスから降りるとまた歩いた。少し下流に来ると川は暗渠に吸い込まれ、その存在すら抹殺されていた。僕は暑さの中を歩き、汗だくになり疲れたので、暗渠の上の公園でしばらくベンチに座り汗が引くまで休み、また歩き出し、近所の生協へ寄って食料品を買って家に戻った。


 生協を出ると太陽はさらに西に傾き、風が緩やかに頬を撫でていた。マンションの横に来ると、もう長い事空き家になっている屋敷の生垣から、道路のほうにせり出している柿木が目に留まった。柿木は緑とオレンジの絵の具を半分づつ混ぜ合わせた色合いをしていた。あのぐらいは甘みが出来ているんだけど、まだ果肉が硬い。ただ、それは甘柿で、だいたい垣根の柿は渋柿が相場なのだと思った。


 マンションの入り口をくぐるとエレベータに待った。降りてきたエレベータには日能研の鞄を背負った小学生が乗っていた。僕は勢いよく走り出した小学生を避け、エレベータに乗った。自分の階に着き、エレベータから降りると街は夕闇に変わりつつあった。廊下には冷たい風が吹いていた。季節が変わりつつあるのだ。僕はゆっくりと歩いた。

 部屋の前に来るとデッキシューズの下に何かを踏んだ感覚を感じた。僕はさっと足をどけて踏んだ物を見た。それは鍵だった。僕は手を伸ばしそれを拾い上げた。鍵はとても古びた物だった。今の鍵、僕がキーケースの中に持っているような、硬い、磨耗しにくい金属合金ではなく、真鍮だろうか、古い合金で出来ていた。よく見ると鍵には小さな傷がたくさんあり、ずいぶんと長く使い込んだものらしく、鍵の先は角が磨り減っていた。僕はその鍵を持っておこうという気持ちになった。なんだか持っておきたくなったのだ。僕はキーケースを出しその鍵と交換するように、部屋の鍵を出し中に入った。


 部屋の中は少しこもっていたので、窓を開けて空気を入れ替えた。僕は汗を落とすためにシャワーを浴びようと思い服を脱ぐと、携帯電話が無くなっている事に気がついた。いわゆるガラケーのもう長く使っている物だ。僕は玄関やトイレを見てみたが、携帯は見つからなかった。携帯には電話番号やメールのアドレスが入っている。パソコンにもバックアップがあるが、そうしていないデータもある。これから就職活動をするのだから持っていないと不便だ。部屋の中を探し回ったが携帯はみつからなかった。


 僕はもう一度、街に探しにいこうかと思ったが、けっきょくやめた。探したって無駄だろう。もし、駅前のマクドナルドや生協に落としてきたのなら、店の人が連絡してくれるかもしれないし、後でこちらから電話して尋ねてみればいい。また、拾ってくれた人がいて親切な人なら、連絡をくれるかもしれないと思ったのだ。

 それから、だめもとで、試しに自分の携帯に電話をかけてみた。しかし、だれも出なかった。結局、駅前のマクドナルドと生協の電話番号を探し、電話をかけて聞いてもみたが、そういう遺失物はないということだった。まあ、落とした携帯にはたいしたデータも入っていないので、明日ぐらいは待っても問題はないはずだ。それから利用停止にしても遅くはない。僕はいったん諦めることにした。 


 紅茶を煎れるとそれを持って、ベランダに行くと戸を全開にして表へ出た。さっきまで空を見上げると雲があったのに今は一つもなかった。真下の部屋からはブウウーンンと言う室外機の音だけがしていた。僕はいつもとは何かが違う事に気がついていた。僕はそれを懸命に言葉にしようとして、つぶやいた。

「雲が一つもない。いや違う。空気が静かだ。いやそれも違う。蓋がされている感覚がする。空を目に見えない何かが押さえつけている感覚だ」


 もう一度空を眺めた。だが、どんなに見ても空には蓋などなかった。ただ、どうにも異様な感覚を僕は感じていた。僕は動悸とめまいを感じ、部屋に中に戻った。もしかすると病気なのかもしれない。僕は台所に行くとコップに水を入れて飲んだ。それからテレビをつけると、カーペットにごろりと横になった。心臓は早鐘のように打ち、どくどくと血流が駆け巡っている感じがした。僕は動かないほうが良いと感じそこで目を閉じていた。

 しばらく寝ていて、状況が改善しなければ、病院にでも行ったほうがよいと思った。このまま死んでしまったら、とも思ったが、それはそれでどうしようもなかった。人はままならない。生命は大きな秩序や理不尽な力の前にはひと吹きで消えるはかないものなのだ。

 僕はいつしか意識を失った。


 ***


 気が付くと少ししてザーという音が聞こえてきた、テレビが付けっぱなしになっていたのだ。僕は手を伸ばすとノイズしか流れていないテレビのチャンネルをかえた。チャンネルがかわると見た覚えのあるスタジオセットの中で、見慣れたタレントが何かを大仰にわめき散らしていた。そうだ、これは仕事から帰ってきて、寝る前に一息つく深夜のテレビ放送が流れているのだ。そして、反射的にああ、時刻は午前の2時を過ぎたくらいだなと思った。僕はそこで、空腹の感覚に気がついた。そしてゆっくりと立ちあがると台所に行き、ハーゲンダッツの小さなカップのアイスクリームを持ってきて食べた。僕はなんだかほっとするとアイスクリームを全部食べ、もう一度歯を磨いた。もう、めまいも動悸も全く感じられなかった。


 僕はいつもと同じ時間にテレビを消して、布団を出すと横になった。もう十分寝ていたが、起きているにもしたい事がなかった。

 しばらくしてまどろみはじめると電話のベルが鳴った。「プルル プルル プルル」と電子音が鳴っていた。こんな夜更けに誰だろう。もしかしたら僕の携帯かもしれない。誰かが拾って電話をくれたのかもしれないと思った。

 僕はぼんやりしながら、立ち上がると電話を取る。


「もしもし」

「・・・・・」

「もしもし」

「・・・・・」

 

 何も言わない。無言電話のようだった。間違い電話だろう。いい迷惑だが、こういう事は時々あるのだ。僕は受話器を置こうとした。

「た、・・・さが、さんですか?」

 僕は少し驚いた。少し聞き取りにくいが、僕の名前を言っているようだ。若く高い特徴のある声が聞こえる。女性であるように感じた。

「そうですけど、もしもし」と僕は言った。

「うん・・か」

 そして、電話は切れた。


 僕は何だか良くわからないまま、しばらく電話を待ってみた。携帯からかけて来ていると電波の状況でこういう事は良くある。でも、電話はそれっきりかかってこなかった。僕は電話を待つのをやめ寝床に戻ると再び横になった。


 ***


 いつもの時間に目が覚めた。少し肌寒く、空気の湿り気を感じた。案の定、しとしとと本降りの雨が降っていた。

 僕は立ち上がるとトイレに行って、洗面台で顔を洗い、歯を磨き、戸棚から電気剃刀を出して髭をそった。それからテレビをつけて、目玉焼きを作り、トースターに食パンをセットしてコーヒーを煎れて、食事をした。僕はコーヒーを飲みながら、テレビを眺めながら、おとといからの事を考えてみた。


 僕の新しい生活、今のところ予定のない生活、拾った鍵、落とした携帯電話。突然感じた重苦しさと胸の動悸とめまい。僕は出来るだけ、主観をはさまないように、一つ一つ空間の中にそれらの事実を置くように考えてみた。

 予定について。さしあたって予定は作っていかなければならない。いつまでも無職という訳にも行かない。そのうちハローワークや求人誌、求人サイト辺りを調べてなければ。仕事関係の知り合いをたずねてみることも必要だろう。


 携帯電話について。知り合いや求職のことを考えるといつまでもそのままにしておく事は出来ない。仕方がないが、後で店にでも行って新しい物を買うしかないようだ。

 めまいと動悸について。それにしてもあの息苦しさは何だろうか。心臓や脳の血管に関係する物だろうか、それとも何か心理的なものなのか僕にはわからない。僕は自分の胸の辺りを触りながら考えてみた。年齢的に考えてみても、そう深刻な物ではないような感じがした。もう少し、様子を見て、例えば、外を歩いたりすると、息切れがするとか、気持ち悪くなるとしたら、医者に相談しようと思った。


 あの古びた鍵について。あれは面白い鍵だ。思い出したが、僕が学生だったとき、初めて一人暮らしをしたアパートの鍵に良く似ている。僕があの鍵を思わず拾ったのは、今考えるとそれが理由だと思う。


 僕はコーヒーを啜りながら、あの頃のことを思い出し始めた。あのアパートは入り口に大きな柿の木がある古いアパートで、大学の裏門を出て坂を下る途中にあった。大学の周りによくあった古いつくりのアパートで学生を当てにしたごくありふれた二階建てのアパートだった。僕が高校を出て初めて一人暮らしをはじめたアパートだった。

 僕は講義から帰ってくると、裸電球の吊ってある薄暗いコンクリート敷きの中廊下を歩き、ベニヤで出来たニス塗りのドアを古臭い真鍮の鍵で開ける。その時、ギギギーッというなんとも乾いた音がしてドアが開く。あの音は十幾年が過ぎたいまでもはっきりと耳に残っている。そんなことを毎日、繰り返していた。


 初めて付き合った女の子とすごしたのもあの部屋だった。学部の二年のときバイト先で知り合って、それから、2ヶ月ぐらいあのアパートで同棲みたいなこともした、初めてあの子と寝たのもあの部屋だった。あの鍵はどうしたのだろうか。けっきょく、三年生になるとき引っ越して、その時に返してしまったのだ。それから半年もたたないうちに火事があって、アパートは燃えてしまったのだった。僕はゼミの仲間からそれを聞き大学の帰りにあのアパートを見に行った。アパートはちょうど取り壊しの最中だった。僕は目の前で、重機によってあっという間に壊されていくアパートを見ていた。そして、二、三日して、またそこに行ってみると整地がされ、柿の木も切り倒され、切り株も持ち去られていた。僕は空き地の前に立ち尽くして、ここであった事が全て幻であったように感じた事を覚えている。そこには今、真新しい学生寮が建っている。


 僕は立ち上がって窓の近くへ行くと外を見た。雨は本降りだった。僕はベランダに出て、遠くを見た。雨の音がはっきりと聞こえ、遠くは煙ってはっきりと見えなかった。空を見上げると雲はそんなに厚くなく、薄日が差してきそうなぐらいに明るかった。時折、小さな雲が風に運ばれて、舞い落ちる木の葉のように面白い動きをして視界から消えた。

 僕は昼食をとると、傘を差すと携帯電話を見に行く事に決めた。ジーンズに履き替え、デッキシューズを履いた。僕は戸締りを確認して、部屋に鍵をかけようとした。するとどうしたことだろう、昨日拾った筈の鍵はどこにも見当たらなかった。あの真鍮の、先の磨耗した古臭い鍵は僕の財布の中には見当たらなかった。僕はキーケースを開いて何度も見てみたが、それは見たらなかった。僕はなんとも腑に落ちなかったが、帰ったら探す事にして、真新しい、硬い合金で出来た鍵を取り出し、鍵をかけた。


 僕はエレベーターで一階に降りると、傘を差してゆっくりと歩き出した。雨の日の臭いがしていた。僕はかつて雨の日が好きだった。幼い頃、僕は雨の日が世界を別の物に変えてしまう事に気がついていた。雨にもいろいろあるが、やさしい雨の感覚、植物が喜び、ゆっくりとした時間が流れているあの感覚だ。あの感覚はどう言い表した物だろう。そう、歳を経るごとにあの感覚が鈍磨して行った事は確かなのだ。その内に大学生になると雨を感じなくなり、働き始めると、雨はとうとう鬱陶しいものにしか感じられなくなってしまったのだ。だが、今は少しだけ昔の感覚が自分の中に戻ってきているのを感じた。


 僕は子供のころのように側溝に寄っていくと、流れ去っていく雨水を見てみた。小さな泡の浮いた水はかなり早い流れになって、下水の中に消えていっていた。僕は歩き、また、暗渠の上にある公園にやってきた。

 僕は暗渠の入り口に立って川を見た。水すらほとんどなかった枯れ川は水を満たし、所々で渦巻きを作り勢いよく流れていた。川の両岸といってもコンクリートの壁でしかないが、そこの穴から、どんどんと濁った灰色の水が吐き出されていた。発泡スチロール、レジ袋、落ち葉、軟式ボール、腐ったオレンジ、吸殻、よく見れば鼠の死骸が水の流れに乗って真っ暗な暗渠の中に吸い込まれて行った。川からはとても嫌な臭いがしていた。僕は傘を差しそれを見ていた。


 ***


 駅前の携帯電話の売り場にやってきた、僕はスマートフォンなどを手にとって一つ一つじっくりと見て廻る。たくさんの商品がならんでいる。いろいろと見たがよくわからなかった。別に無理して今日買うものでもない何せ時間だけはあるのだ。僕は納得して買いたいと思ったので、今日のところはパンフレットを貰って帰る事にした。

 雨は変らずに降っていた。


 シトシトと道を、屋根を、車を叩き続けていた。僕はもと来た道を引き返した。バスのロータリーを抜け私鉄に沿って行き、橋を渡って、鉄道の下をくぐり、塗りつぶされた川の上を歩いた。自分のマンションの前に来ると、乾いた硬質の高い声で呼び止められた。

「Tさんですよね」

「あっ、はい」

 振り返ると、黒い髪の女性が立っていた。背が高く、細面の顔、黒く長い髪、それに黒目がまるでマンホールを開けて下を覗き込んだような、光の写し返しのない目をしていた。

「携帯電話拾ったんですけど、あなたのものではないですか」


 彼女は左手で携帯電話を僕に見せた。

 それは間違いなく僕の携帯電話だった。

「あっ、そうです。僕の携帯電話ですよ」

「昨日この階のエレベータ前の側溝に落ちていたんですよ」

「ああ、そうでしたか。届けてくださって、本当に助かりました、どうもありがとうございます」

「いえ、それでは」


 女性は携帯電話を僕に渡すとこの場を去ろうとした。

「すいません。あの、昨日の夜電話してくれたのはあなたですか」

 昨日かかってきた電話は彼女のかけた電話か僕は気になったのだ。どうも声の感じが似ている。

「ああ、そうです。一応確認でかけたんですよ。目を覚ましてしまいましたか」

「いえ」

「そう、ならよかった」


 そして、彼女は笑った。すべすべとした石ころのような顔に記号のような笑いを浮かんでいた。僕は思わずこの笑いにぞっとした。

 彼女は僕の部屋から左に三つ目に住んでいる。と思う女性だった。彼女が何をしているのか僕は全く知らない。残業をして、夜遅くに帰ってくると、時々、コンビニの袋を持ってエレベータに乗り合わせる事があった。けれども、僕は彼女の顔を正しく、いや、正確に見た事はなかった。


 僕はジーンズの携帯電話をポケットにしまうと。鍵を取り出そうと、キーケースを開けた。だが僕の部屋の鍵は見当たらなかった。キーケースを探ると、また、あの古い鍵が見つかった。キーがたくさん付いていると時々こういうことがある。今は部屋の鍵のほうが気にかかっていたので、キーケースを全開にすると探した。すると部屋の鍵はすぐに見つかった。財布の奥のほうに入っていたのを見落としていただけだったのだ。僕は鍵を開け部屋に入った。

 靴を脱ぎ部屋に上がる。


 部屋の空気がいつもと違った。僕はもしかしたら違う隣の部屋に入ってしまったのかもしれないと思った。マンションはほとんど同じ部屋の間取りだ。だから私物以外では見分けが付かない。僕は確認するように周りを見た。

 僕の周りは出かける前と何一つ変わる事はなかった。違う部屋と感じたのは錯覚だったのだ。僕は気を吐くと冷蔵庫から、ウーロン茶を出してソファーに座り、飲んだ。


 するとどうした事だろう目の前に白と黒の柄の太った猫が居た。僕は目を瞬き見つめてみた。そして、どこかから猫が入ったのだろうと思った。僕はソファーから立ち上がると部屋を見渡した。しかし、開いた戸はなかった。もしかしたら、さっき部屋の入ったとき、一緒に入ったのかもしれない。僕はこう考えながら猫を見た。猫は長毛系の雑種の猫で、四肢を折りたたんでいたが、立ち上がるとゆっくりとこちらに近づいてきた。そして、僕の前に来ると突然に前足を舐め、大あくびをすると「明日も雨ですね」と言った。


 僕は驚き、これは聞き間違いだと思った。聴覚の異常だろう。幻聴だ。間違いない。だって猫がしゃべったのだから。僕は自分の周りが、ぐにゃりと歪むような気がした。僕はなんだか嫌な、落ち着かない気分になった。昨日のめまいと動悸がこの事態と関係している可能性を感じた。最悪、精神的な疾患や脳の疾患かもしれない。

『とにかくおちつこう』僕は独り言を言った。自分に言い聞かせたかったのだ。僕は冷蔵庫からウーロン茶を出して飲んだ。それから、僕は一刻も早く猫を部屋から出そうと思った。この猫を廊下に出し、その上落ち着いて、物事を整理する。僕はこの猫に触りたくなかったが意を決すると猫に近づいた。猫は前足を上げ、顔を洗い始めた。だが、猫を捕まえようと手を伸ばすと、猫は僕の手を抜け、部屋のテーブルの上に逃げ、僕の股の間を抜けて走り抜けた。猫はすばしっこく部屋を縦横無尽に逃げ回り、僕はこの白黒の猫を部屋から追い出す事は出来なかった。


 やがて追っかけっこを繰り返すうちに、僕は疲れ果ててソファーに座りこんでしまった。猫は僕がとうてい自分を捕まえる事が出来ないのを理解したのか、僕の目の前のテーブルの下に座り込むと後ろ足をあげ腹を舐めていた。僕はどうしたものかなと次の策を思案した。

 そのとき、携帯電話が鳴った。僕は電話を取った。聞き覚えのある声、電話を拾ってくれた女性だった。

「こんにちは、Tさんですね」

「そうですけど、何か」


 僕は猫を横目に見た。猫は前足を揃え、こちらをじっと見ていた。僕は猫に気を取られていた。

「そちらに・・・、猫が居ませんか」

 僕は携帯電話を落としそうになった。

「猫って、どうして」


 この人はなぜ、ここに猫がいる事が分かるんだろう。でまかせを言っているのか。そうか、さっきここに僕と一緒に猫が部屋に入るのを見ていたんだ。こう僕は理解した。そして、この猫はあの女性の飼っている猫なのだろう。

「あっ、ええ、猫、います。どうしてここにいるのか分かりませんがいますよ」と僕は言った。

「そうですか。そうでしょう」

「もしかして、貴方の猫ですか」

「いえ、というか。その子は私自身ですよ」

「はあ、私自身って、いったいなんです」


 僕は話の飛躍に戸惑った。「ワタシジシン」この人はいったい何が言いたいのだろうか?さっき会ったときのあの女性の不可解さと奇妙さを思い出した。もしかしたら狂っているのだろうか。そもそも、一体、何が目的なのだろうか。

「なんですか。あなた一体何なんですか。この猫があなたの猫なら引取りに来てくださいよ」と僕は言った。

 少し間があり、切られたかなと思う。


「いえ、それには及びません。そんなことはどうでも良いですから後ろをご覧になったください」

 僕は後ろを振り返った。そこには女がいた。

 僕は飛びのき、テーブルに足を引っ掛け、ソファーに倒れこんだ。

 僕はソファーに寄りかかりながら女性を見た。女性には表情はなかった。マンホールのような目には愉悦も楽も、怒も、哀も、何もなかった。

 僕はここで初めて口も開けないほどの恐怖を感じた。


 僕は激しく動揺しながらも自分を立て直そうと努力する。僕は物事に筋道をつけて考えようとした。世の中に理由のない事はない。必ず原因があって結果がある。猫もこの女がここにいるのも何か理由があるのだ。

「なぜ、どうして、ここにいるんだ。ここは僕の部屋だ君はどこから入ったんだ」

「あなたは私の世界にいるのよ」

「私の世界?」


「そう、ここは私の世界、貴方は私の世界にいるのよ」

「信じられない。ここは僕の部屋だ。世界がどうとかそんなこと訳が分からない。一体なんなんだ」

 女はうなづくと鍵を見せた。僕が拾ったあの古びた真鍮の鍵だった。

 どきっと心臓が跳ねた。僕の中の常識とか論理とか、もろもろの理性が揺らぐのを感じた。女は僕の目の前に鍵を突き出すと振った、鍵が目の前でゆらゆらと振れた。僕は平静を保てなくなり尻餅をつくように座り込んでしまった。


 混乱と恐怖。


 僕は這うようにして、玄関へと逃れ、玄関を開けると僕は裸足のまま飛び出し、階段を転がりながら降り、マンションの前の車道へでて気が狂ったように走った。

 汗をかいた僕の頬を風が撫でた。しかし、それは何の慰めでもなかった。すぐに運動不足のためか息があがり、わき腹が痛んだ。僕はそれでも走った。僕は僕でなくなる。そんな感じがしたのだ。そのうち、僕はとうとう走れなくなり腰に手を当てながら歩いていた。

 駅前は電車が到着するたびに人で溢れ、ごった返していた。僕の目に映ずる世は何一つ変わりがなかった。


 会社帰りのサラリーマンは鞄を片手に足早に小走り、若い女の子が携帯電話で楽しそうに大声で話をしながら歩き、部活帰りの学生は大きなスポーツバックを肩に下げて仲間と談笑していた。

 思えば今日は金曜日だった。僕の中に曜日の感覚が突然現れた。月曜から始まった一つのサイクルが終わる日、それが金曜日だ。今は僕には関係のないサイクルだった。働くか学ぶかして、週末を迎え、休息や娯楽、思い思いの事で自分を癒し、気分を変え、自分を励まし、また新しいサイクルに向かっていくのだ。


 僕はもうそんなサイクルの中にはいない。いや、僕の現実は目の前で緩やかに、まるで、アイスクリームがどろどろと形を失っていくように変わり始めていた。僕はようやくその事に気がついた。

 僕は渦巻きのようなものに引きずり込まれる感覚と何かが染み入ってくるような不快感を感じた。

「はあっ」


 僕は大きく息を吐いた。

 僕は歩くうちに、気がついた。僕は、僕でなくなっていくのだ。そもそも、それさえも確固とした物はないように感じられた。僕は恐怖に押され当てもなく歩き、歩き続けた。

 鉄道のガードの所にやってくると、僕は幾人かの連中に囲まれていることに気がついた。そいつらは棍棒を持って殴りかかってきた。僕は殴られて気を失った。


 やがて、僕はひんやりとした感覚を感じて気が付いた。幸いにも僕は殺されなかったようだ。でも、殴られたせいか体のあちこちが痛い。

 その直後、僕はぬるっとした感覚で、自分の周りに水が押し寄せている事に気が付き、続いてものすごい悪臭が臭っていることに気が付いた。僕はどうやら枯れ川の底に打ち捨てられたようなのだ。周りには汚水が様々な汚物を含んで押し寄せてきていた。僕は這い上がる場所を求めて歩き回ったが、すべて回りは垂直のコンクリート壁で這い上がれる訳もなかった。僕は垂直のコンクリート壁にへばりつき、無理に這い上がろうとしたが、指がはずれ汚水の中にまるで甲虫のようにひっくりかえった。僕は起き上がると激しい水の流れに逆らいどうにかまた壁にしがみ付いた。そして、どんどん水かさを増し激しくなる流れに、狂人のような救いの声を上げた。だが、どうしてもそれはまとまりのある声にならず、叫び声にもならなかった。上の方を見ると何人かの通行人が僕のことを見ていた。


 どうしてこうなったのだ。訳がわからない。僕はとうとう自分を支えられなくなり、汚水に押し流された。目の前には真っ暗な暗渠が見えた。僕は手を伸ばし何かにしがみつこうとしたが、流れはものすごい力で僕を流し去った。

 ほんの一瞬『僕は一体何なのだ』とただ激しい感情が複雑に重なり合った感覚だけが僕を捉えていた。そして、光が無くなっていった。


訂正 高校を出て→大学を出て

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