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  逢魔が時 作者:由卯
夕暮れ時、通い慣れたその道で、出会ったものは…
出会い 【1】
 夕暮れ時の公園は、寂しい。
暖かい家へ帰る人の足取りは、心なしか軽く、そして早く感じられ 一層寂しさを増すのだった。
通い慣れているこの道も、今日はよそよそしさを感じる。
いつもならば人や車の往来でこの辺も賑やかだが、冬の訪れと共にまるで皆どこかへ消えてしまったかのように静まりかえっている。

 夏の照りつける陽射しの下で、心地好い木陰を求めていた人々も、秋の訪れと共に次第に少なくなり、 暖かな陽射しを請い求めるのだ。
人というものは、なんて身勝手な生き物なのだろう。
未来永劫、ないものばかりを請い願い続けるのだろうか。

 今年は、秋の訪れが早かった割には、立冬が来ても陽の光は和らぐことを忘れ、容赦なく照りつける。
しかし、 吹きすさぶ風は忘れる事なく、約束した場所にやって来るのだ。

 色づき始めた針葉樹の葉の先に、可愛らしい松かさがところどころ下がり、黒く冷たい土の上にも一つ二つと転がっていた。
その薔薇の花びらにも似た松かさを手にとって、幼い頃母と公園に来ては、ブランコに乗って遊んだことが依子の脳裏に蘇った。
冷たくなった夕暮れの公園で、何をするわけでもなく、ただ夜の帳が迫る空を見つめていた。

 テレビでは、毎日のように子供たちの自殺のニュースが流れている。
幼い頃、

  人は死ぬとどうなるのだろう

と考えると、眠ることすら怖くなったのをふと思い出した。
考えれば考える程、先には何もなかった。
ただ恐怖だけが覆い被さるのだ。
簡単に死というものを選択する子どもたちの根底には、死んでもまたすぐに生き返るという考えがあるという。
自分もそんな楽天的な考えがあったら、悩まずに済んだのにと、苦笑いを浮かべる依子だった。

  逢う魔が時

 ふと、母が以前そんな言葉を言っていたのを思い出した。
夕暮れ時には、魔に出会うと。
幼い頃に聞いたものなので、意味も分からず、夕暮れが近づくとただ怖くて

  早く家に帰らなければ

と、子供心にそう信じて疑わなかった。
多分、 迷信とか言い伝えとかそういった類いの言葉なのだろう。
しかし、依子はこの言葉になぜか惹かれるものを感じていた。
人々の心の奥深いところにある、どろどろとした感情が現実のものに変わる時間だと。
そんなたわいのないことを考えながら、

  このまま行くあてもない何処かへ消えてしまおうか

などと思っている自分に驚く。

  いったいどうしたというのか

 依子は自分の中に、何かが芽生えるのを感じるのだった。

出会い【2】へ 続く


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