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笑顔が愛おしくて ~ベトナム恋愛奮闘記~ 作者:KON
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どっもありがとっ!!

「ミスターゴトウ!」


.....ん!!?



「ミスターゴトウ!!」

そこには、驚く光景があった。
工場のエンジニアやワーカー達が、大勢・・・

いま僕の目の前、そこにいたからだ!

まるで、僕を待ちぶせして驚かすように・・・
ともに、このホーチミンで働いた工場の現地スタッフ達の面々の
見慣れた顔達が僕を待っていた。

それに女性陣は、みんな民族衣装アオザイを着て、
この空港前の奇妙な光景に花を咲かせていた。


.....み、みんな!!


.....どうして!?


.....Tonトン、今日は2シフトで工場にいなきゃ・・

「ボス(工場長)、オッケーネ。」



.....Tuトゥ、友達と出かけてるんじゃ・・

「ミスターゴトウ、ココニイル、ミンナガ、オトモダチ、デスネ!」



.....Sonソン、飛行機の時間なんか教えなかったのに?

「ミンナ、シッテタネ!」



.....Hungハン、なんで?、、、時間?

「ヒコウキ、、 テハイシタ、Tamタムデスヨ!!」


僕は、来てくれたワーカー、エンジニアたちの一人ひとりの名前と顔を刻むように言葉をかけた。


.....Tam.....タムさん、なんでアオザイ!!?

「イケナイデスカ?」


.....いや、いけなくないけど、アオザイを着るのはなんか特別な行事でもなきゃ。

「トクベツデスネ、ワタシタチニハ、キョウ、イマノジカン、トクベツデスネ。」

タムさんの言葉に、僕は言葉を詰まらせた。


.....ありがとう。
僕は囁くような小さな声でつぶやいた。


「ミスターゴトウ。」
と、タムさんが霞んだ声で僕の名を呼ぶと、、

......ん?
手に持っていた一冊のノートを僕に差し出して・・・

「コレハ・・ニホン、ツイテ・・・ミテクダサイ。」
それは、タムさんとずっと続けていた僕の語学力アップのための交換日記だった。

.....もう、これ返せないね・・・・交換できないね、タムさん。

「・・・・・・・・サビシイデス。」


.....てがみ、てがみ出すね。

「Vang.」

そして、エンジニアのTonがタムさんに何か小さな包みを囁きながら渡すと、
タムさんのほうから、その包みを僕に差し出して・・・

「コレハ、ミンナカラデスネ。」

僕は、名刺ほどの小さな包みなるものを貰った。


......タムさん、開けていい?


「ハイ。」
タムさんは、首を縦に振った。


その包みを開けると小さなお坊さんが笑顔で現れた。
ヒスイで形取られたお坊さんのお守りだった。

やさしい笑顔をしたお守りだった。


.....Toi nhan cai nay co duoc khong?(貰っていいの?)


「ミンナデ、ヒトツノモノ・・カイマシタネ。」


「ワタシタチ・・カオガ、ソコニアリマスネ。」


「ミンナノ、エガオ・・アリマス。」


「ソレヲミタラ、オモイダシマス。」


「ココノケシキ、ベトナムノマチ、ホーチミン、サイゴン・・・ワタシタチ。」

タムさんが急に言葉を詰まらせて僕に寄り添った。

.....タム、タムさん。
僕はタムさんの耳元で、そっとお礼を言った。

.....Cam on nhe.

そして、そこにはこのお守りのような笑顔があった。
このお守りのお坊さんのようなやさしい笑顔があった。

けっしてお金じゃ買えない愛おしい笑顔を貰った気がした。

そのお守りを握りしめると、いままで耐えていた涙が・・
ここに来て自然とあふれ出した。
恥ずかしいくらいにあふれ出した。

こんな恥ずかしい顔を見せたくなくて、
一人で帰国したかったのに・・・

「ミスターゴトウ!」
ワーカーのTuトゥが、急に驚かすことを言った。

「ソノ、スーツケース、ヨゴス、、イイデスカ?」


.....え?!?!、な、何?!?!?タイサオ!??

そういうと、油性のマジックを取り出して僕のスーツケースに!!

‘ Chung ta se gap lai!  Tu ’

と、書いて僕にこう言いかけた。
「マタ、アイマショウ、キット・・」

そして、Tuトゥに続けとばかりに、
みんなが僕のスーツケースに寄せ書きをし始めた。

僕のスーツケースはあっという間に、
目に自然と馴染んだベトナム語で引き詰められた。


そこ(スーツケース)には・・

Mong co ngay gap lai anh.(また会いましょう。)

Hay co len. (頑張ってください。)

Dung quen viet thu cho chung toi day nhe. (手紙書いてくださいね。)

Chung toi se nho anh lam day. (寂しいです。)

・・・・・、、


....こんなにスーツケースを汚されたら、使えないなぁ。
と僕が言うと、ワーカーのTuトゥが、
「ダイジニ、カザル、イイデス、イイデスネ。」

そして、エンジニアのTonトンが、
「フォト、フォト、トリマショウ、、、、、ネッ。」


Tonトンがタムさんを僕にくっつけて冷やかしながら、
僕とツーショットの写真を撮ると、
ワーカーやエンジニア達も、それぞれ僕とのツーショット写真を撮らされた。


もう、行かなきゃ・・
僕は静かに言葉を開いた。


Cam on ong nhieu lam......(本当にありがとう..)



そして僕は最後に、
思いっきりこのサイゴンの空気を吸い込んで深呼吸をした。

ここの風景を、みんなの顔を目に焼き付けた。
またこの場所に来ることがあっても、
みんなと過ごしたあの頃には戻れないからだ。

ここが、記憶の中で遠い街となる前に、
いつまでも彼らの顔を見ながら、そのまま空港内へ入った。


そのとき端の方で・・
空港の窓ガラス越しに工場長や課長、寮のみんなの姿も見えた。
みんな、見送りに来てくれていた。

僕は、頭を深々下げて、今までお世話になった感謝の気持ちを込めた。

みんなに支えられてのベトナムのサイゴンでの日々だった。
長く、短い滞在の日々だった。



搭乗の際、つい手元から落としたノート(交換日記)の見開きに、
大きく日本語で書かれた文字が見に入った。



どっも、ありがとっ!!



そこには・・日頃、僕が喋って聞き取った日本語、、、
そのままの言語で書き込まれていた。



「Is this you?」

それ(ノート)を拾ってくれたベトナムのスチュワーデスに僕は笑顔でこう答えた。


......Xin cam on !


そして、



機内・・・・



出発前の寮で、課長がトゥイから預かって機内で開けてと渡されたプレゼントを取り出した。

紙袋から包装された紙をきれいに開けると、
そこにはステンレス製のランチボックス・・

そして、

その中には、ご飯にライスペーパーを海苔のように巻いて作ったおにぎりが2つ入っていた。
おにぎりのてっぺんにはエビがのっていて、
半分に割ると、僕が大好きだったヌクマム(魚醤)で煮込んでいる豚の角煮が入っていた。

僕は一人、心の中でつぶやいた。



.....トゥイ、これは卑怯だよ、ずるいよ、
最後に、こんなおにぎり、、、こんなプレゼント、、ないよ、ずるいや。



.....一人で食べてもちっともおいしくない、
一緒に、一緒に、、、、、

.....トゥイと一緒に食べたかった。

こんなに、君が遠すぎると感じるお弁当を食べたって・・・
おいしいわけないじゃないか、トゥイのバカ・・・・


この日、この時
機内で一人、こんなに目を赤く腫らして食べたおにぎりを・・・

僕は、一生忘れることはないだろう。



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