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笑顔が愛おしくて ~ベトナム恋愛奮闘記~ 作者:KON
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ドシテ。

どれだけ探し回っただろう…


いま僕は、この暮れてくサイゴンの街並みの中、
タクシーで空港そばの寮に向かっている。

数時間前―
サイゴン川の渡し船を降り、
川沿いで待たせたタンが運転する車でチョロンへと向かった。
タンは、僕の勤める会社の運転手。

.....いま、会いに行くよ.....

あの時・・ぽつりと渡し船の上でこぼした。


「Anh noi sao?」(なんか言いました?)
運転手のタンが言った。

知らぬ間、車の中でも声に出していた。
…そ、すごく会いたい!
チョロンの見慣れた大きな樹木を通り抜け、
ぼくは、アンドンマーケット近くの路地でタンの車から降りた。


.....もう、ここまででいいよ。
シン、カム、オン.......タン。


「Cho・・mua sam?...Toi se doi...ダイジョウブネ、ジカンアリマス、
マーケット・・カイモノ・・・ココデマッテイルネ。」

.....気持ちうれしい、でも、、、、、


「デモ、ナンデスカ?」

....でも、...大事な、




.....大事な買い物なんだ。




「ダイジ・・・」

.....そう、だから、僕ひとりで持って帰りたい。



「・・・・・・・・!?」

その時タンが分かったようにうなずいた。


僕はタンに少しのマネーを手渡した。
タンは、少し驚いた様子だった。


.....工場長やみんなには内緒だよ。
何か娘さんに買ってあげて、、、ね。


「Mr.Gotou・・Chung ta co the gap lai khong?」(また、会えますか?)

.....うん!!



.....タン.....ありがとう........シン・カム・オン!

タンが僕に深々頭を下げるとそのまま車に戻った。



ここからトゥイの家までは、歩いても数分ぐらいの所だ。
僕は、無心でトゥイのところへ走った。


しかし、



しかし、家にトゥイの姿が見えないどころが
家族みんなの姿がなかった。
トゥイの実家の小さな食堂が閉められていたからだ。
そのとき、呆然と立ち尽くしている僕の姿を見て、
路地でカード遊びをしていた兄ちゃんが親戚の結婚式で留守だと声をかけてくれた。


僕は、再びタクシーを使ってチョロンを走り回っていた。
式場が催されているというホテルを回った。


会いたいときに会えない。


伝えたいときに伝えられない。



やがて暮れてくサイゴンの街並みの中、
結局タクシーで空港近くの寮へ引き返した。

そして今、
僕は、ホンハーへ向かうタクシーの中。

大きな落胆を土産に。

空港前のホン・ハーストリート前でタクシーを降り、
ここから少し歩いて寮へと戻った。



なじみ通った道。


こじんまりした食堂・・


並ぶ理髪店・・


小さな雑貨屋・・


ビリヤード場・・




ん?




寮のそばに見慣れたカブが止まっていた。



あれは・・



すると寮からアオザイをまとった一人の女性が出てきた。
しばらく・・呆気にとられた。



.......トゥイ?


そう、そこにトゥイがいたのだ。




「・・・ミスターゴトウ!?」

しばらく・・そこから動けなかった。



そして、言葉に出ない喜びがあった。

良かった・・・あえて良かった。
僕は心のなかで何回も言葉にした。



「チャオ・・・」
恥ずかしそうにトゥイが挨拶した。


.....なんで、、


タクシーの中で繰り返していた言葉を口走っていた。
トゥイは少しキョトンとした様子で、、、。


.....ずっと探し回ってたんだよ。式場にも、、、、、
僕は言った。


「オナジ、トゥイモ、、、、サガシマシタネ。」
それは以前、チョロンの覚林寺(ヤック・ラム寺)で、
願いを込めて飛ばした鳥が、今そこに舞い降りたったようだった。

ずっと探し回っていた青い鳥のよう・・・
幸せを呼ぶ青い鳥を探して旅に出た兄弟が、多くの人に出会って・・・
最後に戻ってきた家に探してた鳥がいたかのように・・・
僕は、喜びと驚きを隠せなかった。


本当の幸せって身近にあるのに気づかない。
それをかみしめるように・・

まさに探していた青い鳥が、
僕にとってトゥイそのものなのだ。


.....トゥイ。



......話さなきゃいけないことがある。
僕は静かな口調で言った。



トゥイは分かっているように穏やかな笑みをこぼした。

そして・・トゥイが、
バイクのカゴに積んであった花束をそっと僕の方に差し伸べた。


「・・・キョウ、ケッコンシキ・・アリマシタネ。」


「フタリノ、アタラシイ・・タビダチ・・ウラヤマシカッタデス。」

......トゥイ。


「ミスターゴトウモ・・タビダチ・・デスネ。」

.............!!?
トゥイは僕が日本へ帰国することを知っていた。


「デモ、トゥイ・・・コノ、タビタチハ、ウラヤマシクナイデス。」

......ごめん。


「アヤマル・・オカシイデス。」

......でも.....ずっと黙ってた........言えなかった。


.....日本へ帰ること。
そう・・トゥイにだけ直接に言えなかった。

「シッテタネ、デモ、、、、モット、ムネガクルシイコト、シリマシタネ、・・」

.....トゥイ。


「ドシテ、、、、、ドシテ、、!!??」

課長が僕のことをすべてトゥイに話したことは、課長から聞いていた。
もちろん、日本へ帰ること、、、、、そして、日本に彼女がいたことも・・
トゥイへの思いが強くて苦しんでいることも・・・


「スキ‥ナッタ、イケナイコト、ダッタデスカ?」 
トゥイが言った。

.....え?


「ネムレナイデス、タベレナイデス、クルシイデス、、、ドシテ、ドシテ。」

.....トゥイ。


「ナンデ・・スキニナル・・オモイ、キモチ・・ドシテ、トマラナイ?」

しばらく僕は、何も言えなかった。
僕が、トゥイに言わなきゃいけないことをトゥイに言わせたからだ。


そして・・・
僕は腕にしていた時計をそっとトゥイの細い腕に通した。
それはベトナムに来る前、日本で買った時計だった。
この時計と友に新しい時を刻もうと買った時計だった。

.....トゥイの腕にはブカブカだけど、まだ新しいだろ?
僕は言った。


「・・・・・・・!!?」
トゥイはきょとんとしていた。


.....そう、あまりはめてないからね。
普段はベトナムで買った時計を使っていたから、
あの時計は、すぐ止まっちゃうし......偽ブランドだし.....安いし。

まるでね、このサイゴンでかっこつけて偽っている
安っぽい自分自身のようにね。



.......でもね、この時計は止まらないよ。
僕がここ(ホーチミン)に来てトゥイと出会い、
そして、これから離れていても二人の時を一緒に刻んで、
.....止まらないんだ。


なんたってソーラーだからね...永遠に時を刻むんだよ。
トゥイも会えないからって家に閉じこもってじゃだめだよ、
ソーラーだってお日様に当てないと止まっちゃうだろ?


「ハイ、ワカリマシタ、コレ、・・・」

.....貰って欲しい。


「デモ・・・トゥイ・・・ナニモワタスモノ、ナイネ・・」

.....ほら、この花束。


「ソレ・・・ケッコンシキデ・・」

.....僕が、一時帰国して帰ってきた際にも、
こうして、花束をくれたよね。


「・・・・・・。」

.....あの時ね、トゥイが待って出迎えてくれた時、
とても、とてもうれしかった。
僕が一番待ち望んでた笑顔があったからね。

「トゥイ、イマ・・エガオ、ジャナイネ。」

.....トゥイにお願いがあるんだ。
ぼくは、トゥイに一つだけお願いをした。


「オネガイ?」

......今、トゥイの運転するバイクの後ろに乗りたい。


......初めてトゥイに会ったときのように。


.....このホーチミンの街を一緒に駆け抜けたい。




......いいかな?




トゥイは首を縦に振って肯いた。


僕は一旦、トゥイを少し待たせ寮に戻った。
出発までの時間をトゥイと一緒にいたいことを
仕事から戻った工場長らに告げ、寮を後にした。

初めて、この寮に来た時、やかましいとさえ思えたバイクのクラクションが、
今は、ごく自然に心地よく感じるこの寮のホンハー通り。


「ミスターゴドウ、シッカリ、、トゥイニ、ツカマッテテクダサイネ。」

.....うん、離さないよ。絶対にね。

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