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笑顔が愛おしくて ~ベトナム恋愛奮闘記~ 作者:KON
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一人じゃなかったこと・・・

ベンタイン市場を後に、
車は市内を抜けタントアン工業地区へのゲートへと近づいた。
僕はこのゲート前で車から降りることにした。
この工業地区へと入るには、料金所のようなゲートを通り
身分証を提示しなければいけないのだ。

.....ラムさんによろしく。
僕は運転手に深々頭を下げた。
そして車が見えなくなるまで見送った後、この先の工場まで歩き出した。
ゲートから僕が働いている工場までは意外に距離がありここを歩くのは初めてである。

おろしたてのベトナムで買ったT-シャツが、
暑いサイゴンの日差しを受けて少し汗で濡れてきたとき・・
一台のバイクが僕を横切ると同時に止まった。


.....ん?


.....タムさん?


「ミスターゴトウ、ナニシテマスカ?」

.....何してるって、、、歩いているんだよ。


「ソ、ダケド・・ココ、アルクヒト、、イナイネ。」

.....タムさんこそ何してる?


「ギンコウ・・オシゴトデスネ・・」

.....そ、銀行か。


「ミスターゴトウ、キョウ、オヤスミ、、チガイマスカ。」

.....そうだよ。


「・・デスネ?」

......来ちゃったよ、タムさんに会いたかったから。


「ウソ・・」

.....うそじゃないよ。


「ミスターゴトウ、オンナノヒトニ、、ミンナ、アマイ・・コトバ、イウネ、、」

.....!!?!?!


「ヤサシイ、、ケド、ヨクナイネ。」

............。
タムさんは、僕のことをよく知っているような口調で言った。



「ミスターゴトウ、ウシロ、ノッテクダサイ。」

.....大丈夫だよ、歩く。


「ダメデス、ウシロノル、、イイネ。」
僕は、タムさんの言われるがまま、
バイクの後ろへと座った。


少し心地よい風と、タムさんのほのかないい香りに包まれた。



しばらくすると工場が・・・

.....ん?

通り過ぎた。


.....タムさん、工場取り過ぎたよ。


「・・・・・・・・・」

......タムさん!!


「スコシ、イショニ、、コノママハシッテイテ、イイデスカ?」

.....えっ?
僕はそれ以上、何も言わなかった。


「ミスターゴトウ!・・・ニホンヘカエル・・タノシミデスカ?」
タムさんは僕が日本へ戻ることを知っているのだ。

......うん、いや、どうだろう?


「アタシ・・サビシイデスネ・・・」

.....うそ?


「ウソ・・ナイデスネ。」

.....ありがとう、そう言ってくれるだけで・・・ほんと、ありがとうだよ。


「デモ、ホント・・・ワタシダケジャナイ・・ミンナ、サビシイ、オモイマスネ。」

......タムさん、ベトナム語で寂しい気持ちをなんて伝えればいい?


「エ?・・・ドウシテ、デスカ?」

.....覚えておきたいんだ。


「オボエテ、ドウシマスカ?」

.......................


.....心に閉まっておく。



「Em yeu Anh.」

.....え?


「ココロ・・ナカ、シマイマシタカ?」

.....い、いま、たしか、、、。


「ワタシ、キモチ、イイマシタネ、、、ココロ、シマッテクダサイ。」

.....タ、タムさん。




しばらく走り続けた後、僕たちは工場へと戻った。
そこへ、ミーティングを終えた工場長が現れた。

「おい、後藤どうした?」

.....え?は・・。


「休みじゃなかったか・・・?」
さっきのタムさんの言葉で動揺していた。

.....そ、そうなんですが、やっぱり、仕事をしていた方が気分が紛れるので、、、、、


「会社へ来たのか。」

.....は、はい。


「おい、タムさん、戻ったそうそう悪いがコーヒーでも入れてやってあげないか!」


「ハイ!(*^.^*)」

......え、あ.....いいです、着替えてからワーカーたちのとこへ行きます。


「そういうな、帰国のことでいろいろ話もしたいし・・」
「帰りのチケットも用意しなきゃ・・・・」
「それに・・必要な荷物を持ち帰るインボイスだって・・・」
工場長は淡々と話しかけてきた。

.....工場長、色々ありがとうございました。


「おい、おい、お別れの挨拶にはまだ早いぞ・・」

.....そ、そうですよね??!?


「それよか、ワーカーのみんな寂しがるなぁ~特にタムさんは・・・後藤のこと慕っていたから・・」
工場長がタムさんの方を見ながら言った。
ぼくは、うつむきかけて目を足下の方に向けた。

「そう・・・もっと、辛く寂しいと思う人がこの(サイゴンにいるんだっけな・・・・」


.....工場長、僕、、、


「おい後藤、、それ以上何も言うなよ!」

.......................。


「帰りたくないとか、聞きたくないからな。」

「いつもの後藤で、残りの日々をここのみんなと接してやってほしい。」


僕は工場長の一つ一つの言葉を聞き取りながら、
この異国の地に来てすごく思ったことを、いま改めて強く感じ始めた。


一人じゃ、何もできなかったこと。

そして、一人じゃなかったこと。


この街、サイゴンとの別れ際になって、
みんなに支えられて滞在生活が送れたことを改めて気付くように・・・

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