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笑顔が愛おしくて ~ベトナム恋愛奮闘記~ 作者:KON
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繰り返してはいけない過ち

ここは、戦争犯罪博物館。

今、僕たちは統一会堂から車で5分とかからない場所・・
そう、戦争犯罪博物館に来ている。
僕は、ここに一度訪れたことがある。
工場長に連れてこられ、初めてここの過去の悲惨な出来事に体を震わせていたものだ。
それは、まだホーチミンがサイゴンと呼ばれていた頃の悲惨な風景がこの場所に展示してあるのだ。

ラムさんが僕らに配ったしおりにも、日本語で、
「ベトナムでの戦争証跡の数々」
と大きく見出しに書かれていた。

「ミナサン、イマ・・ワタシタ、シオリヲ・・ミテクダサイ。」
ラムさんは、この館内へと入る前に僕たちへと話しかけた。

「ソノボウトウニ、コウ、カカレテイマスネ。」
「カコヲ、ミツメカエソウ~ベトナムデノ・・ヒゲキヤ、カズカズノキョウクンヲ~・・」
「ミナサン、ワカリマスカ?、ココデハ、ニホンノテレビデハ、ショウカイサレナイヨウナ
・・ベトナムノ、ヒサンナコウケイヲメニヤキツケルコトニナルデショウ・・
デモ、ケッシテメヲソラサイデ、モウヒトツノ、ベトナムヲフリカエッテモライマス。」

・・・・・・・・・
みんな黙ってラムさんのひとつひとつの言葉を聞いていた。
いや、暑くて言葉が出ないのかもしれない。
なんたって、今の気温は40度超えだ。

「ソシテ・・・・ゴトウサン、・・・・・・」

.....え?


「ツヅキ、ヨンデクダサイ・・」

.....え!!?、、ぼ、ぼく、、あ、そう..
僕は、しおりの書かれている続きを読み出した。

......私たちは過ちを犯してしまった。重大な過ちを。
なぜこの過ちを犯してしまったのかを説明するに
今日、私たちは過去を見つめなおし、歴史を学び、決して恨みを呼び起こしてはならない。
なぜならベトナムの地に再び、あの悲惨な光景が蘇ることのないように.....


「ソウデスネ、・・・トウジノ、アメリカコクボウチョウカンガ、ノベテイマシタデスネ。」
「イマカラ、ミルコウケイニ・・ミナサンハ・・メヲオオイタクナルコトモ・・アルデショウ・・
デモ、ヨクミテオイテクダサイネ・・・ソコニサマザマナ、キョウクンガアリマスカラ・・」

ラムさんは、少し声を震わせながら説明した。

「ソレデハ、カンナイヘハイリマショウ・・・」

.....ラムさん、、、、


「ナ二デスカ?、、、ゴトウサン。」

.....ラムさん、僕...この外のベンチで座っていて待っていてもいい?


「ドウシテデスカ・・?」

.....この目の前にある鉄のかたまり(戦車・戦闘機)だけで、十分だからね。
それに、一度ここへ来ているから、ここで起きた過去をまた蘇させるように見学したくないんだ。
二度と戦争という出来事を繰り返さないのと同じように.....


.....だから、


.....ごめんね。


「ワカリマシタ、ゴトウサン、」

.....ありがとう。


「ゴトウサン、・・・・。」

.....ん?


「サキホド、シオリ、、、、ツヅキヨンデモライマシタデスネ、ソレヲカノジョノコト
オキカエルコト、、、、デキマスカ?」
ラムさんは静かにそう言うと、みんなを館内へと導き出した。

.....ラ、ラムさん!??!

ラムさんの言葉に、
僕は、ここ中庭に無造作に展示されている戦車や戦闘機、ヘリコプターなどと、
同じような鉄の塊と化した。


しばらくすると、ツアーの若い女の子たち、と言っても二人なんだが、
僕の方へと歩いてきた。

.....あれ?......もう、見て回ったの?
と、僕は言った。


「ううん。・・ガイドのラムさんには、申し訳ないんだけど・・・・・」

「・・・私たち、ここはもう、十分かなって?」

「ねっ!」

「そうだね。」


......そうかぁ....

確かに今の若い女性には刺激が強いのかもしれない。
館内には、ナパーム弾、燐光弾や銃器などのほか枯れ葉剤の影響で
奇形に生まれた胎児のホルマリン漬け、ボール爆弾による犠牲者の写真など・・
いや、興味がないと言った方がいいのかもしれないなぁ~
僕は、心の中でそう感じた。

.....そ、そうだ、写真撮ってあげようか?
僕は彼女たちに言った。


「ここではいいです・・遠慮しときます。」

「そうだよね、なんか笑顔で写る気になれないし・・・・」

.....そ、そんなもんかな、じゃ、なんか飲む?


「おごり?」

.....いいよ、特別。


「いただきま~す。」

......それは、遠慮しないんだ?


「え?なんか言いました?」

......い、いや(^_^;)


「後藤さん、次はどこを見て回るんですか?」

.....つぎ?....そうだね、教会と郵便局かな?


「教会と郵便局・・」

そう言って、僕は売店へとコーラを買いに行った。
そしてその後、しばらく僕たちはベトナムのお勧めの店なんかの話で時間を費やした。


.....あ、ラムさん!!?


「モウ、シュウゴウジカンデスネ。」

.....まだ、高橋夫妻が、、あ、、いた、、、、こっち、こっち!!


「お待たせしました、非常に興味深い博物館でしたよ、いろいろと。」
と、高橋夫妻。

「ソレハ、ヨカッタデス、ソレデハ、ツギ、、、イキマショウ。」


サイゴン大教会と中央郵便局

戦争犯罪博物館を後に僕たちはサイゴンの中心的シンボル聖母マリア教会へと向かった。

「戦争の後は教会ですか?」
と、ツアー客の一人、高橋氏が言った。

「ソウデスネ、ミナサマモ・・ソコデ、ヘイワヲオイノリシマショウ・・・」

そこは、僕らが出発したホテルと戦争犯罪博物館のちょうど、真ん中の位置にある。
大樹の並木に囲まれたロータリーを過ぎると、教会の表面、全貌が僕らの目の前に現れた。
赤れんが造りの2つの尖塔が特徴のフランス建築では代表的な建物、サイゴン大教会。
よく、戦争でこれだけの物が失われなかったのか不思議だ。


教会前のロータリー中央で車から降りると、
サイゴン大教会の表面を拝めた。

ソレを見守るように、
このロータリーの中央には大きなマリア像が建っている。

「ゴトウサン、ココヘハ・・ナンドカ、ハイッタ・・アリマスカ?」

.....え?


「カノジョト・・・。」

.....そうだね、でも主にお寺のほうが.........って、何言わせるんすか!!


「なんか・・、相談に乗りますよ・・・」
高橋氏に慰められた。

......あ、は、は。


「ミナサン、ココハ・・ゼッコウノ、サツエイポイントデスネ・・・シャシンヲトリマショウ!」

「賛成!」

「ゴトウサン、コンドハ・・コロバナイデクダサイネ。」

「そうだよ、マリア様が見てるんだから。」

.....ってゆうか.........また僕が撮るんですか?


「じゃ・・・・・だれ?」

.....後藤、撮ります!
みんながマリア像の前で笑っていた。


その笑顔を見て、とても良い表情の写真が撮れそうな気がした。
何よりガイドのラムさんの笑顔がとてもこの風景に調和していたのだ。

「ラムさん、あちらに見える駅のようなコロニアルな建物は?」

「アレガ、ユウビンキョクデスネ・・ツギハ、アソコヘ・・イキマス。」

その建物は、僕らから見てサイゴン大教会を後ろにちょうど、
聖母マリア像から左手に隣接しているのだ。


中央郵便局。

19世紀末のフランス統治時代に建てられ建築文化財としても貴重な建物だ。

「後藤君、切手とか・・はがきなども売ってるんかね?」

.....もちろん、売っていますよ......郵便局だもん。


「ソウデスネ、ゼヒ・・オトモダチヤ、カゾクニ・・オテガミヲ、カイテ・・ダス・・・イイデスネ。」

.....ここで、はがきと切手を買って、後で、ホテルのレセプションに預けて出して貰うといいよ。


「なるほど・・・・」


「サァ、ミナサン!!、
チュウオウユウビンキョクヘイクマエニ、キョウカイノ・・ナカヘト、マイリマショウ・・」

みんなが中央郵便局を横に教会の中へ歩き出した。
するとラムさんが、小さなバッグから一通の手紙を取り出し僕の方へ手渡した。

「ゴトウサンハ、キョウカイノナカデ・・コレ、ヨンデクダサイネ・・」
と静かな声でささやいた。

その手紙の差出人の名を見て、一瞬時が止まった。
それは、ガイドのラムさん宛に届いた日本の彼女からの手紙だった。

そう・・そこには懐かしく、そして目に親しんでいた文字が飛び込んできたからだ。
それは、ラムさんに宛てた日本の彼女からの文面・・・・・・・


Dear Lam...

Thank you for your all kindness for my visiting Vietnam.
Thanks to you, I could really enjoy my trip.

.....本当の感謝の気持ちを書き込みたいので、
ここから母国語(日本語)でお返事書かせていただくことをお許しくださいね。
きっと、Lamさんでしたら理解できると思います。

この度、ベトナム旅行の際にはお世話になり、本当にありがとうございました。
あなたのおかげて楽しい旅行となりました。

ベトナムの街並みの活気とあなたをはじめ、ベトナムの人たちの温かさに触れたことは、
私自身の一生の思い出として
心にいつまでも、いつまでも忘れることはないでしょう。

Lamさん・・・・・
私が本当にベトナム、ホーチミン市へ行った目的、
お分かりですか?

Lamさんなら分かりますよね。

日本で私はどこか仮面をかぶって生活してました。

本当の私を隠して・・
会社の人たちや友達、そして家族に作り笑いをしていたんです。

それは、あの人がベトナムへ行ったときから・・
私の中であの人のことを忘れようとした時期がありました。

なのに、どこかあの人を探している自分がいるんです。

買い物へ行っても、映画を見ても、旅行へ行っても・・
そして・・・会社に行っても・・・

友達と遊んでたって・・・

いるはずもないのにね。

このままだと
きっと、ため息で私の住んでる街が、
いっぱいにあふれちゃうんじゃないかと思うから・・

だから答えを探しにベトナムに行こうと・・
そう、・・気づいたらベトナム旅行を計画してました。

思い切って追いかけてみようと・・・

そして・・・
もし、願いが叶うなら・・あの人と手をつなぎたかった。

昔のように手をつないで
ホーチミン市の街並みを歩きたかった。

単純なことなのにね。

でもね、

それが出来ないくらいに手と手の距離を感じました。
ベトナムと日本より遠い距離を感じました。

勇気を絞ってベトナムへと近づいたのに・・
手をつなぐことの方がこんなに勇気がいるなんてね。

でも、Lamさんが最終日の夜に私たちを家へ招待してくださったとき、

家族のお話や、日本人の旦那のこと、元彼氏のこと・・
いろいろお話ししましたよね。

その時、どこか恥ずかしい自分とさよならできたと思います。

Lamさんから素敵な笑顔をいっぱい貰った気がします。

だから・・・いま、
作り笑いじゃない・・本当の笑いが少しずつ出来るようになってますよ。

ベトナムで本当にLamさんと出会えて良かった。

だから・・重ねてありがとうを言いたいです。

ありがとう。

本当にありがとう。

Sincerely yours,



サイゴン大教会の中、
その手紙を読み終わったあと、・・・・・

しばらく動けない自分がいた。
ラムさんは僕を残し、みんなを中央郵便局へと案内しに向かっていた。

それから、どのくらい時間が経っただろう・・・・
しばらくすると僕の前にはマリア像のようなラムさんのやさしい笑顔があった。

そして、僕の手をつないで・・・

「イキマショウ・・」

教会前にはみんながバスに乗って待っていた。

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