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笑顔が愛おしくて ~ベトナム恋愛奮闘記~ 作者:KON
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サイゴン・サイゴン・バー

あれから一週間・・・・・
仕事以外のことは何も考えないことにしていた。

今日は、日本人スタッフで僕一人が、
深夜9時までの2シフトたちに付き合っている。
ほかの先輩たちは、定時刻の5時で上がっているのだ。

それはあの日、トゥイとのデートの翌日のこと、
工場長に日本へ戻ることを通知されてから、
進んで2シフトたちのメンバーに付き合っていた。

残り一ヶ月・・そう、

僕が、この職場にいられるのは一ヶ月なのだ。
ここの空気に馴染んで・・・2年とちょっと・・

日本へは、一度しか帰っていない。

年に2回は帰る機会はあったのだが・・・・・
何かと理由をつけてホーチミンにとどまっていた。

それほど、この街が好きになったのだ。
ここのワーカーたちが好きになったのだ。

はじめてこの街へ訪れた感情とは明らかに対比していた。


「ミスターゴトウ、ゲンキ・・ナイ・・デスネ。」

インスペクション(品質管理)のワーカーの子が僕に声をかけてきた。

.....そんなことないよ。


「Are you tired? 」(疲れていますか?)

.....そ、そうかな?


声をかけたワーカーの子が僕に一枚のカードを差し出してきた。

ん?・・これは!

結婚式の招待状だ。

.....メアリィ?


「Yes.」

.....相手は、会社の・・Are you a man in a factory?


「No・・No!」

....そう、・・おめでとう!Congratulations !


「アリガトウゴザイマス。」

.....え~と・・・ら、来月!?


「コラレナイデスカ?」


まだ、僕が日本へ戻ることをみんな知らない。


.....ありがとう。

とりあえずカードは頂いておこう。


「ミスターゴトウ!・・・テレフォン!」


そこへ、エンジニアの子が電話のあるデスクから僕を呼んでいた。

工場長?・・・課長かな?


「もしもし・・・・・」

電話の声を聞いて驚いた。

.....部、部長!!?!??


「久しぶりだな・・後藤君・・寮の方へ電話したら、まだ工場の方にいると聞かされてね。」

.....い、いま・・・、どこからですか?


「ホーチミンだよ、、、」

.....ほ、ほーちみん!!


「今日、ダラットから戻ってきたばかりだ。」

.....ダ、ダラット!


「いま、宿泊しているカラベルで、食事を済ませているとこだよ。」

.....カラベルって......カラベルホテルですか?


「そうだが・・・・」

.....最高級ホテルじゃないですか?


驚くことばかりだった・・・・・

でも、うれしかった。
部長がこのホーチミンを離れて、どこか工場全体にぽっかり穴があいたようだったからだ。

それだけ、仕事に対してはみんなから信頼されていた。


「これから会えるか?」

.....少し、遅くなると思うけど、いいですか?


僕は、今夜カラベルのバーで、部長と会う約束をして切った。

「ミスターゴトウ・・ダレカラデスカ?」

エンジニアの子に部長だと話すと目を輝かせていた。


部長がこの職場を離れるとき・・・

最後にワーカーたちみんなを集めて、
部長が知っているすべてのベトナム語でお別れの挨拶したからだ。

その言葉にワーカーやエンジニアのほかに、この僕も言葉を詰まらせて切なかった。


僕は、残りの時間で仕事を片付けて、直・・そのまま工場から市内のカラベルへと向かった。

カラベルホテル・・サイゴン・サイゴン・バー

僕がホテルのバーの中にはいると、
部長が窓のガラス越しのテーブルで、
ビールを飲んでいるのが目に映った。

.....部長・お久しぶりです。


「部長言うな・・もう、部長じゃないんだから・・」

....え?


「会社を辞めたんだ。」

・・・・・・・・!?


「退職金を利用して遊び・・・プライベートでここへ着てんだよ。」

......知らなかった。


「日本へ戻ってからが大変だよ・・・違う職場でふりだしに戻った。」

.....でも、僕にとっては、いつまでも部長だから。


「そうか?・・・・なら、部長でもいいか・・・」

.....でも、びっくりした.....だって、急に電話で...


「後藤君には、もう一度会いたくてね、どうだ彼女とはうまくいっているか?」

................!!?


「ベトナムの方の彼女、トゥイちゃんだっけ。」

.......あ(^_^;)........うん。


「そうか・・・・・トゥイちゃんは元気かな?」

.....いろいろあったけど、元気だよ。


.....部長の方は、


.....会ったんですか?


「わしの、これか?」
部長が、小指をたてて聞いてきた。

......これ、って言うか、、、、、すいません、失礼な質問で。


「いいんだよ・・・・・もちろん、連絡を取って会ってきた。」

............。


「今日、一緒にダラットから帰ってきたんだ・・・・会社の連中には内緒だぞ!」

......二人だけで?


「・・・・・・・。」

部長は外の景色を見ながらうなずいた。


「今度な彼女、店を持つんだよ。わしも、それに協力して少しお金を出した。」

.....部長、いいんですか?、それで?!?


「これ(彼女)の夢だからね。」
部長は淡々と彼女のことを語り始めた。


「・・・ん?」

「そのノートは・・・・」

.....あ、これ総務のタムさんとの交換日記みたいな、、
仕事の帰りだったから持ってきちゃったんだ。


「ちょっと、拝見してもいいかな」

......うん、いいよ。

部長はしばらく・・ノートを見ていた。

僕は、もう一本ビールを追加した。


「・・・・・後藤君は工場を離れるのか?」

....え?


「まるでカウントダウンのように残り何日と書き込んでいるじゃないか・・・・・」

.....うん、実は.....僕もここを離れることに、、


「そうなのか、、、」


.....タムさんは総務だし、このノートの書き込みでも知っていたけど、
そのほかのベトナム人スタッフ、ワーカーやエンジニアたちは知らないんだ。

「つらいな・・・」

..............。


「トゥイちゃんには・・・」

.....まだ、言っていない。


「寂しがるなぁ~」

.....うん。


「タムさんも後藤君のこと・・好きだね。」

............!?


「ここら辺から英語がベトナム語になって、文字が滲んでないか・・・・・・」

....部長.....考えすぎですよ。


「そうかな?」


「タムさんもいい子だよな。」

......うん、初めてここへきたときから何かと世話になっていて、、


「だから?」

.....いい子だよ。.....でも。


「でも?」

......部長.....意地悪ですね。


「そうか?・・若い後藤君がうらやましくてな・・・・」

しばらく、僕たちはカラベルから見下ろすサイゴンの街灯りを眺めていた。


「後藤君・・」

.....ん。


「改めて、このサイゴンの夜に、ホーチミンの夜景と
このカクテルに・・・乾杯しようじゃないか。」

部長が珍しく新たに頼んだカクテルを前にして言った。
そのカクテルは、部長の彼女?が好きなカクテルだった。

そして部長も、このホーチミンが好きなんだなぁ~
と、改めて感じた日でもあった。

「今宵サイゴンの夜に乾杯!」

.....乾杯!

そして僕は、続けて部長にこう聞き出した。

.....部長。

「ん、なんだ?」

.....トゥイにはなんて言おう?

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