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笑顔が愛おしくて ~ベトナム恋愛奮闘記~ 作者:KON
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僕のガイドツアー ~クチ出発編~

「あの~・・・後藤さんですか?」

.....ん?

ここはルネッサンス・リバーサイトホテルのロビーである。
このホテルのロビーには苦い思い出があり、
またここに立っていると・・・

あの日、あの時間が繰り返し繰り返し頭の脳裏をかすめる。

それは、昨日のように・・・

彼女を日本へ帰国するのを見送れなかったこと。

そのやりきれない怒りをどこにぶつければいいか分からなかったこと。

これも、きっと彼女に対しての報いなんだろうか。

課長は、なぜ姪っ子たちの宿泊先ホテルをここにしたのか分からなかったが、
今日はそんな課長の大事なお客さんを、僕がこのベトナム・クチへと案内するのだ。

「後藤さんですよね。」

.......あ、か、、課長の。

僕がロビーに物思いにポツンと棒立ちしていると二人の女性が声をかけてきた。

「こんにちわ。」

.....こ、こんにちわ、よく僕が分かったね。


「そう、このロビーで物思いに突っ立ている人がいたら、声をかけてくださいって言われたから。」

.....か、かちょうに?


「え?、後藤さんじゃなかったかしら、間違えましたか?」

.....は、はい。後藤です。


「私は由利、こっちが成美。」

.....あ、どうも、は、はじめましてです。


「よろしくお願いいたしま~す!」


二人声を合わせ元気に挨拶してくれて、
明るくいい子たちで良かったと、内心ほっとした。
なんたって課長の親族だから、どんな子かと思ったからだ。

僕は、照れながら・・・

.....ザッ、ヴーイ、ドゥォック、ガップ、チー.....トイ、ラー、ゴトウ。


「・・??」

.....はじめまして、後藤です。
って言ったんだ。


「・・・シンチャオです。」

「トイ、クーン、ヴァイであります。」(こちらこそよろしく)

.....え?


「ここに来るまでの間、ちょっとは勉強したんだよ・・・ベトナム語。」

「通じた?」

......うん、驚いた、ただ、何も考えず呆然とベトナムにやってきたのかなと思って。


「ひど~い!!」

「私たちこう見えても、勉学に励む大学生よ。」

.....ごめん。

今からこの子たちにやられているなんて・・・この先・・どうなることやらである。

しかし、
何も考えずにベトナムへとやってきたのは僕の方だ。

以前に、サイゴンのバーのママさんに
「日本人ってどうして語学を学ばないでここ(ベトナム)へくるのかしらね、他の国の方は、結構お話ができるのに・・・」って、言われて恥ずかしい思いをしたことがある。

ほんと、お恥ずかしいのは僕の方なのだ。


「あとね、大学のパソコンを使って少しはネットでベトナムについても勉強したんだから。」

.....そうなの。


「特に“ベトナムのさいごん”って、サイトがおもしろいよ・・・知ってる?」

...................!?
広いロビーに二人の笑いが響き渡る。

.....ところでどちらが課長の!!?


「はい!私、由利が埼玉のおじさんに勧められてきました。」

.....埼玉のおじさん!?

もちろん課長のことである。


「二人とも初海外、初ベトナムです!」

初めての海外旅行にしては何も不安もなく、
初対面の僕に気軽に振る舞う彼女たちは、
いかにも現代っ子だなぁ~と、つくづく感じた。

.....しかし、いいホテルだよね。


「うん、朝食のバイキングも何を取ろうか迷うくらいおいしそうものばかりだしね。」

「部屋も快適そのものよ。」

.....ほんと?..じゃ、部屋見せてよ。


「え??、後藤さんってそういうキャラなの・・!!」

久々に日本の若い女性と話しているせいかテンションがあがっている。


.....と、ところで、、ど~お?ベトナムは?

「一言、暑い!」

「うん、ただ暑い!」

とても熱い二人である。


運転手のハァさんがホテルのロビーの外から
まだかよと言わんばかりに
僕らを覗き込んでいるのが見えた。

.....じゃ、行きますか?


クチ・・ホーチミン市から北西へ約60㎞に位置した
ベトナム解放戦線の歴史的遺跡として有名な場所。

今の彼女たちにとってベトナムといえば、雑貨や料理、エステといったイメージなのかもしれないが、僕にとっては、戦争というイメージがまだ根強く残っている。

クチへと向かうバン(車)の中で・・・・・

「ねぇ~後藤さん、これから向かう〝クチ″について何か説明してよ。」

「私たちのガイドなんでしょ?」

............。

思わず、むクチ(無口)になる後藤君であった。


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