挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
笑顔が愛おしくて ~ベトナム恋愛奮闘記~ 作者:KON
53/73

クチから出任せ

「よく、ここへは来るのか?」

.....うん、そうだね。


「ふ~ん。」
課長は、狭い店内をナメるように見渡し返事をした。

.....一度ね、北沢さんとここへ来てから、なんか、、
気に入っちゃって、一人でもよくこの店へ来るようになったんだ、安いし、寮からも近いしね。


―ここはホン・ハーの寮から歩いて15分ぐらいのとこにある大衆食堂だ。

いや、小衆食堂と言ったほうがいいかもしれない。
なんせ、八畳ぐらいのスペースに長テーブルが2つと、
いくつかの小さな椅子が置いてあるだけの店だ。

店の前には小さな屋台、その隣ではバインセオのいい香りが漂う。

店の気のいいママさんが僕を見つけるなり、
「ガー、ガー?」と言うと、店の中へと誘う。(*ガーとは、鳥のこと)

僕が、ここで鳥の炒め物ばかり頼むものだから、
僕を見るとこう言うのだ。

.....課長、ここの鳥のニンニク炒め、めちゃうまいんだから!


「なんか、調理場にむき出しのトイレが近くにあったけど、衛生面大丈夫か?」

.....大丈夫だって!


「そうか?・・せっかく豪勢な王宮料理のほうをご馳走してやろうと思ったのに・・・」

.....課長、いいからいっぺん食べてみなよ!!がちで小さな大衆食堂の味、侮れないよ。


「そういえば、なんか食欲を誘う香りが漂うな・・」

.....そうでしょ!! 
ベトナム料理はシンプルが一番.....ザッ、ゴン!!なんだからさ!


「rat ngon・・・おいしいってか?」(*ゴンとは、おいしいという意味)

.....ゾッゴンって感じ!


「言うようになったな。」

.....ママ、ビア サイゴン ドー!(サイゴンビールね!)

.....課長は、タイガービールでいい?


「あ、アハハ・・」
課長が笑みを浮かべながらうなずく。

....何が変なことを言いました?


「いや、ただ、後藤もいつの間にここの生活になじんでいるのがおかしくてね。」

..............!?


「コ・チ・・ニワ・・・ゴトサン」
すると、店の奥から一人の若い女性が出てきた。

.....ハーイ、 ミン.....コチニワ!

課長が不思議そうに僕たちを見ている。

.....課長、ママさんの娘のミンさん。


「・・・・・・・バオ、ニュー、トーイ?」(何歳ですか?)

.....課、課長!いきなり年ですか?


「いけなかったか?、この国では、最初に年を聞いておかないと相手に対しての人称が異なるからね、、
例えば、chiだか、baだが、、、。」

.....どう見たって、emでしょ!!!(自分を中心にしたとき年下だったら、人称はemをつかう)


すると、彼女は笑いながら答えた。

「ハイ、ムオイ、ハイ、トウイ!」(22歳!)

「ニジュウニィ!、もっと幼く見えるな・・」

.....だったら、emでしょ!!!。

すると、ママさんがビールと一緒に何枚かの写真を持ってきてテーブルに広げた。

そこには、家族とダラットへ行ったときの微笑ましい写真があった。
ダラットは例えるなら日本の軽井沢と、いったとこ・・ベトナム高原都市だ。

そして、写真を見ながらの何気ない会話が延々と続く・・・
僕的には、このアットホーム的な食事がたまらなく癒されるのだ。

「こんなに延々とダラットの写真を見せられると、なんか体が、ダラっとなりそうだな。・・・」


・・・・・・・・・!?!!??



......課長、みんな意味わからずキョトンとしてますよ。

そして、ミンさんは写真館で撮った自分の写真を持ち出してきた。
ベトナムの女性は、よく自分のプロマイド的な写真を撮ることが好きである。

「dep、デップ?」(きれい?)



「・・・・・・・・・・・・。」

.....課長、何が言ってやってよ。


「あ、そうだな・・・つい、・・・」

.....ん?!、つい!?、、なに?


「これ、ほんとに、、ミンちゃん、、、、、!?」

.....と、いいますと、


「えらく修正してないか?」
課長がぼそっとつぶやいた。

.....いいんです、課長、デップ(きれい)と言ってやってくださいよ。


「ジョニー・デップ!!」

.....はぁ?

いつしかお店をほったらかすかのように、ママさんと娘のミンさん、他の客まで
たくさんの写真を広げた僕たちのテーブルに集まりだし、
そして、いつも僕と食事をしている常連客?の
野良猫、ミーくんまでもが、座り込んでいる。

いつ来てもここの、この雰囲気がとてもたまらなく好きで、
ここで料理のほか、ベトナム感までも味わっているのだ。

.....課長。


「ん?」
.....話は変わるけど。


「なに?」

.....ごめん。


「は?」

.....せっかく、トゥイと会うセッティングをしてくれたんでしょ。


「会いたくなかったのか?」

.....前にも、課長言ってたよね..香取拓哉でいればいいって。


「ああ。」

.....そうなのかなぁ~てね..最近、思うんだ。


「後藤・・・・・。」

.....部長が日本へ戻るとき、空港に、、
部長の彼女が来てたの知ってる?


「・・・・・・・・・・。」


.....僕たちがいたから部長のとこへ寄ってこなかったけど、
ちゃんと、空港に来てたんだよ。

「そうだったか・・・」

.....彼女...泣いてた、、、、
お金だけでつながっているような関係には、
到底思えない・・・

.....それは、ほんとの親子のよう.....いや、恋人。



「・・・・・・・・・・・・・。」

課長は何も言わずにビールを口にした。


.....あの日部長、日本へ帰れるというのに足取りが重そうだった。


「そうか。」

.....スーツケースも重かったと思うよ。


「・・・・・・・・・?」

.....サイゴンのバーで彼女がいっぱい詰め込んでたもん。


「何を?」

.....二人が過ごしたたくさんの時間。


「・・・・・・・・・・。」

.....だからね、トゥイにあんな思いさせたくない。


「好きなんだな・・」と、課長がポツリと言う。

.....え?


「いや、なんでもない。」

それ以上、課長は何も聴こうとしなかった。


「ところで、今度の日曜日は空いてるか?」

.....とくに予定はないけど。


「じゃ、一日ガイドをやらないか?」

.....ガイド?


「明日から私の兄の娘が、友達同士でホーチミンに観光に来るんだ。」

....明日の夜?


「そう、それで明後日は、会社から休みをもらって彼女たちを・・
一日、市内観光に連れて行こうと思っている。」

.....一日いないの!?

「あぁ、次の日曜日はクチへ連れて行こうと思ったんだが・・・・・
接待で工場長たちとゴルフの予定が入ってしまったんだ。」

クチとはベトナム戦争当時の面影がそのまま残っている解放戦線の拠点場所だ。

.....と、いうことは.....まさか、僕がクチへ案内する!?!


・・・無理だって!

「運転手はうちの社員のハァさんだから、心配ないよ。」

.....だって、自分自身クチへは行ったことがないし!!それに若い女性をクチへ連れてくなんて?!!
絶対、興味ないと思うし、、もっと、良い観光場所あったんじゃ!?


「そうかな?、雑貨やスパ、ヘルシー料理、そしてリゾート地と言った最近人気のベトナム観光ではなく、
真のベトナムの地、場所を見てもらいたくてな。」

「それに、後藤なら大丈夫、これだけサイゴンに馴染んだんだから、」

.....サイゴン、ホーチミンならまだしも、クチ・・・ガイドにならないよ。


「クチから出任せでいいんだから・・・」

はぁ?

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ