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笑顔が愛おしくて ~ベトナム恋愛奮闘記~ 作者:KON
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サイゴンの明かりにとまどう長い夜

どのくらい時間が経ったのだろう。

日本に帰る彼女にプレゼントを渡すこともできず、
「またね。」の一言も言えず・・・・。

自分にこみ上げてくる怒りのやり場もなく、
気がつくと僕は、空港から歩いてホン・ハーの寮の前まで来ていた。

それは無意識に・・・・・・

寮の中に入ることもなく、、
ただ、ただ、寮の門前に立っていた。

するとー

「後藤?」

.....ん?

深夜のホン・ハー通りの行き交うバイクの間から、
一台のスクーターが寮に近づくと・・・・・

.....課長。

バイクの後ろに乗って現れた課長が、僕を怪しげに覗き込みながら・・・

「後藤だよな?」

.....はい。

前で、スクーターを運転しているのは、
以前、クラブで会ったあのママさんだ。

いつものようにクラブで飲んだ後、ママさんに送ってもらったのだろう。

「こんな遅く、何か、寮に用事か?」

.....いや、、とくに、、ごめん、


「な、何なんだよ、、気味悪いな、、、中に入って、何か飲むか?」

......ありがとう、、でも、やっぱりホテルに戻ります。


「そうか。」

.....課長、今何時ですか?


「ん、12時になるぞ。」

.....もう、そんな時間。
僕の腕時計は、6時半のままだった。

「後藤、、今まで彼女ママさんと一緒だったこと工場長には内緒だぞ。」

.....う、うん、そうだね。

行き交う車やバイクのヘッドライトに照らされたママさんの顔は、
とても、魅惑的できれいだ。

「じゃ、ホテルまで彼女に送ってもらうといい。」

.....だ、大丈夫です。歩いて帰ります。


「ヨル、アルク、キケンネ、ホテル、オクル・・・・・ウシロ、ノッテクダサイ・・・」

僕は、ママさんのお言葉に甘えた。

深夜のホーチミンー

ママさんの大きなスクーターの後ろは、とても心地よかった。
まるで高級車の助手席でも座ったかのようだ。
タムさんや、トゥイのバイクとは明らかに違うのだ。

さらに・・・・・
ホーチミンのなま暖かい風と香水のほのかな香りが
別の世界へと引き込まれてゆくようだった。

「アノ、ホテル・・デスネ。」

寮からホテルまでバイクで10分とかからない距離なのに・・・
長い時間、ママさんの後ろ姿に抱かれていた錯覚に思えた。

.....ありがとう、カム、オン、ニャ。

滞在しているミニホテルの前で、僕はスクーターを降りた。

「ラン・・・ミスタ、カトリ・・ニ・・アイタイト、イッテイル・・・コンド、ミセクル・・イイ?」

.....うん、ありがとう。

ミスター、カトリ・・・香取・・・
香取 拓哉・・・僕がディスコの店で語った名前。

ランとは、課長に連れられていったそのクラブで、
ママさんが、エスコートしてくれた女性だ。

「グッナイ、ミスターカトリ!」

そういうと、さっそうと深夜のサイゴンの街へと消えていった。

そのスクーターのテールランプを目で追いかけるように・・

.....グッナ.....!!

その時、僕の視線に・・・・

.....トゥイ..........!!


このホテルの通りの前にトゥイが現れたのだ。

トゥイは、僕と目が合うなり・・・逃げるようにバイクにまたがり去っていた。

いつから・・・・・

明らかにママさんと僕が、ホテルに一緒に戻ったことを誤解されていたに違いない。

いや、完全に誤解されて帰ったぞ!

僕と、ママさんのこと・・・・!!

きっと、トゥイは・・・レストランで待っていても来ないので、
この僕が寝止まりしているミニホテルの前で待っていたんだ。

病み上がりにもかかわらず・・・
こんなに遅く・・・・・

なんてこった!!


今夜はどうなっちまてんだ。


それは、優柔不断な僕に・・・・・

愛することに臆病になった僕に・・・・・

サイゴンに住みつく女神が、
僕に意地悪をしているようでもあった。

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