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笑顔が愛おしくて ~ベトナム恋愛奮闘記~ 作者:KON
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恋の試行錯誤

数日間前は、ベトナムのホーチミンにいたのが夢のように
今、僕は当たり前のように、ここ日本にいる・・

なんか今でも、夢を見ているかのような時差がある・・・

それは日本帰国後、二日目の土曜日・・・・・・・

「な、なに?・・・書いてるんだ?」

.....ん?

友達のリゾートマンションの大浴場で、湯気で曇った鏡に
指で、ある二文字を書いていた。

そ、ここは日本。

帰国後、彼女と僕、そして親友の稲森とその奥さんとの4人で、
ここリゾートマンションに車で、やって来たのだ。

親友の稲森は、僕より一つ年下だが、
若いのに、すでに結婚2年目で、人生においては僕たちの先輩なのだ。

その親友のおじさんがリゾートマンションを所有していることで、
僕たちは山がきれいなここのリゾートでくつろいでいるってわけ。

むろん、僕の帰国を歓迎しての心優しい彼女と親友の計画だ。
さらに、そのマンションには大浴場や露天風呂までもが完備されていた。

ス・キ

友達の稲森が鏡になぞった文字を見てにやけていた。

「ふ~ん」

.....え?

「す・・き・・ふ~ん・・」

.....え!!??

.....あっ、あっ・・こ、これは....!!!!!

僕は、慌てて曇って書いた文字を手のひらで一拭きに消した。
無意識に曇ったガラスでトゥイのことを思い、なぞっていたのだろう・・・

彼女とここへ来ているというのに・・マジ最低だな・・

「なんか、言ったか?」

.....い、いや、、、


「いっそ、さっきなぞってた文字を言葉にしてさぁ・・・・思い切り彼女の前で言ってみたら?」

.....えっ!?


「彼女だって、あと何年日本で待たされるかわかんないんだろ・・・。」

............
言葉に詰まった。


「きょう彼女が楽しみにしてたのは、この一泊の温泉旅行じゃなくて・・・
二人でいる時間と多くの会話だよ。」

......そうだよね。
僕は、ポツリとつぶやいた。


「うちの奥さんも言っていたけど、もっとたくさん話してあげなきゃ、会話少ないよ、」

..........そうかな?


「疲れているからなんて言うなよ、彼女の方が遙かに待ち疲れているんだから。」

稲森の一つ一つの言葉が、僕の胸に突き刺さり大人びていた。


この温泉の湯気が、僕の情けない心まで曇らせていたようにさえ思えた。

温泉から戻ると・・・・・

稲森の奥さんと、彼女とが共同で夕食作りにあくせくしていた。

「いい匂い~・・って、言ってるよ。」

「え、ほんと?」

.....え、あっ、、、、ほ、ほんと。

稲森が僕たちに気を遣っているのがわかる。

.....エプロン姿、すごくいい感じだよ。
僕は、彼女に言った。

「そう、じゃ、しばらく目に焼き付けておいてね、・・
・・また、当分見ることができないんだからさ!」

.....そうだね。

「ほんと、忘れないでよ。」


「私のことちゃんと焼き付けといて・・ね。」

.....ど、どうしたの?、なんか今日は、いつもと違う。


「そうかしら、いつも一緒にいないから、違うように見えるんじゃないの?」


.....そ、そうかな?



............................。



.....なぁ、稲森!!


「お、おい、おまえらの微妙な空気感を俺に振るなよ」


「ねぇ~ちょっと、ちょっと、、テレビ見てごらんよ!」
急に稲森の奥さんの甲高い声が割り込んできた。

.....あ。

そこには、ベトナムを楽しんでいる芸能人の姿が映し出されていた。

ベトナム・ホーチミンの特集番組だ。
ここにいるみんなが、ものすごくタイムリーだと思ったに違いない。

「へぇ~・・・後藤さんって・・・こんなとこでがんばってるんだぁ?」
稲森の奥さんが料理そっち抜けで画面に釘つけられていた。

テレビのなかでは、活気あるベンタイン市場の風景が映し出されている。
顔見知りのおばさんや物売りの子供の姿も映し出されていて、なんか妙な気分だった。

「泣いてるの?」
稲森の奥さんが彼女にそっと、言葉をかけた。

「ううん、、なんか、こんなとこで仕事しているんだと思って、、」
・・・と、彼女がテレビを見て言った。

そこには、市場でコーヒーを試食しているタレントの姿が目にはいった。

.....あそこの活気や、市場独特の空気感が、あの食べ物や飲み物に魔法をかけているんだ・・・
と、僕は独り言のようにつぶやいた。

「えっ?・・今、なんか言った?」

途中、料理で包丁を握りしめていた稲森の奥さんが、
説教でもするかのような口調で言った。

.....い、いや..........別に..........

奥さんの説教気味た口調は、ここへ来る車中でも聞いたことを思い出した。

稲森が運転していて、前の車にぶつかりそうになったときに。

「いま、確実に危なかったよ、しっかり前向いて運転してよね。
何か考えてたり、脇見してると取り返しのつかないことになるんだから・・・」

それはまるで、ベトナムの魔法から解けない曖昧な僕の心に、
強く言い聞かせているようでもあった。

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