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笑顔が愛おしくて ~ベトナム恋愛奮闘記~ 作者:KON
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砂浜

まだ、舗装が行き届いていないガタガタ道。

車内に漂うドリアンの香り。

そして気分が絶好調になっている課長の十八番のアカペラ。

これだけの要素が集まると、
誰だって車酔いをすることから逃れられないだろう。

むろん、僕も少し気分が悪くなろうとしてきたころ、
もう、窓の外から見える景色は今までの田園風景とは一変していた。

まばらだったバイクや車、交通量・・そして、人々が多く目に入るようになり、
リゾート地風の家々までもが、目に飛び込んできて市内、いや海が近いことを、
車外から見る風景が告げているようだった。

「見て、海が見えてきたよ・・」

ブンタウ・・・・・・・
南シナ海に突き出た半島で、市街の目の前が湘南海岸のような表ピーチとなっている。

一年中暑い国だけに、365日海水浴が満喫できるといってもいい行楽地だ。
ホーチミン市内からもっとも近いピーチだけに現地ベトナム人にも人気スポットなのだ。

.....海パン持ってくればよかったなぁ~

「何言ってるんだよ、後藤・・」

.....なにって?


「海は車内から見るだけ・・・」

.....え?


「そうだよ・・これから、うまい昼食場所に向けてGOだ!」

.....えっ、.....こ......工場長、海へ寄らないって、マ、マジ!?


「ん~・・・・・・・・・・」

「タムさん達だって肌を焼かないように努力してるのに、
海辺なんかに寄ったらかわいそうだよ。」

.....はぁ?


「みんなの目的はここ、ブンタウでの海鮮料理だし・・・ね、タムさん。」

.....えっ?
海水浴を楽しみにしていたのは、僕だけらしい。

そのときだった、

「ウミ、イキマショウ・・Let's go to the sea!」

.....タ.....タムさん。

「ん~・・・まぁ、せっかく砂浜を目の前にして通りすぎるのもなんだしね。」

......工場長、そ、そうですよね。

「工場長は、タムさんに弱いんだから・・」


「・・・・・Please stop in the parking lot there.」(そこの駐車場に・・・)

そこは、まるでベトナムのイメージカラーのような砂浜が長く続いて見えた。


ブンタウ。

車から降りた瞬間から海岸の砂浜なのだ。
それを踏みしめる感触はとても心地よく感じた。

これが、ベトナムの海の潮風―
車酔いもどこ行くそこだった。

「ここで降りて正解だったなぁ~・・久々に海風が気持ちいい!!」

僕は、誰よりも先に海の方へ走り出した。
それは、無邪気な子供のように・・・・・

いや、子供以上に子供なのだ。

あまりきれいとはいえない海水に足をつけると、
幼い頃に、家族で行った海水浴の光景が頭をよぎった。

そして、誰より先に砂浜に寝そべってみた。

青い空色に真っ白い絵の具を垂らしたような雲がとても気持ちよく感じた。

しばらく砂浜で、横になって寝そべっていると、

「・・・・・・ is it suntan?」(日焼けしているの?)

タムさんが、日差しを気にしながら、こちらに向かって話しかけてきた。

......イエス。

「May I sit beside you?」(そばに座っていいですか?)

.....うん。みんなは?

タムさんが、指をさした向こう岸に、
飲み物を買ってはしゃいでいるみんなの姿が見えた。

......あ、さっき...シン、ロイ、ごめんね、タムさん。

「why?・・ナニ、アヤマリマスカ?」

.....海..寄っちゃったし。

.....The skin is burnt. ..肌...焼けちゃう・・から。

「モウ、アルヒトニ、ヤケテマスネ・・」


......ん?

タムさんが、真っ赤な顔をして僕に・・

「・・・youネ。」

.....え?

その言葉の先をかき消すように・・
遠くの岸から大きな声が割り込んできた。

「お~い、カニ食わないか?」と、


.....行かなきゃね.......みんなが呼んでる。

「.....ハイ。」

みんなの声の先では・・・・・
大きなパラソルを張った砂浜上の屋台に、みんなが群がっていた。

そこではまるで石焼きいもを扱うかごとく、生きたカニをその場で蒸して売っているのだ。
その光景はあちこちで見受けられる。
もちろん、カニだけじゃなくうまそうな煙を立てたあまり見たことのない貝も蒸していた。

「やっぱ、砂浜で食べるカニみそは、たまんないね~」

「このタニシみたいのも、うまいですよ。」

「後藤!・・車からビール持って来いよ・・・」

.....さっき、飲み物を買ってなかったですか!!

なんなんだよ!!・・もう!!・・・
と、言葉には出していないが、
顔に出していた心の言葉に気付かれないように、バンへとビールを取りに向かった。

人が気持ちよさそうにしているとこを邪魔された気分だったけど、

それでも・・・
このブンタウの海風とみんなの笑顔がそれをかき消してくれていた。

ここベトナム、海外の不安も・・

仕事の苦労も・・・

言葉の壁も・・

そして・・彼女に会えない寂しさも・・・

この小旅行が、少しの間かき消してくれた。

僕も、タムさんも・・みんなも・・今日は笑顔が堪えなかったのだ。

それにしても、砂浜、ブンタウで味わうカニは格別なものだ・・。
目に入る心地よい海岸が、ここの食べ物をよりいっそうおいしくさせる味の素となっているようだった。

そして・・まだ免疫ができてない僕の胃に負担をかけることなく、満腹感を感じたのだ。
いや・・食べた後の・・食あたりも気になるが、

タムさんがさっき、僕に話しかけた言葉も気にはなるのだが・・・・・・・。

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