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笑顔が愛おしくて ~ベトナム恋愛奮闘記~ 作者:KON
20/73

手紙

タン・ソン・ニャット国際空港・・・・・・

日本や他国からの到着便でやってきた人たちが税関を通って出てくる。

それを出迎える人たちの群れ。

その中に僕たちはいる。
とても妙な感じだ。
つい、こないだまでは、僕が、逆の立場でこの空港に降り立っていたからだ。
まさか、僕がこのホーチミンで誰かを出迎えるとは・・・・・

そう・・この便に乗ってくる専務が、ベトナムに三日間だけ滞在することになっているのである。
滞在先は、僕らの寮ではなく市内の立派なホテルらしい。

たしか、ニューワールドホテル・サイゴン。

.....あっ!

そこにひときわ貫禄のある専務が出てきた。

「おぅ!」

専務が僕たちを見つけて手を挙げている。

「出迎えご苦労さん!・・相変わらずここは出迎えの人たちでごった返してるなぁ~」
確かにそうである。

出迎える人たちの中には現地の人(ベトナム人)以外に、
僕たちと同じ日本人もいるし、
台湾や中国といったアジア系の人たちも多く見受けられる。

その中でも、民族衣装アオザイを着て花束を持った女性が目に入ってくる。

「あんな子に出迎えてもらいたかったなぁ。」
専務がその女性を見てぽつりと言った。

一緒に出迎えに来ていた北沢さんが先にタクシーを捕まえて叫んでいる。

「こっち、こっち・・・!」

僕は専務のスーツケースを持つと・・タクシーのトランクへ

「ところで後藤、こっちの生活には慣れたか?」

.....はい!
もちろん、うそである。


「そうだ日本から手紙を預かっていたんだ。」

.....てがみ?.....僕にですか?


「総務の子が、ベトナムに行ったらぜひ渡してほしいと・・」

総務の子・・・彼女からだ。

専務は本社の職場で働いている総務の子が、僕の彼女だってことは知らないのである。

専務から手紙を受け取ると、
僕はタクシーの助手席の方へ乗り込んだ。

.....専務、先にホテルへ向かいます?
と、僕は言った。

「いや、荷物や土産もあるので寮へ寄ってくれないか?」

.....シン、ディー、、ホン・ハァー!!OK?
僕は運転手に行き先を言った。

ちょっと優越感・・・これを言いたくて助手席に乗ったのだ。

後ろの席で、僕のベトナム語に北沢さんと専務が笑っていた。

僕は、ひと時のタクシーの中、
微かな街明かりが灯す助手席の中で・・・
専務が持ってきた手紙を開けた。

そして、その愛しい文字はすぐに僕の目に飛び込んできた。


元気してる?

おなか壊してない?

ちゃんと食べてるの?

仕事はどう?

みんな優しい?

淋しくない?

だからって浮気してない?


それは僕を思っての質問攻めの手紙だった。

そして、その答えの返事をすぐに返せない・・・・・・
届かない距離を感じるのであった。

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