黄昏の館1
春眠暁を覚えず。
これは、春は寝心地がいいので、夜明けになっても眠りから覚めないという意味。
そして、もう1つ。秋の夜長。
これは、そのままの意味で、秋は夜が長いということ。つまり・・・
「いい意味に解釈すると、夜の方が時間が長いんだし、夜は起きてて昼に寝てる方が効率がいいってことだよな」
「何ぶつぶつ言ってんの?」
「いや・・・昔の人はいいこと言うなぁってことだよ」
「?」
「アホ子には分かんねぇだろうなぁ?先人の素晴らしさが!」
「何よ、バ快斗!青子にだって分かるもん!」
「へぇ?」
「・・・っもう!知らない!!」
「・・・はぁ・・・。ねみぃ・・・」
最近は目ぼしいビッグジュエルもなく、きわめて平凡で平和な日々を送っているオレ、黒羽快斗。
・・・そして、怪盗キッド。
外は紅葉が始まりつつある、秋の景色。
「平和だ・・・」
そんな平和だったはずのオレの秋は、1人のたった一言からバラバラと崩れ去ることになる。
その一言とは・・・
「やぁ、黒羽くん。おはよう。元気だったかい?」
という、この一言。
言葉の意味としては、朝の風景として別に当たり前の内容。ただ、その声の持ち主に問題があっただけで・・・。ここにいるはずのないこの声の持ち主は、なぜか気配を消して背後から現れ、唐突にオレにこの言葉をかけた。
この、甘ったるいイヤミな口調で・・・
「はっ・・・白馬ぁ!?」
「失礼な人だね、キミは。朝からそんな大声で驚き、さらに人に向かって指をさすなんて・・・」
「オメェ・・・なんで日本にいるんだ?」
と、ようやくショックから立ち直ったオレは言葉を発することに成功した。が、コイツの切り替えしは、今までのように早かった。
「居ては都合の悪いことでもあるのかい、黒羽くん?まぁ、こっちに戻ってきたのにはちゃんとした理由があるのだけどね」
「理由?」
「そうさ。コレがイギリスにいた僕の元へと届いたんだよ」
と言って、ヤツは、黒い紙を取り出し、オレに渡した。
“貴殿の英知を称え 我が晩餐に御招待申し上げます
神が見捨てし仔の幻影”
「ぁんだぁ?コレ・・・」
「どうだい?興味深いだろう・・・?」
神が見捨てし仔の幻影・・・ねぇ・・・。ふざけたこと抜かしやがって!
と、内面は怒り心頭なのだが、表面上はポーカーフェイス。
何の興味が無い風を装って「ん。」と渡された紙を返す。
「おや、いいのかい?」
「なんでオレにそんなこと聞くんだよ・・・」
「ふ・・・まぁいいさ。僕がイギリスから帰ってくる間に調べてもらっていたんだが、コレは日本中の探偵たちに送られたそうだよ。最近有名になってきているらしい眠りの小五郎・・・毛利探偵、そして、この僕含めて6人にね!しかもこれには、200万円の小切手が同封されていてね。それで急遽帰国したってわけさ!」
「・・・へぇ・・・わざわざイギリスにまで送るなんて、面倒なことするな、ソイツ」
「えぇ!それは、僕の実力を知っていたからでしょう!なので、僕が帰国して参加できるように、この晩餐会は明日の夜に行われるようです」
「あっそ・・・。じゃ、オレは寝る!」
・・・アイツ、何考えてんだ?わざわざ、あんなもんオレに見せて。
もしかして、オレに来てほしいのか?なんちゃって。
それにしても、毛利探偵か・・・接点多いなぁ、何だかんだで。
ってことは、あの探偵くんもついてくるってことだよな。
ふ〜ん・・・面白いじゃねぇか!白馬の狙い通りってことがシャクだが、聞かされちゃやっぱ気になるし、今晩あたりにでも下見に行ってみるか。
で、夜。
書かれてあった場所へと向かう途中にポツンと建っているガソリンスタンドを発見。
こりゃ、使える♪ってことで、下見は終了。
明日に備えて、今日は帰路についた。 |