挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

ブックマークする場合はログインしてください。
この作品には 〔ガールズラブ要素〕 が含まれています。

桜色ワンデイ

「ねえ、鈴ちゃん。今日がなんの日だか覚えてる?」

 千恵と一緒の高校に入学したのが去年の4月。それからの一年間をあたしと千恵の二人で一緒に駆け抜けたわ。あ、別に千恵以外に友達がいないとかそういうわけじゃないので、勘違いしないようにね。

 というか千恵ったら、あたしとは別の私立に行くとか言っておきながら入学式でばったり再会だもの。ビックリしたじゃない! 別に千恵がいなくてもあたしは一人でやっていけるわよ、とか啖呵切ったのに!

 いや、本当は寂しいと思ったわよ。思ったけどそんな心のうちを暴露できるわけが……。

 そんな驚きと嬉しさの再会から始まって、千恵を虐めたクラスの女子をあたしがボコって後でなぜかあたしが千恵に怒られたり、夏休み最後の一週間、千恵の家に泊まりこんですべての宿題を千恵先生のスパルタ授業で終わらせたり、球技大会で顔面にボールが直撃したあたしを、千恵が膝枕で看病してくれたり。さすがにこれは恥ずかしかったわよ。

 そういうのは二人っきりの時の方がい――じゃなくて、文化祭では一緒に露店巡りしたっけ。何気にお化け屋敷のデキがよくてビクビクしてる千恵は可愛かったわよ。

 結局部活には入らなかったのよね、そういえば。

 二学期の期末テストで赤点とって、追試を受けたのは何を隠そうあたしです。あわわわわわ…、スパルタ千恵先生が再来。お陰でなんとか冬休みの補習は免除されたのよね。でも未来永劫千恵先生再来はしない方がいいわ、うん…。

 クリスマスも初詣も千恵と一緒だったわね。バレンタインにはお互いにチョコを渡しあったっけ。あげる男子なんていないし。

 そんな感じで一年は過ぎ去ったわ。何事もなく一年生を終わらせ、やってきた二年生への準備期間。
 あるいは覚悟を決めるための時間。その春休み中、あたしは千恵に「大切な話があるから……あって話したい」と駅前の喫茶店に呼び出されたの。

「久しぶり、千恵。元気してた?」
「毎日メールしてるでしょ。春休みの宿題は進んでる?」
「なんとか頑張ってるわよ。取り敢えず、答えを埋める程度には」
「もー、ちゃんと勉強して正しい答えを書かない意味ないよ。そろそろ春休みも終わりそうだし。ところで――」

 そして冒頭に戻るわ。

「え? なんの話?」
「だから……、今日」
「えっと、今日は……」

 と敢えてケータイの日付を確認してるような動作をしてみたわ。今日が千恵の誕生日だってことくらいあたしが覚えてないはずないじゃない。去年は千恵の誕生日を知らなかったけど、今年はばっちりプレゼントまで用意してるんだから!

 でも素直にそうは言えない。もとい、言わない。

「今日何か特別なことなんてあったっけ?」
「……っ!?」

 ……あ、やっちゃったかも。そのうるうるの瞳は危険信号。

「鈴ちゃんの……」
「あ、千恵、あのね……」
「鈴ちゃんのバカァーッ!!」

 ……喫茶店で無料で飲める水。氷の入った水をあたしにぶっかけて千恵はどこかに消えた。……消えました!

 ああもう、ああもう……! あたしが悪かったとはいえ水をかけることないじゃない! てか、そういうことできる子だったんだ……。結構以外かも……。

 千恵がいなくなってから出てきたアイスコーヒー二つ。どうすりゃいいのよ……! ええ、飲みました。二人分飲んで、二人分払いましたが何かっ!? この程度じゃさすがに太らないでしょ。多分、いや、絶対。

「そう言えば、大切な話があるとか言ってたけど……。どうしよう?」

 ケータイにかけてみたら、電源が入ってないのか繋がらないし……。もしかしてかなりショックだった……? ヤバイ。……早く謝らないと。今どこにいるのよ。家まで駆け抜けたのかしら? イエデン……は番号知らないし、ああもうっ! 直接行こうかしら? 行った方がいいのかしら? このまま謝りもせずに家に帰るなんて、できるわけない!

 千恵の家は隣町。電車一駅190円の距離。もしかして今から追いかければ間に合う?
 と思ったら、動き出した電車が見えた。なんてこと、アレに乗ってるのかしら? 次何分よ!? えっ!? 23分とか長くない!?

 慌てても仕方ないのでゆっくりと切符を買って、ホームへと下りた。
 落ち着けあたし。そわそわしても何も始まらないわ。と心の中で呟いては見るけど、その度に千恵の涙が浮かんじゃうのよ……。あんな簡単に千恵が泣くなんて思わなかったわ……。あたしがもっと素直ならこんなことには……。

 あまり人のいないホームで青い椅子に座って電車を待っていたら、とんでもないことが起こったのよ。
なんと人身事故のアナウンス……。このタイミングでそれなの!?
 ああもう、ああもう!! 千恵に再コール。……ダメ、出ない!

 内心の焦りにクールになれという自己暗示で対抗しながら、運行再開を待つこと30分。千恵からメールがきた。ケータイからではなくて、千恵のパソコンから。

『鈴ちゃんへ
 本当はさっきの喫茶店で伝えようと思ったんだけど、鈴ちゃんがあんなこと言うから私……。
 でも、伝えないといけないから。鈴ちゃんには絶対に言わないといけないから……。
 でも伝えるのが遅れてごめんなさい。
 クラスのみんなには3月中に伝えてたんだけど、どうしても鈴ちゃんには伝えられなかったの。
 何度か電話しようと思ったんだけど、でも、涙がでちゃって……だから、メールで伝えます。』

 それから改行が続いてる……。

 嫌な汗が出てくる……。これ以上見たくない! 下にあるであろう文章を見たくない!! でも、見ても見なくても状況は変わらない。むしろ早く確認して対処すべきなんじゃないの?

 クールになってあたし。落ち着くのよ。

『私は今日。東北に引越します。
 こんなお別れの仕方は寂しいけど、今までありがとう、私、楽しかったよ。
 鈴ちゃんと友達になれてよかった。
 さよなら』

 ケータイが壊れそうなほどに握り締めて、何度も文面を確認。でも、……それが変わることなんて……なくて……。いつ来るか分からない電車なんて待ってられないわっ!!
 あたしは駅を飛び出して、走った。千恵の家まで全力疾走!


 あたしが卜部千恵とであったのは、中学2年の11月だったわ。そもそも学校が違うあたし達が出会えたこと自体が奇跡だったんだと思う。てか思わせて。
 あたしが全力疾走していたら、女子に衝突して跳ね飛ばすという、交通事故の亜種みたいな現象が起こったの。その時の被害者が千恵だったというわけ。まさに運命の出会いだった。とか言ってるわ!

「ご、ごめん! あなた大丈夫っ!?」
「あ、……はい。大丈夫です」

 それから病院行くだの、車とぶつかったわけでもないのに大げさだのというやり取りがあったっけ。結局あたしが折れて、千恵とはそこで別れたんだけど……。
 それからの数日間、あたしは千恵のことが頭から離れなかった。申し訳なさからきてるのかこの思考はっ! とも思ったけど、

「それは恋よ!」
「んなわけあるかっ!!」

 でも、友達にそんな冗談を言われたことで自覚しちゃった。
 あたしはきっと、あの時であった女子。千恵と友達になりたかったんだって。メールアドレスくらい聞いておけば……って、あの状態でメアドなんてきけるかああああああ!!
 ああもう、ああもう!! これはしばらくもやもやが消えそうにないわね、はぁ……。

 と思っていた週末、気晴らしにウィンドウショッピングでもしようと出向いた隣町でばったりとあの時の女子に再会した。

「あ、あの時の……」

 やっぱり運命じゃん!
 それからよ、あたし達の交流が本格的に始まったのは。


 タクシーを捕まえるなんて、考えられる状態じゃなかったわ。がむしゃらに走っていて、千恵のことばっかりで頭がいっぱいだったんだから。


 放課後に、休日にとあたし達は遊びに行くようになったし、お互いの友達を紹介したりもしたわ。

「まさか、りんりんの知り合いにあんな可愛い子がいるとは。お姉さんは嬉しいなぁ」
「はいはい」
「虐めて泣かせる機会があったら私も呼んでね! うふふふふふふ」
「ないわよっ!」
「ちぇっ……」
「友達は厳選すべきだったかもしれないと今になって後悔してるわ」
「酷いわ、私を捨ててあの子に乗り換えるの!? 私とは遊びだったのね!」
「もち遊びよ!」


 急がなきゃ。今すぐ行けば間に合うに違いないって、それだけ思って走り続けたの。


「ここが私の家」
「これが千恵の家ね。……感想とか必要? 普通の家で感想言えって言われても難しいんだけど」
「いや、いらないからとにかく入って」
「おっけ。お邪魔します」

 そして千恵の部屋へ。
 ぬいぐるみが部屋中にいっぱい! とか、アイドルのポスターが大量ということはなかったわ。いや、でも、これはこれで予想外だったわね……。千恵の部屋ってもっと片付いてるとか、可愛いもので溢れてるイメージだったんだもの。

「本だらけ、ね……」
「読んでない本ばっかりだけど。新刊でるとつい買っちゃって、それで満足しちゃうの」
「本好きなんだ、へぇ……」
「といってもハードカバーじゃなくて、ライトノベルばっかりだけどね」
「あたしは活字全般が苦手だけど」
「うん、予想通り。鈴ちゃんはそうじゃないとねっ」
「そこはかとなくバカにされてる気がするのは気のせい?」
「ちなみに聞きます。テストの最高得点を教えてください」
「しょ、小学生時代のでよろしければ……!」
「現役中学生でしょう。もちろん中学校のテストで!」

 100点満点中55点があたしの最高得点ですが何か!? 赤点orニア赤点(回避)があたしの基本パターンですが何か!?

「鈴ちゃん……受験、大丈夫?」
「大丈夫じゃない……問題ある……」

 そして、千恵先生のスパルタが初めて発揮されることになったのよね。
 ま、お陰であたしは受験をクリアできたんだけどさ。あーきついきつい。でもたまーに休憩時に千恵の手作りお菓子とか出てきてね、ふふっ、フフフ。
 あれは美味しかったなぁ、二つくらいの意味で。具体的にどういうとは言わないけどね。自分で考えなさい。


 倒れそうになっても、意識が飛びそうになっても、あたしは、走るのを、止めないっ!!


 受験が終わったすぐに風邪で倒れたあたしのお見舞いにきてくれたこともあったわ。嬉しかったなぁ。学校終わってすぐにうちに来てくれてね。あたしの友達でお見舞いにきてくれたのは千恵だけだったんだから。
 まったく、うちの学校の友達はみんな薄情だあああああっ!

 ああもう、ああもう! もう千恵だけがいればほかの友達なんて――


 こんなお別れってないわよ!
 あたしのせいよね……。あたしがあの時、ハッピーバースデーといってあげていれば、こんなことには……。あたしのバカアァァァ!!


「おはよう、鈴ちゃん。今年からは同じ学校ですよ」

 入学式当日。桜並木を抜けたところにある校舎入り口であたしを待ち受けていた千恵。

「えっ、あれ? なんで、ここに!? 違う高校行くって言ってたじゃない!?」
「鈴ちゃんと同じ学校に通いたくて……お母さんを無理矢理説得したの。公立はお金がかからないよって」

 なんて説得の仕方よ……! お金が絡むと大人っていうのは簡単に傾くのねっ!!

「そんなわけだから三年間よろしくお願いします」
「……っ! こ、こちらこそよろしくねっ!」


 それから、いろいろとあって楽しかったなぁ。だっていうのに、どうしてこんなことに……。
 ああもう、ああもう……!! 千恵の家はまだなのっ!!
 もう足がダメになってる……。走れない……。でもあたしは、進むのを止めないわよ!走れないのなら歩けっ! あるけないのなら這ってでもいけ!

 ピンク色の花びらを踏みつけて、あたしは諦めずに前へと進む。

「はあ、はぁ……」

 汗でべっとり。でも転んで血だらけという状態だけは避けて、あたしは千恵の家にたどり着いた。辿り着けた。急いでインターフォンを押す。
 引越しのトラックとかは見えないけど、まさかもう……!?

『はい、卜部です。どちら様ですか?』


 天はあたしに味方した。


 そして、


 あたしは千恵の部屋へと滑り込み、





「……え? ……うそ?」
「うん……」

 千恵の部屋にて、あたしは膝から崩れ落ちた。
 こんなに一生懸命になってたあたしがバカみたいじゃない……。ああもう、ああもう……。

「あの……、大丈夫?」

 それでも言っておかなきゃ……。すべての元凶をぶち壊す……。

「ハッピーバースデー、千恵」
「えっ? 覚えてなかったんじゃ……?」
「最初から覚えてたわよ……。今日は千恵の誕生日であると同時にエイプリルフールじゃない」
「なんだ……そう、だったんだぁ……。はぁ……」

 この日、あたしは神様に誓ったわ。もう二度とエイプリルフールに嘘なんてつきませんって。お互いに精神ダメージがとんでもない一日だったわね……。え? まだ半日残ってるの? はぁ……。

「あんな嘘つくなんて酷い……」
「どっちがよ!!」
「でも東北行くのは本当だよ。叔母さんの方で不幸があって」
「あー、そうだったの……。それは、えっと、お悔やみ申し上げます?」
「無理して変なこと言わなくてもいいから」

 正直、こういうこと言われたらなんて返すべきなのか分からないのよね……。

「多分始業式には間に合わないって伝えたかったの。それと向こうに行く前に一度鈴ちゃんに会ってお話したかったし」

 そっか、そうだったんだ……。千恵が引越すことはない。それが分かって安堵したからか、目からは自分の意志でコントロールできない液体が溢れ出しちゃったじゃないの。そうよ、涙よ! 悪い!?

「あたし、本当に千恵がどこか行っちゃうんじゃないかって思って……」
「ごめんなさい……でも、私だって誕生日祝ってくれるって言ったのに、当日にあんな態度とられて凄いショックだったんだもん……」
「う……」

 それを言われると弱いけど、あのカウンターも酷いっての。

「そんなわけで鈴ちゃんには謝罪と賠償を要求します!」

 追い討ちっ!?
 泣きっ面に蜂!?

 千恵じゃなくて、虐められてるのあたしなんじゃないの!? でも、あたしは謝るためにここまできたんだから謝罪はするわ。します!

「ごめんなさい、あたしが悪かったです……でも賠償って何? コーヒー代なら払ったわよ」
「……あ、それはごめんなさい。後で返すから」

 日本人らしく土下座で謝罪しましたけど何か?
 千恵がにっこりと微笑む。嫌な予感しかしません。助けておかあさん……!

「罰として、お昼休みにお弁当あーんの刑に処す」
「えええええええっ!? 勘弁してください千恵さん!?」
「ダメです」
「そんなっ……」
「私の手作りのお弁当ですよ?」
「えっ、手作り……あ、いや……それでもダメなんだから」

 窓から風と一緒に飛び込んできた桜の花びらが、あたし達の未来を祝福してくれるものだったらいいな。なんてね。
 そんな、4月1日のお話。

 4月の中旬、同じクラスということもあって、ついに逃げ切れなくなったことで例の刑は執行されました。よりにもよって教室の真ん中にある机で。
 あたしがどんだけ恥ずかしかったことかわかる!? それに比べて凄く嬉しそうにあーんしてくる千恵……。この子はあたしが思っていた以上に大胆だわ……。

 あたしとしてはどうせやるのなら、屋上でこっそりとか希望。
 あ、いや、なんでもない……。聞き間違いよ。

 ああ、5月の修学旅行が怖いわね。千恵は一体何を仕出かすのかしら。
 怖いと言いつつもなんだか楽しみで、ちょっとだけ笑みが浮かんでいることをあたしは十分に自覚してますから余計なことは言わないように。

 以上、これにて桜色の季節の話は終わり、閉幕よっ!
元々は3月30日に「そうだ4月1日に何か掲載しましょう!」という思いつきで書いて31日にちょこっと修正を加えたものです。それに加筆修正したものをこちらに投稿してみました。

評価や感想は作者の原動力となります。
読了後の評価にご協力をお願いします。 ⇒評価システムについて

文法・文章評価


物語(ストーリー)評価
※評価するにはログインしてください。
感想を書く場合はログインしてください。
お薦めレビューを書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ