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花の名前
作:桜華蒼


 「たまにはローストビーフでも買ってやれよ」
 哀が米花デパ地下で、ぼんやりと色とりどりの食材を眺めていると、声がかかった。
 振り返らずともわかる聞きなれた声。
「あなたもお使い?」
 目の端に入った袋に哀は聞いた。
「来客用のお菓子だよ」
 思った通りのコナンの姿に
「そう」とだけ、哀が返す。
「わざわざ声かけなくても学校でさっきまでいたじゃない」
「用がなければ、声もかけないのか?」
「私はね」
「灰原、おめーさ」
 とコナンは哀の手を引き、エスカレーター脇の椅子の置かれたところまでくると、哀の肩を押して座らせる。
「なによ?」
 見上げる哀に、コナンはふと笑う。
「用はねー。ただ、会いたいからいるだけだよ」
 唇を寄せ囁くように告げると、一瞬でピンク色に染まる耳。
 顔も真っ赤なんだろうと思いつつ、俯きっぱなしの哀の仕草が可愛くて、そっと髪を梳いた。
「こんなとこで、バカじゃないの」
 そう言いながら、手を払おうとする。
「――ふたりきりならいいわけ?」
 意地悪くコナンが囁いて、哀はコナンの頭を自分に寄せた。
「……きかせて」
 聞いたことのないような甘い言葉。
 コナンの心音は、バクバク早鐘を打ち始める。
「はい」
 ばら。と続けようとしたが、哀はするりと立ち上がり、コナンの脇を通る。
「すごい真っ赤」
 冷めた目つきで言うなり、惣菜コーナーにすたすた歩きだす。
「……お互い様」
 コナンは苦笑して、哀の後を追った。
「ちょっとついてこないでくれる?」
「やだね、灰原の近くにいないと枯れちゃいそうだし」
「……? なんのはなし?」
「花だよ、花」
「意味わからない」
「そうか? 俺はおめーにも咲いてると思うけど」
 END














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