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アゲハの開拓街  作者: 天界
第1章 長いお散歩編
2/25

002 ファンタジーとスキル


 

 一通りアプリの確認も終わり、もう1度スキル辞典を眺める。

 制限時間はもう半分もない。

 じっくりスキル辞典を上から順に眺めるには時間がないが1つ嬉しい発見をしているので大丈夫。

 

 アプリの中に『スキルチェッカー』というものがあって、なんとこのアプリを使うと自分が現在所持しているスキルを確認出来、解除(・・)もできるのだ。

 

 あ、ちなみにスキル辞典でスキルを取得するには『スキルポイント』が必要で初期のスキルポイントは『10』だった。

 試しに『鷹目』を解除してみるとスキルポイントは10に戻っていた。というか解除後に戻ってくるスキルポイントが表示されていたのであんまり迷わなかったわけだけど。

 

 つまりボクはスキルを自由に付け替え出来るということらしい。

 

 スキルの情報が名称からしかわからない現在、これはとても役に立つ。いやスキルの情報がわかるようになってからもとてもとても役に立つ。

 やはりボクはオレTUEEE最強系主人公の道を歩む事が出来るみたいだ。やったね、ふぁんたじー!

 

 ……さてどうやって兎から逃げようかな。

 

 一応ボクだって男だ――今の体は美少女だけど――戦ってあの兎を倒してやろうとかそんな風に考えた……時期もありました。

 ぶっちゃけモグラを角に生やしてグロ動画を見せ付けられたあとでは……ちょっと難しいと思うんだ。

 

 それにスキルを取得するにはスキルポイントが必要だ。

 今の所持スキルポイントは10。これで取得可能なスキルはいっぱいあるけれど、どうやらスキルはLv制であるらしく、当然のようにスキルのLvを上げるにはポイントが必要だ。

 まぁ熟練度上げみたいなのが必要じゃなくてスキルポイントで上げられるのは今の状況ではありがたいようなそうでないような……。

 

 とにかくスキルポイント10では戦うために必要なスキルを実用レベルで取得するのは現実的じゃない気がする。

 もっと制限時間があれば色々試して準備するところなのだけれど……。

 くそぅ制限時間が恨めしい。

 

 というわけでまずは逃げて安全な場所でスキルを吟味、確認する。

 

 逃げるのに最適そうなスキルはいくつかピックアップしてある。

 時間も本格的に残り少ないのでささっとスキルを取得していく。

 

「『疾走』Lv1取得。『体力強化』Lv1取得。

 ……あ、なんか増えてる」

 

 取得するスキルを声に出して確認していきながら次のスキルを取得しようとスクロールさせると、今までなかったはずのスキルが表示されていた。

 ……もしかして前提として取得しておく必要があるスキルがある?

 

 これは本格的にスキルポイントが大変な事になりそうな気がするなぁ。

 

 兎にも角にも『体力強化』Lv1を取得して出てきたスキルは『身体能力強化』だった。

 ボクの心にこう……ビンビン来る素敵なスキル名はもう間違いなく取得するしかないだろう。

 

 ちなみに『体力強化』や『疾走』の取得に必要なスキルポイントは『1』だったのに『身体能力強化』は『2』だった。

 スキルによって必要となるスキルポイントが違うのは流し見したスキル群からわかっていたけど思ったより少ない。

 

 ……ボクが思っているような超人のようになれるスキルではないのだろうか。

 いやまだスキルLvを高くすれば超人になれるってタイプかもしれない。とにかく取得してみればわかることだ。

 

「えいやっ」

 

 希望か絶望か、ちょっとおおげさかもしれないけれどそれくらいの思いで『身体能力強化』を取得した。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 

「いぃやっふー!」

 

 背の高い草原の草達がすごいスピードで後ろに流れていく。

 一角兎――見たまんま命名――だって追いつけない。

 すごいスピードで草原を走りぬけるボクを見つけてもヤツはきょとんと赤い円らな瞳を瞬かせるだけだ。

 

 一角兎以外にもボクの常識にはない姿の生物がちらほら……いや物事は正確に言ったほうがいいよね。

 それはもう大量にいた。びっくりするくらい。いやびっくりした。

 あの生物達が一角兎のように好戦的なのはすぐにボクを追いかけ始めたのでわかった。

 ……ただ走っている人を追いかけるっていう習性があるだけだったかもしれないけれど。

 

 とにかくアイツらはボクに追いつけなかった。

 この事実だけが真実だ。

 

「はぁっはぁっ……ふぅ……」

 

 かなりの距離をすごいスピードで走ったはずなのにほとんど疲れていない。

 上がった息もすぐに元に戻っていく。

 これがスキルの効果。スキルすごい。ファンタジー最高!

 

 今現在取得しているスキルは『疾走』Lv2、『体力強化』Lv1、『身体能力強化』Lv2、『脚力強化』Lv1の4つ。

 『疾走』と『脚力強化』と『身体能力強化』でこのスピードを実現している。

 そして『体力強化』で文字通り体力を強化して持久力を上げている。

 まさに逃げるための構成だ。

 

 驚いたのはやはり『身体能力強化』だろう。

 Lv1でちょっとした運動選手並。Lv2で多分オリンピックで金メダルを取れるレベルの身体能力に。

 『脚力強化』が部分的な一点強化に比べて『身体能力強化』は全身を万遍なく強化するのもポイントだ。

 走るには脚だけではだめだし、草の背が高いので走ると体にぶつかってくる。でも『身体能力強化』のおかげで体が頑丈になっているから、ぶつかっても全然平気なのだ。

 

 ちなみにLv2を取得するのに必要なスキルポイントは3で、Lv1が必須である事から『身体能力強化』Lv2を取得するには合計でスキルポイントが5必要になる。

 さらには前提として『体力強化』が必要だから最低でもスキルポイント6が必要だ。

 それでもそれに見合うだけの効果は十分だと確信している。

 

 でも『体力強化』と『身体能力強化』だけではアイツらから逃げ切るのは難しかっただろう。

 だからこそ『疾走』と『脚力強化』のコンボで徹底的に逃げ足だけを求めた。

 

 『疾走』だけがLv2なのはスキルポイントが足りなかったからだ。

 『脚力強化』とどっちをLv2にするか迷ったけど、とりあえずで『疾走』をLv2にしたが運良く正解だったみたいだ。

 

 周りを見渡してみると高かった草の背がずいぶん低くなっていて、どれもこれも大きな体格をしていたあのファンタジー生物達は見つけられない。

 ここならしばらく安全だろう。

 

 グロ動画を見せ付けられて戦う気力がなくなっていたボクだけど、スキルを実際に取得しその効果のほどを体感して気力が戻ってきている。

 

 今のボクならファンタジー生物とも戦える! ……気がする。いややっぱり接近戦はやめておこう。

 

 そう、この世界は異世界。ファンタジー生物のいるファンタジーな世界。

 スキル辞典には当然『魔法(・・)』もあるのだ。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 ファンタジーの定番。みんなの憧れ。30歳まで童貞を貫けば使える。などなどと色々な言われ方をする魔法だけど、実際にスキルとして取得してみると確かに見事に魔法でした。

 

 ボクの知っている物理法則を完全に無視して起こる現象にドキドキワクワク大興奮。

 

 目の前に広がっているのは草の背がずいぶん低くなったとはいえ、大草原。

 火の魔法なんて使った日にはどこまで延焼するのかわかったものではないので、今回選択したのは『魔法:風』です

 

 いいよね、風。

 氷とか雷とかも捨てがたいけど、パッと見はなかったので風にしました。

 たぶん前提スキルが必要なんだろうね。

 

 あ、それと『魔法:風』を取得した際に流れ込んできた情報でまたもや新発見がありました。

 ボクの種族は『ハイエルフ(・・・・・)』だそうです。

 触って初めてわかったのだけど、耳が尖っていました。今まで髪に隠れてたからまったく気づかなかった。

 走っているときは髪はバサバサと激しく風に靡いていたけど、そんなのわかるわけないものね。

 スマホを鏡代わりにしたときも耳よりも美貌の方に目がいってたわけだし。

 

 というわけでボクは10歳くらいの大変に美しい少女でありながら、ハイエルフというわけなのです。

 

 実は新発見はこれだけではありません。むしろ種族に関しての発見は副産物。

 このハイエルフという種族は種族特性というものが顕著な種族なんだそうな。

 ボクの知っているエルフだと精霊魔法を使えて森に住んでて美形で長耳で弓でスレンダーなんだけど、ハイエルフに関してはちょっと違う。

 

 美形で長耳なのは同じだけど、エルフと違って精霊魔法だけじゃなくて……魔法関連全般(・・・・・・)に関して大きなプラス補正を持つ種族らしい。

 

 ……つまり魔法チートなご様子。

 実際魔法を使ってみたらすごかった。

 

 魔法はイメージが大事で、恥ずかしい中二詠唱的なものは一切いらないんだけど集中が必要な感じ。

 そして魔力を使ってイメージを現実にする。

 今まで扱ったことが無い魔力をどうやって扱っているのか、という質問は息をどうやってしているのか、という質問に似ている気がする。

 それだけ今のボクは魔法を使うために魔力を自然と扱えている。

 これもハイエルフの種族特性によるところが大きいみたいだ。

 息をするくらい自然なことなので意識していなければまったく感じる事ができないものなのだ。

 もちろん意識すれば魔力を感じることはできる。それもすこぶる正確に。これも種族特性のおかげってやつだね。

 

 閑話休題(まぁおいといて)

 

 魔法を発動するためのラインを100とすると、イメージで50まで達成して残りの50を魔力を使って補うといった感じのプロセスを辿る。

 魔力なしのイメージだけで魔法を発動させることはもちろんできないけれど、イメージ0でももちろん発動しない。

 でも適当なイメージを魔力で大半を補うという事は可能なご様子。その場合はどんな魔法になってしまうのかわからないけれど。

 

 大事なのはイメージと魔力。

 具体的で詳細なイメージであればあるほど魔力の消費は少なくて済む。

 まぁボクは魔法関連全般に対して種族補正があるので魔力も他の種族に比べてずっと多いみたいだ。

 試しに撃った魔法でもちょっとだけしか魔力が減らなかった。

 

 で、そのためしに撃った魔法の成果がコレ。

 

 ボクの前、5メートルほど先に直径3メートルはありそうなクレーター(・・・・・)が出来ている。

 

 某忍者漫画の螺旋的なアレをイメージして撃ってみたんだけど、すごい。

 魔力の消費もほんの少しなのにこの威力。

 ……一角兎なんて目じゃないかも。

 

 でもコレ当てたら間違いなくミンチだよね。グロ動画再来です。いやあれよりももっと酷い事になりそう。

 

 想像してちょっと気持ち悪くなった。

 ……うん、螺旋的なアレはとりあえず封印の方向で。

 

 


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