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約5ヶ月振りの短編小説です。少し鈍ってる感がありますが楽しんで頂ければ幸いです。
青空と僕と君
作:鶉


 汗が何筋か、首を伝う。恨めしい程に晴れた青空は容赦なく僕らを照らし出す。

「ラストさんしゅー!」

 横切ったマネージャーはグラウンドに響く声で残りの地獄の回数を叫ぶ。もう汗の量は何筋かという表現では足りない。

「……うぃーっす!」

 ほとんど無い力を振り絞り声を出す。返事が無ければ増える周回、一体誰がそんな制度を作ったのか。今の僕にはそんなことを考えている余裕は無かった。



『青空と僕と君』




 大の字になって芝生に転がる。こういう所は私立高校の良いところだと思う。
 目の前に広がる雲一つない青空を見ているとなんだか吸い込まれそうになる。

「ほい、お疲れ」

 マネージャーこと山本 梢が、ドリンクボトルを僕に手渡す。さらさらなショートカットが風に靡く。
 今の僕にはとてもツラい風景だった。心臓が痛い。

「ホントに疲れたよ」

 とりあえず重たい体を起こし、軽く伸びをする。

「ホラホラ、関東大会出場選手がそんなこと言わないの」

 どういうわけかは知らないけれど、地区大会で長距離の部を優勝してしまった僕。あの日は確かに体は軽かったけど。
 だから本来なら午前中で終わりな部活なのだけど、こうして午後も練習しているわけで。
 ちなみにマネージャーは監督に報告するためのお目付け役らしくてサボるにサボれない今の状況。

「しかしマネージャーも大変だね。せっかくの夏休みに部員の世話なんて」

「へ?ま、まぁね。で、でも監督に頼まれたら断れないしね。あ、タオル取ってくるよ」

 マネージャーは小走りで部室へ駆けていった。ホント、マネージャーは大変だ。日に焼けて顔が赤くなっていた。



 休憩の時間はあっという間に過ぎてしまった。僕はまたぐるぐるとトラックを走る。
 目の前の風景は相も変わらず同じ風景。それでも、その中でも、マネージャーの姿ははっきりと見えた。
 今日はいつもよりペースが早いのかもしれない。だっていつもならこんなに心臓は痛くないのだから。



 陽はだんだんと落ち始める。僕は一体何周したんだろう。体に当たる風は少し涼しくなってきた。

「ラストー!」

「………うぃーっす!」

 グラウンドに響く2つの声とグラウンドに映る2つの影。
 服に染みた汗はもうほとんど乾いてしまっている。
 僕はマネージャーの待つ最後の直線に向かった。



「ふぃー、疲れたー」

「ホラ、しゃきっとする!」

 着替えを済ませた僕らは二人して帰りの準備を始める。

「じゃー部室の鍵返してくるから」

「じゃあ校門で待ってるから」

 一旦別れて僕は職員室へ向かった。階段を一段ずつ上がるのにも体が拒絶をするなか、やっと職員室に着いた。

「しつれーします」

 冷房が涼しい。外に比べたらここは天国だった。

「おー、椎名。終わったのか?」

 顧問の大谷先生はパソコンから顔をこちらに向けた。

「ええ、疲れましたよ」

「ハッハッハ、まだまだ若いんだから頑張れよ」

 鍵を棚に返しながら先生と軽く会話する。職員室には他に誰もいなかった。

「じゃあしつれーします」

「おう、ちゃんとストレッチすんだぞ」

「はい………あ、先生」

「ん?どうした?」

「あんまりマネージャーをこき使わないでやって下さいよ。マネージャーだって忙しいかもしんないんですから」

「いやいや、俺がこき使ってるわけじゃないぞ?」

「………へ?」

「俺は暇なら椎名に付き合ってやってくれって言ったんだから。だって毎日来ないだろ?」

「え、ええ……まぁ」

 僕は少しはぐらかした。だってマネージャーは毎日来ている。

「俺はそんなにスパルタじゃないんだから」

 笑っている先生に挨拶して、僕は職員室を後にした。



「遅いよ!」

「あ、ご、ごめん」

「さ、帰ろ?」

「う、うん」

 そのマネージャーの笑顔は僕の鼓動をまた一つはやくする。
 その小麦色に焼けた肌も、風に靡く短めの髪も、太陽のように明るいその笑顔も、全てが魅力的で。
 そんなマネージャーが僕の為に毎日付き合ってくれる。監督命令じゃなくて自分の意思で。

「和樹君?」

「へ?」

「どうしたの?ぼーっとして」

「い、いや、なんでもないよ」

「そっか。じゃあ早く帰ろ?」

 マネージャーは笑ってまた前を向いて歩き出した。


 僕らの夏休みはまだ始まったばかりだ。


いかがでしたでしょうか?感想、批評、お待ちしております。













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