白銀の月その十四
「他には矢沢永吉さんとか藤井フミヤさんとかね」
「フミヤさんってリーゼントにしたことあったか?」
「大分前にあったぜ」
佐々が坂上に答える。
「あとチェッカーズって結構リーゼントとか多かったからな」
「そうだったのかよ」
「チェッカーズって九州でしょ?」
その九州にルーツを持つ咲の言葉である。
「久留米じゃない、福岡の」
「けれど神奈川でジャケットの撮影してたのよ」
神奈川にルーツを持つ明日夢はあくまでこう主張する。
「横須賀でね」
「そういやおめえの爺さんってそっちの生まれだったな」
「そうだったな」
「そうよ。それでこっちに引っ越してきたんだけれど」
明日夢も自分のルーツははっきりとわかっていた。
「だから紫のスーパーリーゼントがいいのよ」
「パープルハイウェイオブエンジェルかよ」
「湘南爆走族かよ」
野茂も坪本も当然何の漫画か知っていた。
「やっぱり古いよな」
「あっちじゃゾクって嫌われてるんだろ?こっちでもそうだけれどよ」
「正直言って迷惑だったらしいわ」
この辺りはあまり知らない明日夢だった。
「うちのお爺ちゃん元海軍の予科練だけれどなってないって物凄く怒ってるし、今でも」
「予科練ね」
「それはまた」
皆むしろそっちに驚いていた。
「じゃあ特攻隊あがりとかか?」
「まさか」
「特攻隊には入ってなかったらしいけれど」
それはないのだった。
「けれどね。やっぱり凄かったらしいわよ」
「そうだろうな、海軍だからな」
「また凄い爺様なんだな」
「で、そのお爺ちゃん今でもリーゼントなのよ」
ここでまたリーゼントが出て来るのだった。
「もう八十超えてるけれど」
「それ凄過ぎ」
静華は完全に唖然としていた。
「八十過ぎでリーゼントって何なのよ」
「凄いでしょ。私も驚いてるんだけれど」
「驚いて当たり前よ。とにかくあれなのね」
静華は唖然としながらも明日夢に対してまた言うのだった。
「少年のリーゼント好きは番長さんだけじゃないのね」
「そうよ。お爺ちゃんもあるし横須賀もあるし」
かなり奥が深いのだった。
「そういうのがあってよ。ポマードでべったりとね、リーゼントにして」
「ジェルとかムースじゃなくてそれかよ」
「もう完璧に通ね」
「とにかく男はリーゼントよ」
呆れる皆に対して断言するのだった。
「リーゼントこそが最高なのよ」
「それはわかったけれどよ。納得はできないな」
「俺もだ」
「僕も」
男組は皆明日夢に対してかなり呆れた声で返した。
「リーゼントなんてよ。何時の話なんだよ」
「今時って感じがするぜ」
「そうだよね」
「誰かいないかしらね、本当に」
しかし明日夢は腕を組んでふう、と溜息を出しながら述べるのだった。
「リーゼントがばしっと決まった性格が男前の人、いたらお婿さんよ」
「勝手に言ってろ」
「っていうかそんなの自分で作ればいいだろうがよ」
男組は最早完全に匙を投げていた。
「相手をそういうふうにしてな」
「リーゼントでもスーパーリーゼントでも何でもな」
「そうね。それもいいわね」
しかも結構それに乗る明日夢だった。
「彼氏をそういうふうに育てていくのも」
女版光源氏にもなろうとしていた。何はともあれそんな話をしている間にもジェットコースターは動いている。何回転もし急行かも急上昇もしスクリューにもなり何度も派手な動きで飛び回るように遊園地の中を駆け巡ってから。ようやくゴールに辿り着いたのだった。
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