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その吹く風その十六
「それよくなるんだったらそれで越したことはないでしょ」
「そういうものかね」
「そうよ。話がわかったらね」
「規則正しい生活かよ」
「それにはまず早寝早起き」
 話はそれからであった。
「それが第一歩だからよ」
「わかったら皆夏休みはしっかりすること」
 江夏先生は両手をそれぞれ腰の横に当てて胸を張って皆に告げた。
「じゃあ楽しい夏休みを過ごしなさい。いいわね」
「とりあえずわかりました」
「特撮でも観るか」
 こうして何だかんだで夏休みの注意は終わった。二人の先生はその話が終わるとすぐに教室から出た。そうして職員室に戻るとそれぞれの席に座って麦茶を飲みながら話をするのだった。
「この夏は予定あるの?」
「主人と」
 田淵先生はすぐに江夏先生の問いに言葉を返した。その手には麦茶がある。
「海に行こうかって話してます」
「こっちは山よ」
 江夏先生も麦茶を飲みながら言ってきた。
「山に行こうかって主人とね」
「そうなんですか」
「海に山ね」
 江夏先生はそれぞれの行く先を聞くとそのうえで目を上にして考えに入った。
「やっぱり夏はそれよね」
「そうですよね。涼しくなりますからね」
「夏は家にいてもクーラー使うだけですからね」
 困った顔で江夏先生に話す。
「学校にいても」
「ええ。こうして麦茶ばかり飲んで」
「食べるのはお素麺とかスイカとか」
 まさに夏であった。
「そういうのばかりですからね」
「ええ。困るのよね」
 実際にアイスキャンデーを口に咥えながら困った顔を見せる江夏先生だった。
「何かとね」
「困った季節ですね」
「高校野球があるのはいいけれど」
 ここで職員室のテレビを観る。今は何もつけてはいない。十年は使っているような結構旧式のテレビである。それが置かれていた。
「それでも夏はね」
「困ったものですよ」
「おまけに悪ガキ共は何するかわからないし」
 この問題もあった。
「気楽なのは生徒だけね、夏って」
「釘刺したけれどどうでしょうか」
 田淵先生は今度は先程のホームルームの話をした。
「あれで大丈夫でしょうか」
「さあ」
 しかし江夏先生の返事はこんなものだった。
「少なくとも絶対に飲んだくれるわね、全員」
「そうですよね、やっぱり」
「ビールとフルーツ酒の美味しい季節よ」
 やはりこれも夏ならではであった。
「絶対に飲むわね」
「そうですね。それはやっぱり」
「飲まなかった方が驚きよ」
 こうまで言う。
「あの悪ガキ共がね」
「お酒はそうですか」
「ただ。お酒だけね」
 しかし江夏先生はこんなことも言うのだった。
「あの子達は。やるのはね」
「煙草とかシンナーはないですか」
「薬もね」
 そういうのはないというのだった。確信した言葉であった。
「そういうのは絶対にないわね」
「ですね。私もそれは考えられないです」
 田淵先生も少し考えてから述べた。
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