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序曲その十一
「部屋は何処?」
「セガにする?」
「やっぱり。オーソドックスに行くならそうね」
「オーソドックスかしら」
 明日夢はセガがオーソドックスという言葉にはいささか懐疑的なようであった。
「セガって」
「まあそうじゃないの?」
「私はそう思うけれど」
 静華と奈々瀬はこう述べる。
「セガの機能も好きだし」
「声だって変えられるしね」
「うちの機種全部声変えられるけれどね」
 明日夢は抜け目なく宣伝もする。
「実際のところね」
「じゃあやっぱりセガね」
「そう、それね」
「そういえば専務さん今どうしてるのかしらね」
 明日夢は皆がセガに決めかけているこの場でぽつりと語る。
「常務さんになったのは知ってるけれど」
「それって降格?」
 未晴は明日夢のその言葉を聞き逃してはいなかった。
「専務さんから常務さんって」
「まああの時のセガはね」
 恵美もこのことは知っているようだった。
「苦しいしね。まあとにかくセガよね」
「そう、それ」
 茜が恵美に応えた。
「それで行きましょう」
「じゃあ決まりね。明日夢」
「わかったわ。じゃあ機種はセガだから」
 部屋も結局は彼女が決めていた。意外と細かいし気も利いている。
「部屋は。はいここ」
「ここね」
「そこでいいわよね」
「ええ」
 未晴が明日夢の言葉に返事をする。
「じゃあそこで御願いね」
「そういうことね。じゃあドリンク用意しておくから」
 ドリンクも明日夢の方で手配する。実に手馴れたものである。
「先に部屋で待っていて」
「わかったわ。それじゃあ」
 皆明日夢の言葉に頷きその部屋に向かった。だが恵美だけはカウンターに残った。そうしてカウンターに肘をかけて微笑みそのうえで明日夢にそっと囁くのだった。
「いい感じね」
「そうね」
 明日夢はにこりと笑って恵美の言葉に応えた。
「東中と西中って結構ライバル意識あるけれどね」
「高校に入れば同じみたいね」
「そうね。ただ」
「ただ?何かあるの?」
「あの竹林って娘だけれど」
 明日夢が言うのは彼女のことだった。
「あの面々の中じゃかなり大人しいわね」
「そうね、確かに」
 明日夢のその言葉に真剣な顔で頷く恵美だった。
「優しいけれど何か」
「何か?」
「芯が脆そうね」
 今度は怪訝な顔になっていた。
「どうもね」
「芯が弱いね」
「西中のメンバーは気付いているかしら」
「気付いてるんじゃないの?」
 明日夢もまた真剣な顔になっていた。その真剣な顔で恵美に語る、
「連中が一番長い間一緒にいるんだしね」
「そうね。優しいけれど脆い」
 恵美はそこをまた指摘する。
「そこね。そこから何かなければいいけれど」
「何か」
「今のクラスじゃ問題ないかしら」
 しかしふとこうも思う恵美であった。
「そんなに悪い面々はいないみたいだしね」
「癖の強い面子ばかりだけれどね」
 明日夢はここでくすりと笑ってみせる。
「どうにもこうにもね」
「それは私達だって同じよ」
 カウンターに肘をついた明日夢に述べる。
「多分かなり癖が強いわよ」
「それもそうかな。じゃあ飲み物用意するから」
「ええ」
「恵美もあれ?葡萄の飲み物?」
 話がそこに戻った。
「皆と同じで」
「ええ、それで御願い」
 微笑んで明日夢に答えるのであった。
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