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第七話 九階その四
「ユダヤ人のあれだよな」
「そうだよ。ユダヤ教のね」
「そうなのかよ。それのか」
「そうだよ。元々キリスト教はユダヤ教がもとじゃない」
「ああ」
 これは流石に知っていた。
「そうだったな。旧約聖書と新約聖書だろ?」
「そうだよ。天使は旧約聖書にも出て来るから」
「どっちにもか」
「だから天使の話にも出て来るんだろうね」
 眼鏡はこう予想を述べた。
「カバラの話とも関係があるし」
「あるのかよ」
「うん。ただね」
 眼鏡はここで首を傾げてきた。
「カバラはねえ。ちょっと」
「ちょっと。何だ?」
「かなり難しいよ」
 こう金髪に説明してきた。
「一見じゃわからない位ね」
「そうみたいだな。何だこりゃ」
 金髪は牧村が読んでいるその本にある説明やイラストを見て目を顰めさせた。そこには何か複雑な数字の配列があり何かの陣のようになっていた。彼はそれを見て目を顰めさせているのだ。やはり何が何なのか全くわからない。少なくとも彼にとってはそうだった。
「これがカバラかよ」
「そう、これがなんだ」
 眼鏡はまた彼に対して答えた。
「カバラなんだよ」
「数字の陣か?」
「ううん、色々な意味があるらしいんだ」
 眼鏡もここで首を傾げてきた。
「どうやらね」
「どうやらなって御前もよくわからねえのか?」
「うん」 
 金髪の問いにこくりと頷いた。
「そうなんだよ。実はね」
「何だよ、わかってると思ったのによ」
「だからさ。難しいんだよ」
 眼鏡の奥のその瞳を困惑させたものにしていた。
「カバラはね」
「だからわからねえのか」
「わかっている人少ないと思うよ」
 少し言い訳めいた言葉になっていた。
「正直なところね」
「そうなのか」
「確か理解している人は」
 眼鏡は今度は考える目になって述べた。
「あの人がそうだったかな」
「誰だよ、あの人って」
「ゲッペルス」
 ある意味不吉な名前が出て来た。
「ポール=ヨゼフ=ゲッペルスね」
「それナチスの宣伝相じゃねえのか?」
「うん、そうだよ」
 やはりそうであった。
「ヒトラーの知恵袋だったね」
「あのおっさんこんなもん理解していたのかよ」
「知能指数はヒトラーより高かったそうだしね」 
 ナチス=ドイツの頭脳とまで呼ばれていた。ヒトラーは怪物と言ってもいい男だったが彼はそのヒトラーよりも頭脳では上と言われていたのだ。
「それでね。理解していたんだって」
「すげえ奴が理解していたんだな」
「それで牧村君」
 眼鏡は今度は牧村に対して尋ねてきた。
「どうなの?わかる?」
「いや」
 彼もその問いに首を横に振った。
「わからない。俺にもな」
「そうだろうね。わからなくて当然だよ」
 だが眼鏡はここで彼に笑って言ってきた。
「それはね」
「当然なのか」
「カバラはね。特別なんだよ」
 今度はこう述べてきた。
「もうね。かなりね」
「かなりか」
「ユダヤ教の秘術って言われているんだよ」
 またこのことが話される。
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