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第四十八話 妖神その十二
「それじゃあ代わる?」
「それでいいか」
「いいわ。じゃあこれで終わったら」
「宿題か」
「そんなのとっくに終わったわよ」
 素っ気無く返す。何でもないといった顔でだ。
「ゲームやる前にね」
「そうか、終わったか」
「面倒なことはまず終わらせて」
「それからゆっくりとだな」
「そう、ゲームしてるの」
 これが未久のやり方だった。彼女は面倒なことは先に済ませてそれから自分の楽しみを後でゆっくりと行うタイプなのである。
 それを今もしたというのであった。そうしてだった。
「じゃあね」
「ああ」
「はい、セーブしたわ」
 今そうしたというのである。
「これでお兄ちゃんがね」
「させてもらうか」
「私こっちの部屋にいていい?」
「別にいいがな」
「有り難う。じゃあお菓子食べるね」
 早速紙袋から何かを出してきた。それはドーナツだった。黒くそしてチョコレートをかけてコーティングしてある、そうしたドーナツだった。
「お兄ちゃんも食べる?」
「そうだな。それじゃあな」
「エンゼルショコラもあるけれど」
「それもあるわ」
 あるというのだった。
「他にも色々とあるけれど」
「色々とか」
「ミスタードーナツでね。お母さんに買ってもらったの」
「俺と御前に、か」
「そうよ。じゃあお兄ちゃんエンゼルショコラね」
「他にもあるか」
「お兄ちゃん半分、私半分」
 数の話であった。
「お母さんそう言ったから」
「わかった。じゃあ俺もだな」
「そうよ。エンゼルショコラとね」
「食べるか。それじゃあな」
「後でよね」
 ここで未久はこう彼に言ってきた。
「そうよね。ドーナツ食べるのは」
「そうさせてもらう」
「今はゲームに熱中するのね」
「専念して楽しませてもらう」
 そうだというのであった。
「それではな」
「私はドーナツ食べるから」
「それはいいが」
「わかってるわ。クズは落とさないようにってね」
「蟻が出て来る」
 これが理由だった。クズを落とさない理由だった。
「だからだ」
「そういうところ厳しいわね」
「蟻ならまだいい」
「ゴキブリね」
「あれが出たら終わりだ」
 まさに死の宣告そのものの言葉だった。
「鼠もだがな」
「食べ物を扱うとそうよね」
「そうだ。だからだ」
「うん、わかってるから」
「ならいいがな」
「お兄ちゃんも何だかんだで」
 未久の顔が微笑みになる。ドーナツを食べながらゲームをはじめた兄に言ってみせる。見れば食べているのはそのチョコレートのドーナツである。
「あれよね」
「あれ、か」
「食べ物を扱うお店に入られるようになってきてるね」
 こう兄に話すのだった。
「そういうところ気にするなんて」
「普通だと思うが」
「最近そうでもないよ」
「そういう人間も増えているか」
「うん、女の子でもいるしね」
「それは信じられないな」
「けれど本当よ」
 ドーナツを食べながら兄にまた話す。
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