第三十七話 光明その十九
「明日は鶴橋ね」
「わかった。それではな」
そしてそれに頷く彼だった。
「明日の昼にだ」
「じゃあその前に」
「その前に?」
「宿題とお腹空かせる為に走ったりしないとね」
こんなことを言うのだった。
「本当は水泳が一番いいけれど」
「走るのか」
「あと柔軟もね。身体って少し動かしていないとすぐにカチコチになるから」
「それはいいことだな」
「そうよね。これでもトレーニングは欠かしていないのよ」
少し真面目な顔になっての言葉だった。
「ちゃんとね」
「それはか」
「ちゃんとしているのよ」
また言うのだった。
「一応ね」
「一応か」
「部活に追いつけるだけっていうかレギュラーだし」
「レギュラーだったのか」
「そうよ、これでもね」
こう兄に話す。
「ちゃんとしないとすぐに身体が硬くなってそれだけで駄目になるから」
「体操も難しいな」
「そうよ、難しいのよ」
こう話すのだった。
「これがね。テニスやフェシングと同じよ」
「同じか」
「少ししてないと錆びるのは同じよ。常にしていないとね」
「そういうものか」
「そして少しでも油断すると」
未久のその顔が厳しいものになる。少しばかりではあるが。
「怪我するから」
「体操は特にだな」
「背が伸びないのはいいけれどね」
「それはいいのか」
「私小柄でいいから」
それでいいというのである。
「背のことはね」
「小柄でもか」
「だって。小柄でももてるし」
その理由はこれだった。
「だからいいのよ」
「小柄でもか」
「女の子はそれでもいいのよ」
そうだというのである。
「小柄でもね」
「男の人はそうじゃないみたいだけれど」
「背はよく言われるな」
「お兄ちゃんは高いからその分は大丈夫ね」
「低いと言われたことはない」
実際そうなのだという。
「それはな」
「そうよね。まあ私も男の子だったら背は欲しかったわ」
欲しいというのである。
「その場合はね」
「男ならか」
「あくまで男の子だったらよ」
割り切っていた。そうしてであった。
食べ終えたところでだ。また話す二人だった。
未久は笹団子を食べていた。それを食べながらの話だった。
「風呂だが」
「お風呂ね」
「入れ」
一言だった。
「いいな」
「お兄ちゃんはもう入ったの」
「最後に入る」
そうするというのである。
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