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第三十七話 光明その九
「これからは」
「ふうん、ひょっとしてね」
「ひょっとしてか」
「お爺さんとお婆さんって武道家だったわよね」
「そうだが」
「じゃあそっちかしら」
 こう言うのであった。
「そっちに目覚めたの?」
「武道はしていない」
 素振りを少しする程度だ。牧村はその程度ではしているとは考えない。この考えのまま今は若奈に対して話しているのである。
「それはだ。だが」
「何をしてるんだったっけ」
「禅をしている」
 これをだというのだ。
「座禅をだ」
「ああ、それが新しいものなのね」
「座禅の中にある」
 牧村はまた言った。
「その新たなものがだ」
「座禅って凄いって聞いてたけれど」
 若奈はここで考える顔になった。そのうえでの言葉だった。
「それはしないからね」
「座禅はしないか」
「宗教違うしね。お寺は行くけれどね」
「宗教は確か」
「天理教だから。ほら、親戚に天理教の教会の人いるって言ったわよね」
 このことも牧村に放す。
「八条分教会ね」
「教会か」
「天理教はお寺とか神社じゃなくて教会だから」
「キリスト教みたいだな」
「名前だけで実際は全然違うわよ」
 これは言葉以上のものがあった。天理教の教会は完全な和風である。しかしキリスト教のそれはそこから欧州がはじまっている。やはり何から何まで全く違う。
「実際にはね」
「名前だけなのか」
「見たことあるわよね、天理教の教会」
「あの瓦の屋根のだな」
「そう、それよ」
 まさにそれだというのだ。
「その屋根の建物よ」
「ああした建物か」
「天理市はもっと凄いから」
 その街の話もするのだった。
「行ったことは」
「あったか」
 牧村の言葉がここでは少しあやふやなものになった。
「それは」
「わからないのね」
「一度は行ったか」
「私は結構行ってるのよ。親戚の娘もいるし」
「その話は前にしていたな」
「そうでしょ。叔母さんと話してたわよね」
 このこともまた話すのだった。
「それ聞いてたわよね」
「それは覚えている」
「だったらいいわ。それじゃあね」
「また走るか」
「ええ、休憩は終わりよ」
 若奈はここで時計を見る。そのうえでの言葉だった。
「再会しましょう」
「それではな」
 トレーニングの合間にこんな話もしていた。そしてその日のトレーニングが終わり若奈を店まで送った。彼女と別れサイドカーで帰る時にだ。その横にだ。
 ハーレーが来た。そしてそれに乗っていたのはだ。あの彼であった。
「やあ、また来たよ」
 まずは目玉が出て来て彼に声をかける。
「元気そうだね」
「貴様等か」
「うん、そうだよ」
 笑顔で返してきた。目玉だけなのでわかりにくいがその目の色がそうなっていた。
「そうなんだ、僕達がなんだ」
「何の用だ」
 牧村はその彼に対して冷静に返した。
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