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第五話 襲来その十四
「君のサイドカーの能力ってやつをね」
「どうなる?」
 彼は後ろにサイドカーの爆音と波を切る音を聞きながら烏男を見据えていた。
「これから。ただ水の上を進むだけではこの男に勝つことはできないが」
「まあ。とにかく今はね」
 烏男はここでその翼を大きく羽ばたかせた。
「僕も攻めさせてもらうよ。いつも通りね」
「来い」
 髑髏天使は無意識のうちに願った。
「俺の場所に。来い」
 こう願った。するとそれを受けてか。
「おやっ!?」
「!?まさか」
 烏男はそれを見ていた。髑髏天使は後ろで聞いている。しかしその音は確かに彼の耳に届いていた。爆音はそのままに何かが舞った音を。
「来るというのか」
「飛ぶなんてね」
 流石の烏男もこれには驚いているようだった。
「まさかサイドカーが」
「そうか。それならば」
 髑髏天使は己が何をするべきかわかっていた。そしてそれを選んだ。
「こうする。ここでな」
 軽く跳躍して空中で反転する。そして今まで彼がいたその場所に飛んで来たサイドカーの操縦席に乗る。そのうえで空に舞う烏男に襲い掛かる。
「そうか、こういうことか」
 ここでようやく彼は博士の言葉の意味がわかったのだった。
「空を飛ぶ相手には同じく空を飛ぶ」
「相手の土俵にあがるってことだね」
「どうやらそうだな」
 今そのことを完全に理解した髑髏天使だった。
「それでか。しかしこれなら」
「悪いけれどね。僕だってね」
 迫り来るサイドカーを前にしても烏男は怯むところがなかった。
「力を手に入れたいからね。神の力を」
「闘うのか」
「そうだよ」
 再び弓矢を構えつつ迫り来る髑髏天使と対峙する。
「これでね。決まるね」
「決める・・・・・・」
 二人はそれぞれ言った。
「ここで。この闘いを」
「終わらせるよ」
「受けろ」
 烏男は今まさに矢を放とうとする。髑髏天使も剣を右斜め上から左斜め下に振るう。
「これで。終わらせる」
「くっ、早い!?」
 サイドカーの飛翔は烏男が思っていたよりも早かった。そう、それは彼が弓矢を放つよりもまだ。そして髑髏天使の剣もまた実に早いものだった。
 サイドカーが彼に体当たりする。それと共に剣が一閃する。空中にさらに高く吹き飛ばされた烏男はそのまま何処かへと消えるかと思われた。しかし彼は空中で留まるのだった。
「生きている!?」
 攻撃を終えそのまま河の上に着水した髑髏天使はサイドカーを反転させつつ空中の烏男を見て言う。
「まさかと思うが」
「いや、もう無理だよ」 
 聞けば烏男の声は苦悶で歪んでいた。顔こそ何とかこれまでと同じ様に保っているがそれでも胸に深い傷を受けていた。明らかに致命傷だった。
「流石にね。これはね」
「それでもまだ飛ぶというのか」
「ずっと決めていたんだ」
 声を無理して笑わせての言葉だった。
「ずっとね。最後の場所はね」
「最後の場所は」
「空だってね」
 笑ってこう言うのであった。
「決めていたからね。だから」
「今飛んでいるのか」
「そうだよ。見事だったよ」
 最後も髑髏天使を褒め称えてきた。
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