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第三十四話 祖父その一
                  髑髏天使
               第三十四話  祖父
「ふうん、あいつ死んだんだ」
「もう知っているな」
「まあね」
 大阪への道をサイドカーで進む。その横には未久がいる。二人で進みながら言うのだった。
「全校集会でも言われてたし」
「あいつは死んだ」
「死んでよかったわよ」
 心からそのことを喜んでいることがわかる言葉だった。
「本当にね」
「よかったか」
「そうよ。しょっちゅう女の子にセクハラはするし」
 そうした人間が罰されにくいのも教師の世界である。
「おまけに威張り散らして。死んで何よりよ」
「俺達の頃と同じだな」
 牧村は妹の話を聞いてヘルメットの中で応えた。
「それは」
「あいつあの頃から皆に嫌われていたの」
「好かれる筈がない」
 牧村は一言だった。
「ああした人間はだ」
「そうよね。もう皆全校集会の後万歳したわよ」
「万歳か」
「もう三唱どころじゃなくてね」
 それ以上だというのだ。
「十唱も二十唱もね」
「死んで喜ばれる人間か」
「もうこれでセクハラも暴力もないのね」
 とかく素行の悪い教師だったことがわかる。
「よかったわよ。そうそう」
「何だ」
「あいつの腰巾着だった剣道部の太谷って奴がいたのよ」
「大谷か」
「そう、大谷直久っていうんだけれどね」
 その名前を出すのだった。
「もう剣道部で後輩いじめたり同級生に底意地悪いことしたりしている最低な奴なのよ。そいつももう終わりだって言われてるのよ」
「腰巾着は主がいなくなれば滅びる」
 牧村の今の言葉は冷たい。夏であってもだ。
「そういうことだな」
「そうなの。もう皆からシカトされるようになってね」
「余程嫌われていたのだな、そいつは」
「学校一の嫌われ者よ。底意地は悪いし欲張りだし平気で嘘つくし」
 未久は忌々しげに話す。
「もうそいつも終わりね」
「学校もよくなるのだな」
「よくなるわ。清々するわ」
 こうまで言う程だった。
「その大谷もいなくなればいいのにね」
「そういう状況か、今は」
「ええ、それでお兄ちゃん」
「学校はよくなったか」
「もう一変よ」
 そこまでだというのだ。
「空気が奇麗になった感じよ」
「俺がいた時からだった」
 牧村も言う。
「あいつがいるせいでな」
「学校の雰囲気が悪かったのね」
「一人の暴力教師が全てを悪くする」
 学校ではよくあることである。
「よく今まで問題にならなかったものだ」
「そうよね、本当にね」
「それが学校なのか」
「学校っておかしなことも多いのね」
「多いな。確かにな」
「私実はね」
 未久は自分の話もしてきた。
「学校の先生になりたいと思ったことがあったのよ」
「止めておけ」
 兄の返答は一言だった。
「おかしな人間が異常に多い世界だ」
「だから止めたの」
 まさにそれが理由だというのである。
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