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第三十三話 闘争その十三
「だからいいと思うよ」
「つまり反面教師ね」
「それでね」
「そうか。反面教師か」
 牧村もここでわかったのだった。要するにその教師はそれだったのである。反面教師であったのだ。
「それだったのだな」
「そういうことだよね、だからさ」
「役には立ったんじゃないかな」
「実際に暴力を振るわれた生徒は可哀想だけれど」
 被害者も実際にいる。これは事実ではあった。
「そんな人間もいるんだなって思うけれどね」
「昔の軍隊でもいなかったんじゃないかなあ」
「ちょっとそこまで酷いのはいなかったね」
「ああ、やっぱり」
 こういう人間がいるという意味において今の教師の世界は戦前の軍より遥かに酷いものであると言えた。少なくとも批判する資格のないレベルではある。
「いなかったんだ、流石に」
「そこまでとんでもない人間は」
「確かに暴力はあったよ」
 それは否定できなかった。
「兵学校名物鉄拳制裁とかね」
「だよねえ、あったね」
「陸軍も凄かったしね」
 東南アジア等に進出した時に現地民を困惑させたことがこれであった。日本軍は確かに規律正しく軍律も厳正だ。左翼の学者や運動家達が言うような野蛮で残虐な存在では決してなかった。しかしそれでも問題があったことは事実である。ただし左翼勢力の言うような問題ではなかったのだ。
「もうね。すぐ殴ったからね」
「相手が日本人でなくてもそうでなくてもね」
「殴ったからね」
「しかも本気でね」
 それが日本軍であった。
「それでも。ちゃんとわかることはわかってたからね」
「中学生に突きって禁止されてるよね」
「それする教師ってやっぱりないよね」
「有り得ないから」
 そもそもそれ自体が異常であった。
「それもリンチ技だよね、シャベル突き?」
「下から上に思いきり突き上げる」
「それもう技じゃないから」
「リンチだから」
 そうした技も存在する。しかしそれを試合で使えば間違いなく警告される。それで済めばいいが退場になってもおかしくはない。そんな技だ。
「それ生徒にするとかね」
「もう日本軍でもなかったから」
「そんな人間にならなかったというだけでね」
「大きいと思うよ」
 まさにそうだというのだった。
「だからさ。牧村さんはそんな屑というか人間以下の存在にはならないで」
「人間になればいいよ」
「何なら妖怪になる?」
 今度言ったのは豆腐小僧だった。
「よかったらだけれど」
「あっ、いいねそれ」
「牧村さんだったら歓迎するよ」
「お化けの世界は楽しいよ」
 話はかなり明るく楽しいものになっていた。
「お化けは死なない」
「試験も何にもない」
「ほほほ、そうじゃなあ」
 博士も妖怪達の今の言葉に顔を崩す。
「お化けの世界は人間の世界とは同じ世界にありながら別の世界じゃからな」
「だからいいんだよ」
「楽しいんだよね」
「どう?よかったら」
「妖怪になって僕達と一緒に過ごさない?」
「明るく楽しくね」
「それも悪くはないな」
 牧村も妖怪達の言葉と心を受けて呟いた。
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