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第五話 襲来その五
「ふむ、空からか」
「そうだ」
 牧村は博士の研究室にいた。そこで烏男のことを話している。博士は己の机に座しつつ落ち着いて彼の話を聞いている。話を聞きながら考える顔を見せている。
「空から来た。そいつはな」
「不思議ではない」
 博士はその考える顔で答えた。
「空から来るのもな」
「そうなのか」
「おいどんがそうばい」
 ここで一反木綿が出て来た。宙をひらひらと舞いながら牧村に言う。牧村は部屋の壁に寄り添うようにして椅子に座ってそのうえで話しているのだ。彼の周りにも博士の周りにも相変わらず妖怪達が集まっている。
「おいどんこうやって空飛ぶばい。だから」
「魔物が空を飛ぶことも充分あるか」
「その通りじゃ。これでわかるな」
「ああ」
 牧村は一反木綿を見つつ答える。
「実例を見ればな。確かにな」
「うむ。実はのう」
 博士はここで言った。
「サイドカーじゃが」
「あれか」
「そういうこともあろうかと改造をしてあった」
「あの時にか?」
「そうじゃ。まあそれはじゃ」
 博士は牧村に対してさらに述べる。
「闘ってからわかる。すぐにな」
「すぐにか」
「伊達に改造したわけではないぞ」
 楽しそうな笑みを牧村に向けてきている。
「ただパワーアップさせたりスピードをあげたり脳波だけでも動くようにはしておらぬ」
「他にもあったのか」
「そうじゃ。だからこそ傑作になった」
「そうだったのか」
「それにじゃ」
 博士はさらに牧村に対して話す。
「御主自身もそれだけではあるまい」
「俺が?」
「天使じゃな」
 博士が今度言うのはこのことだった。
「御主は。そうじゃな」
「今更何を」
 言っているのだ、はっきりと博士に返した。
「俺は髑髏天使だ。それはもう」
「そこじゃ。天使じゃ」
 博士は牧村を指差すようにしてまた話してみせる。
「天使じゃろ。そこにあるのじゃよ」
「そこにあるだと」
「今また文献を読んでおるのじゃが」
 博士の研究は続行中だった。相変わらず世界中から怪しいまでの不可思議なルートを使って本を集めている。そのうえで髑髏天使のことも調べているのである。
「天使には九つの階級がある」
「九つの!?」
「これは知らなかったか」
「天使にはそういうものがあったのか」
 牧村はこのことを知らなかった。天使はただ天使であるとだけ思っていたのだ。だがそれは違っていた。このこともあらためて知るのだった。
「そうだったのか」
「そうじゃよ。そしてじゃ」
「そして?」
「今は天使じゃな」
 またこのことを言う。
「そのすぐ上は大天使じゃ」
「大天使か」
「聞いたことはないようじゃな」
 要領を得ない顔を見せている牧村の顔を見ての言葉だった。
「どうやら」
「ああ、天使だけじゃなかったか」
「天使も天使でかなり複雑な社会なのじゃよ」
「神の前で平等ではなかったのだったな」
 これはキリスト教の世界の基本である。ただしここでは欧州独自の階級社会が大きく関係してくる。欧州から階級を抜いてはどうにもならないところがある。
「天使の世界でも」
「欧州じゃぞ」
 博士もこのことを言う。
「欧州は日本と違う」
「それはわかっているがな」
「つまりじゃ。階級がかなりのものでな」
「天使の世界でもそれは同じか」
「そういうことじゃ。だから九つも階級がある」
 自然とそう育成されてきたのである。キリスト教が欧州にあればその思想や社会により形成されていくものだ。それはここでも同じなのだ。
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