第四話 改造その十
「ここで倒してやる」
「ならば。参ろう」
髑髏天使の言葉に応えると彼も跳んだのだった。しかし彼はそのまま直接髑髏天使のところに来たのではなかった。髑髏天使のサイドカーと並行して走っていた己のバイクに跳び乗ったのだった。サイドカーはそのまま正面に走って行く。蟷螂人はそれをよそにバイクを反転させて髑髏天使に対峙したのだった。
「こうしてな」
「俺のサイドカーは乗っ取らないのか」
「乗り物は慣れたものに限る」
これが蟷螂人の言葉だった。
「だからこそだ」
「そうか。そういうことか」
「その通りだ。さて」
一旦止めていたバイクのアクセルをふかしてきた。
「行くぞ」
「来い」
「だが。このままでは面白くない」
しかし何故かここで蟷螂人は動こうとしなかったのだった。
「このままではな。貴様を倒しても何にもならない」
「どういうことだ」
「俺は乗り物に乗っている」
彼はこう髑髏天使に答えた。
「しかし貴様はだ」
「俺は?」
「サイドカーに乗ってはいない。それでは面白くとも何ともない」
「サイドカーに乗れということか」
「如何にも」
彼が言うのはまさにこのことだった。
「乗って来い。勝負はこれからだ」
「ふん。正々堂々というつもりか」
「そういうわけでもない」
今の髑髏天使の言葉は否定するのだった。
「俺はただ楽しみたいだけだ、貴様を倒すことをな」
「バイクとバイクの闘いでだな」
「その通りだ。見たところ」
サイドカーは遥か彼方に行ってしまっていた。後ろを振り向いた蟷螂人が見たのは主がないまま駆けて行くサイドカーだ。それはそのまま何処までも行ってしまいそうだ。
「早く乗りに行った方がいいな。その間待とう」
「わかった。それではな」
蟷螂人の言葉を受けてそのサイドカーに向かおうとする。しかしその時だった。
突如として主のいないサイドカーが反転した。そしてそのまま一直線に髑髏天使の所に向かって来たのだった。
「何っ!?動いただと」
「これは」
蟷螂人も髑髏天使もそれを見て思わず声をあげた。
「まさか。主がいないというのにか」
「乗ろうと思っただけだったが」
二人はそれぞれだが同時にいぶかしんだ。
「己だけで走るというのか」
「まさか」
ここで髑髏天使は思った。
「俺の念で。主がいなくとも走ることができるようにしたというのか」
博士がである。闘ってからの楽しみというのはこのことだったのか、彼はあらためてこう思わずにはいられなかった。その己の力だけで走るサイドカーを見て。
「この様なことをしているとはな」
「面白いことだ」
蟷螂人は冷静さを取り戻し声にも不敵な笑みを戻していた。
「己で動いて戻って来るとはな。それでは」
「ああ」
サイドカーは蟷螂人の横を通り過ぎた。そうして髑髏天使の前でまた反転して止まった。髑髏天使はそのサイドカーに再び乗った。
「待ちに待った再戦だな」
「こうでなくては面白くはない」
バイクの上の蟷螂人は笑って告げた。
「互いに同じ条件で闘わなければな」
「そしてどちらが勝つか、か」
「如何にも」
今度はアクセルを本格的にふかしてきた。
「行くぞ、今度こそ確実にな」
「勝つのは俺だ」
サイドカーの上で剣を再び手にしていた。
「それは言っておく」
「その言葉、覚えておく」
蟷螂人は今度は右手だけを燈篭にしていた。一旦人間の手に戻していたがそれを右だけ蟷螂にさせたのである。またあの禍々しい刃であった。
「貴様の首を見る度に思い出してやろうぞ」
「俺の首をか」
「この蟷螂で刈り取る」
断言であった。
「次でな」
「できるとは思わないがな」
「自信か」
「自信、違うな」
そうではないと言う。
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