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第四話 改造その八
「今一本と言ったな」
「ええ、そうだけれど」
「五日前に一ダースセットを買った筈だが」
「食べればなくなるわよ」
「五日前だぞ」
 目だけを顰めさせて妹に問う。
「それでもう一本か」
「そう、一本よ」
「俺はまだ一本しか食べていない」
 その顰めさせた目で言うのだった。
「それで残り僅か一本か」
「また明日買えばいいじゃない」
「御前食べ過ぎだ」
 素振りをそのままに妹にその目を向けての言葉である。
「一日二本も。幾ら何でも」
「いいじゃない、別に」
 しかし妹の返答は実にさらりとしたものだった。悪い意味で。
「好きなんだから。それにお兄ちゃんずっとスイカ食べてたじゃない」
「スイカはまた特別だ」
 こう妹に反論する。
「あれはな」
「あたしスイカあまり食べなかったし」
「それの分か」
「そういうこと。だったらいいわよね」
「ううむ」
「まあとにかくね」
 兄が考え込んだところを見てすかさず言葉を言い加えてきた。
「最後の一本は置いておくからね」
「そうか」
「食べるわよね」
「ああ」
 このことには異論はなかった。確かに食べるつもりだった。
「頂く。では食べるなよ」
「わかったわ。じゃあこれでね」
「?何処か行くのか」
「自分の部屋」
 全て舐め終えたところで兄に答えた。
「今から勉強しないと」
「ああ、そうか」
「そうよ。中学生は忙しいのよ」
「高校生よりもか」
「それも知ってると思うけれど」
 くすりと笑って兄に問うてきた。
「お兄ちゃんも中学生だった時があるんだし」
「遠い昔の話だ」
 しかしこう答える兄だった。
「そんなことは忘れた」
「都合のいい記憶ね」
「自覚はしている。とにかくだ」
「ええ、キャンデーね」
 話はやはりそこに重点があった。
「置いておくからね」
「あと明日買っておく」
「買うの」
「そうだ、また一ダース」
 こう妹に述べる。
「買っておく。今度は一日一本にしておけ」
「わかったわ。一日一本ね」
 キャンデーの話が終わると未久は姿を消した。牧村はそれからも暫く練習をしていたがやがてそれを終えキャンデーを口にした。こうした日々を送り戦いに備えていたがある日。昼に街の橋の辺りをサイドカーで進んでいるとその横に一台のオートバイが張り付いてきた。
「!?バイクか」
「髑髏天使だな」
 直接彼の脳に語り掛けてきた声だった。
「そうだな。間違いないな」
「そうだと言えば」
 脳内で答えた。これで通じるかとも思ったが通じた。
「倒させてもらう」
 こう返事が来た。
「今ここでな」
「魔物というわけか。しかし」
 ここで彼は自分の左にいるそのマシンを見た。見ればごく普通のバイクであり男は漆黒のライダースーツを着て白いヘルメットを被っている。それだけ見れば普通の人間に見える。
「最近の魔物はバイクにも乗るのか」
「普段は人として暮らしている」
 これが魔物の返事だった。
「だからだ。これもまた当然だ」
「そうか。人としてか」
 今の返答で牧村はあることがわかった。それは魔物というものは普段は人に化けその中で普通に暮らしているということだ。だから彼が今まで、髑髏天使になる前に擦れ違った者達の中にも魔物だった者がいてもおかしくはない。このことがわかったのだった。
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