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第四話 改造その六
「だが。変わったのならいい」
「うむ。じゃが一つだけ言っておこう」
「一つだけ?」
「エネルギーはガソリンだけではなくなったぞ」
「ガソリンだけではない」
「そうじゃ。今まではガソリンでしか動けなかったが」
 バイクといえば普通はそうである。しかし博士の今の言葉はそれを真っ向から否定するものだった。少なくとも牧村にとってはそうだった。
「これからは違うのじゃよ」
「ガソリン以外でも動くのか」
「その通り。大気中のあらゆるエネルギーを吸収してな。動くようにしておいた」
「ではいざという時に」
「ガス欠もない」
 このことをはっきりと牧村に教えてきた。
「それも全くな」
「それはかなり大きいな」
「魔物との戦いの時サイドカーが動けないとなったら大変じゃろう」
「ああ」
 これはその通りだった。いざという時に頼りになるであろうことはもうわかっている。nあらばそれが動けないとならばそれだけで敗北に直結する。博士の読みはここではかなり鋭かった。
「だからじゃよ。まずはそれじゃな」
「そうか」
「まあ後はおいおいわかる」
 博士が言うのはここまでであった。
「おいおいな」
「後は戦ってからか」
「必ず悪いようにはならん」
 またしてもしっかりとした言葉であった。
「君にとってもな」
「では。有り難く使わせてもらおう」
 こう言ったうえでサイドカーのハンドルを握ったのだった。
「これからな」
「うむ。ああ、そうじゃ」
「まだ何かあるのか?」
「アクセルやらブレーキやらじゃがな」
 博士が今度言ったのはこのことだった。
「少し古くなったので整備しておいたからな」
「そうか。それも済まないな」
「それではな。頑張って来るのじゃよ」
「わかった。こいつの力も借りて」
 ヘルメットを被る。いよいよ発進だった。
「魔物を倒して来る。何体でもな」
「わしも調べ続けるからな」
 博士の言葉に責任感が宿った。
「その都度来てくれ。ではな」
「また明日だな」
 牧村はアクセルを入れた。確かにそれは今までとは比較にならないまでに軽くそして強いものだった。爆音を聞きつつ発進する。そうしてテニス部の部室に向かうのだった。新たなものを身に着ける為に。
 フェシングとテニスの掛け持ちは確かにハードであったがそれでも彼にとっては実に得るものが大きかった。身体はこれまでよりさらに引き締まりそのうえ動きは段違いによくなった。家で剣やラケットを振る動作一つでも日に日に速く鋭いものになっていた。
「動き、またよくなったね」
「そうか」
 今は庭先でラケットを振っている。それを前と同じく窓のところから見て声をかけてきた未久に対して言葉を返す。その間にも素振りと左右への動きを欠かさない。
「それにしなやかになったわね」
「しなやかか」
「柔軟もしてるのよね」
 このことを兄に対して問うのだった。問いながら右手に持っていたアイスキャンデーの袋を破る。白いミルクのアイスキャンデーである。
「お部屋とかで。そうよね」
「あれは欠かせない」
 こう答えてそのことを認めるのだった。
「あれはな。しないと怪我をする」
「それに身体の動きもよくなるしね」
「余計にな。だから毎日している」
「いいことだと思うわ。私だって体操部じゃない」
「ああ」
「だから余計に。柔軟が大事なのよ」
「体操は身体が柔らかくないとどうしようもないからな」
 当然それだけではない。体操は身体全体を駆使するスポーツであり考えようによってはテニス等よりもさらにハードなものだ。未久はそれを中学校に入ってからずっとしているのだ。
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