第二十六話 座天その十三
「今はだ」
「おや、何故でしょうか」
老人は今の牧村の言葉を受けてすぐに問うてきた。
「死は必ず来るのですからいいのではないですか?」
「そうだ。それで何故そんなことを言う」
老人だけでなく美女もこのことを問うのだった。
「遠慮することはないのだぞ」
「俺が死ぬ時は今ではないということだ」
このことをまた言うのだった。
「少なくとも貴様等との戦いで死ぬつもりはない」
「だからですか」
「今ではないと」
「そうだ。俺は戦いでは死なない」
語る言葉が強く確かなものになっていた。
「決してな」
「では。話は決まりですね」
「ここで私達と戦うのだな」
「来い」
二柱の魔神達を見据えながら告げる。
「両方相手をしてもいい」
「いえ、そうはいきません」
今の牧村の言葉をその穏やかな笑顔で否定した老人だった。
「そういうわけにはです」
「ではいつも通りか」
「はい、貴方のお相手は私の手の者が務めましょう」
こう申し出るのだった。
「それで宜しいでしょうか」
「俺としては相手はどちらでも構わない」
「左様ですか」
「倒すだけだ」
言葉に剣が宿った。
「それだけだ」
「わかりました。では貴方には私が」
「私の相手は死神か」
「そうなるな」
死神は今の美女の言葉に返してみせた。
「不服という言葉は言わせはしない」
「安心しろ、そんな野暮なことを言うつもりはない」
美女もそうしたことを言うつもりは毛頭なかった。
「ただ。楽しませてもらうだけだ」
「それだけか」
「そうだ。それではだ」
魔神の目が赤く光った。するとだった。
「この者を出そう」
「それは」
出て来たのは。黒い目をした女であった。その姿はアフリカのある部族の服装そのままであった。
それだけ見れば人間に見える。しかし全身から放たれる気配がそうではないと告げていた。
「イブリースだ」
「アフリカにもいたのか」
「そうだ。私の配下でもある」
こう死神に告げる美女だった。
「そのことは知らなかったのだな」
「その魔物の名前は知っていた」
このことにはすぐに答える死神だった。
「だが。貴様の配下だったとはな」
「あの世に戻る前に教えておいておく」
また死神に告げる美女だった。
「そしてそのまま永遠に帰っては来ない」
「その魔物が私を倒すというのだな」
「その通りだ。ではイブリースよ」
「はい」
まるで人形の様な声で美女に応える魔物であった。
「死神を倒すのだ」
「わかりました」
「それではだ」
死神は両者の話を受けてであった。まずは目玉に告げた。
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