第二十六話 座天その三
「悪いがそこまではわからん」
「そうか」
「わかっているのはここまでじゃ。そして君が今主天使であることじゃ」
「中級の最上位ですよ」
またろく子の首が伸びてきて牧村に告げてきた。まことによく伸びる首である。
「それは御承知ですよね」
「知っている。それでだ」
「はい。それではです」
「何だ」
「あとは三つです」
残る階級の話だった。
「まずは座天使ですけれど」
「それについてはわかってはいないか」
「うむ。それもこれから調べるところじゃ」
言いながらまた新しいものを出してきた。それは。
今度は縄であった。そして何かの絵文字だ。見ればマヤかアステカのものであるらしい。
「少し待ってくれ。解読にかかる」
「中南米か」
「そうじゃ。何しろ中南米のことは何もかもがわかりにくくて困る」
言いながら苦笑いになっている博士だった。
「スペインが滅茶苦茶をしてくれたからな」
「コンキレスタドールか」
「本当に見事に破壊してくれた」
皮肉ではなく批判であった。
「おかげでこうしたこともわかりにくい」
「調べることもか」
「そうじゃ。とにかく資料を集めるだけでも大変じゃ」
言いながら早速解読に入るのだった。
「実にな」
「とか何とか言いながら調べるからね」
「博士はやっぱり凄いよ」
こう話すのだった。
「生粋の学者だよね」
「それも老いてなお盛んな」
「さて、では暫し待っておいてくれ」
牧村に告げてそのうえでさらに調べる。
「吉報を待ってな」
「わかった。それではだ」
牧村は博士の言葉を受けて背中を壁から離す。そうして部屋を後にしてサイドカーに乗る。そのうえで若奈のあの喫茶店に向かうのだった。
「あら、お兄ちゃん」
「むっ」
店のカウンターにいたのは未久だった。彼女はにこりと笑って彼に声をかけてきたのである。
「来たんだ」
「来たのかじゃない」
表情を変えずに言葉を返す兄だった。
「何故御前がここにいる」
「ここにいるって決まってるじゃない」
妹もまた兄に言葉を返す。だがその顔は彼とは正反対ににこやかな笑顔であった。
「お菓子を食べる為よ」
「それでなのか」
「そうよ」
まさにそうだというのである。
「だからここにいるのよ」
「あっ、牧村君」
ここでカウンターから出て来たのは若奈だった。エプロン姿でいつもの明るい笑顔で彼に対して声をかけてきたのである。
「いらっしゃい」
「中学生が喫茶店にいていいのか」
「細かいことは言わないでよ」
また笑って返す妹だった。
「そんなこと」
「そうそう」
若奈も未久の味方であった。
「今時これ位はいいじゃない」
「お兄ちゃん頭古いわよ」
援軍を得てさらに攻撃の手を強める妹であった。
「今時喫茶店位はね」
「金はあるのか」
「お母さんが出してくれたわ」
そうだというのである。
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