第二十四話 妖異その八
「人間として料理がわかっており人が側にいることはこのうえなく幸せなことじゃ」
「そうか」
「そうじゃよ。それではじゃ」
その幸せについてさらに話す博士であった。
「君はさらに幸せになる為にしなければならんことがある」
「何だ、それは」
「奥さんを貰うことじゃ」
それだというのである。
「いい奥さんをじゃ。当然料理上手なのう」
「そういう奥さんをか」
「左様。わしの様にじゃ」
ありげなく自分自身のおのろけもその話の中に入れる博士であった。その八十年もの間共にいるまさに糟糠の妻のことをである。
「貰うことじゃな」
「もう二人もいるんだしね」
「あと一人じゃない」
「頑張ったら?」
妖怪達もここぞとばかりに話すのであった。
「是非ね」
「そうすれば牧村さんはかなり幸せになれるよ」
「わかった」
妖怪達のそのこオt場に静かに頷く牧村だった。そしてそのうえでこう言うのだった。
「そのうちにな」
「まあ今でなくてもよいがのう」
博士は今はいいというのだった。
「中には学生結婚する者もおるがじゃ」
「俺はそれには興味がない」
学生結婚について、ということである。
「全くな」
「そうか。ないのじゃない」
「ない」
今度ははっきりと答えた牧村だった。
「全くな」
「わかった。まあ大学を出てから考えても遅くないことじゃ」
「料理か」
「料理を楽しむということは人間の最高の喜びじゃぞ」
「僕達もね」
「その通りだよ」
妖怪達もだと。彼等自身から言ってきたのだった。
「魔物はそういうことしないからね」
「それも全くね」
「魔物は味あうことはしないのか」
「ああ、それじゃがな」
このことについては博士が言ってきたのだった。
「わし等が食べるようなものは食べんということじゃよ」
「そういうことか」
「妖怪から魔物になればじゃ」
博士の説明は続く。
「舌も変わるのじゃ」
「それで食べるものも変わるのか」
「それこそ木の枝でも石でもじゃ」
いきなりそういうものからであった。
「無造作に何でも食べてじゃ」
「無造作にか」
「他には人間を食べる場合もある」
博士の言葉はここで不吉なものになった。
「人間をのう」
「そうか。人食いもいるのか」
「人だけでなく妖怪も食う」
それもあるのだと。博士は話した。
「つまりかつての同胞もじゃ」
「妖怪から魔物に分かれたからね」
「そうなるんだよね」
妖怪達も話してきたのだった。
「それで僕達も随分と困ったよ」
「かなりやられてきたしね」
「人やかつての同胞も食らうか」
「じゃから舌やそうしたものが全く変わっていくのじゃよ」
博士が今話すのはそのことだった。
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