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第三話 日々その六
「そうすると少しずつだが違ってくるさ」
「そういうものか」
「お兄さんもそうじゃないのかい?」
 カップを磨きながら牧村に問うてきたのであった。
「何かしてるだろ、毎日」
「いや、別に」
 この問いには何の感慨も意志も見せずに答えた。
「何もないな」
「けれどやらなければいけないことができたんだろう?」
「ああ」
 それは否定しない。肯定すると共にまたあのことを思い出すのだった。髑髏天使としての闘いのことを。そのことを思い出すのであった。
「だったらそれに関することを毎日続ければいいさ」
「毎日か」
「そうすれば全然違うからね」
「そういうものだな」
 その二杯目の紅茶も残り少なくなっていた。もうこれで終わるつもりだった。
「しかし。それでも」
「それでも?」
「何をするべきか」
 それが今一つわからないのだった。何しろ闘いというものを経験したことは今までなかったからだ。それで何をすればいいのか。わかる筈もなかった。
「それすらな」
「まあやってるうちに見つかるさ」
「見つかるか」
「見つかるものだ。やっていたらな」
 マスターは語り続ける。
「そのうち見つかる。そういうものだよ」
「正直なところそうなのかと思う」
 これは牧村の本音の言葉だった。
「見つかればいいがな」
「大丈夫だって。それは」
「ああ。さて」
 ここで飲み終わった。それを自分で確認してからまたマスターに声をかけた。
「お勘定だな」
「一杯分でいいよ」
「いいのか」
「二杯目はサービスさ」
 相変わらずコップを拭きながらの言葉だった。笑顔も忘れてはいない。
「だからさ。いいんだよ」
「ではそれでいいな」
「ああ、お金はそこに置いてくれたらいいからさ」
「わかった」
 マスターの言葉に頷き懐から財布を取り出した。そこから小銭を出してそれをカップの横に置いたのだった。そのうえで席を立った。
「それではな」
「じゃあまた今度な」
「今度はデザートも頼むか」
「クレープかい?それともケーキかい?」
「クレープだな」
 声は微かに笑った感じになっていたが表情は変わってはいない。
「それを頼みたいな」
「クレープかい」
「それも食べてきていると思うが」
「勿論だよ。クレープもね」
 ここでマスターは少し薀蓄に入った。
「皮が問題なんだよ。美味しい皮にするには一朝一夕にはできないんだよ」
「そこでまた基本か」
「そういうことさ。それじゃあね」
「ああ、またな」
 最後にこう述べて店を出た。店を出てそのまま家に帰りこの日は終わった。次の日彼は山の方に行っていた。学校が終わってただのドライブであった。
 二車線の道路の左右は見渡す限りの森であった。緑の木々が連なっている。その木々の間を走っているとやがて目の前に。何かが立っているのが見えた。彼はそれを見てあることを察した。
「出て来たな」
「髑髏天使だな」
 見れば外見は普通の男だ。若い背の高い男である。
「そうだな」
「だと答えたらどうする」
 サイドカーを止めた彼はそれから降りながらこう男に言葉を返した。
「どうするつもりだ」
「決まっている。食らってやる」
 これが男の返答だった。
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