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第七話 九階その九
「それはな。最初からやっていた」
「そうだったんだ」
「だがな」
 しかしここで彼はまた言うのだった。
「その他にもやってみてはいる」
「ああ、だから話になってるんだね」
「ラケットもそれぞれなら剣もそれぞれだ」
 これも髑髏天使としての言葉だが眼鏡にも金髪にもわかる話ではない。しかし牧村は元々このことを話すつもりはなかったのでどうでもよかった。
「だからだ」
「ふうん」
「それにしても。面白いものだな」
 ここでまた本を開いてきた。またあのカバラの図式のページだ。
「天使か」
「ユダヤ教のね」
「わかった。それも勉強していく」
「色々と頑張ってるんだね。じゃあこれで本当に」
「またな」
「ああ、また会おう」
 二人に対して別れの挨拶を告げる。
「またな」
「うん」
 こうして二人と別れる。後は暫くその本を読んでいたがそれも閉じ博士の研究室に向かった。しかし入り口のカードは不在になっていた。
「誰もいないのか」
「あれっ!?」
 しかし扉の向こうから声がしてきた。
「牧村さん?」
「来たの」
「その声は」
 誰からの声かすぐにわった。幾つもあった。
「御前達か」
「そうだよ」
「何しに来たの?」
 扉の向こうから牧村に対して尋ねてきた。
「何なら入る?」
「ドア開けるけれど」
「博士はいないのだな」
「ええ、そうです」
 今度はろく子の声が聞こえてきた。
「今はおられませんが」
「そうか。しかし」
 だがここで牧村はふとした感じで言ってきた。
「ここで話すのも何だ。中に入っていいか」
「どうぞどうぞ」
「お茶とお菓子があるよ」
「コーヒーもね」
「コーヒーは今飲んだばかりだがまあいい」
 今はそれとは別のことで来たからだ。
「では中に入らせてもらう」
「はい、どうぞ」
「いらっしゃい」
 こうして牧村は博士の研究室に入った。中に入るといるのは妖怪達ばかりでやはり博士はいなかった。それでも妖怪達は随分陽気な顔をしていた。
「今日も来てくれたんだ」
「お菓子あるよ」
「お茶もね」
「ああ」
 そして彼はいつもの無愛想だった。妖怪達が差し出した席に座りそこから話をする。そうして行われる話はまずは妖怪達に対する礼からであった。
「有り難う」
「いやいや」
「それには及ばないよ」
 妖怪達は相変わらずの陽気さで彼のお礼に返す。
「こんなのはね」
「それにしてもどうしたの?」
「どうした?」
「うん。いつもに比べても」
「そうだよ。顔が暗いよ」
 彼を囲んで言ってきたのである。
「何かあったみたいに」
「闘いには勝ったんだよね」
「勝っただけじゃない」
 饅頭の一つを受け取ってからの言葉だった。まずはそれを包んでいるビニールを剥がしていく。奇麗な茶色のその皮が如何にも美味そうである。
「なった」
「なったって?」
「大天使だ」
 このことを妖怪達に話すのだった。
「大天使にな。なった」
「へえ、大天使になったんだ」
「その噂の」
「そうだ」
「それでどんなのじゃ?」
 子泣き爺が彼に問うてきた。
「その大天使というのは」
「まず翼が生えた」
「へえ、翼が」
「背中から生えたんだよね」
「その通りだ」
 また妖怪達に答える。無愛想なままだが。
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