表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大怪獣ゲスラ  作者: ロッカ&参照太夫
7/45

  警報

 ところで、……外ではサイレンが鳴りだした。


 友和がaタイプに言った。

「何だろ? フェロモン号ならブザー! ブザー! ブザー! だ。これは、ウ~! ウ~! ウ~! だ」


「特異点警報じゃない事は確かね」

 と口の回りにサンタクロースの白髭のように、生クリームをべったり付けたaタイプが言った。


 自分に切り分けられたケーキを瞬く間に食べてしまい、エンタメから貰ったぶんも、友和がやったぶんも、あっという間に平らげてしまった。


 善行が自分の手付かずのケーキの皿を、aタイプに差し出しながら言った。

「なんだろ? 凶悪犯が脱走したのか?」


 ロリ山田もaタイプにケーキを差し出しながら言う。

「あははは。サンタクロースの墜落だったりして」


 ──ウ~! ウ~! ウ~!


 サイレンは鳴り止まない。

「はむ、はむ、はむ、はむ、はむ」

 aタイプは新たなケーキに没頭している。


 エンタメが友和に言った。

「aタイプのコロニーの中で、一番大きな施設って、何だと思う?」


 即座に友和が答えた。

「お菓子の工場だろ?」


「あははは、あれ見りゃ誰だって分かるよな。──

 情報部のデータベースで見た事あるんだ。

 砂糖や果糖の消費量が、同じ規模の宇宙コロニーの十倍以上なんだ。

 だけど、aタイプにデブはいない。わははは、これも宇宙の七不思議だ」


「はむ、はむ、はむ、はむ、はむ」

 谷垣の分も、マスターの分も貰って食べている。

 これで結局、大きなケーキを、まるまる一個食べた事になる。

 aタイプにとっては、この瞬間こそが至福の時なのだ。


 ところでサイレンは鳴り止まない。


 ──ウ~! ウ~! ウ~!


「いいかげんうるさいなあ」

 と谷垣が言った。


「やっぱ、事件かな?」

 と善行。


 にわかに、強烈に嫌な臭いが立ち込めてきた。

「ひっどーい! せっかく美味しいの、食べてるのにー!」

 aタイプが怒った。もう、しっかり食べ終わっているのだが。


 臭いはだんだん強くなる。


「なんだ? 鶴田川か?」


「うんこくせーっ」


「こりゃ本当に、うんちの臭いだよ」


「あーん、息が詰まりそう」


「店のにおいじゃないですからね!」

 とマスター。



 たまらず全員、外に飛び出した。

 大通りには、ラーメン屋から、バーや居酒屋や、コンビニや終夜レストランや、雀荘から、客や店員達が飛び出してくる。


 ミニクラブやキャバクラや、もっと怪しい店からも、悩ましい薄着のおねえちやん達が、とりあえず上着を羽織っただけの、なまめかしい生脚姿で飛び出してきた。


 通行人も立ち止まり、思わず顔をしかめる。

 猫も思わず立ち止まり、砂を掻く仕草をする。


 サイレンはまだ鳴っている。

 人々がざわめいている。


「こりゃ、ずいぶん久しぶりに聞くけど、洪水警報だよ」


「じゃ、やっぱり鶴田川の臭いか?」


「もお! 涙が出てきちゃう。せっかく美味しかったのにいっ!」

 とaタイプ。


「俺さあ、本場のトンコツだって言うからさあ、本場もんは、こんなに臭いのか? って、もうちょっとでオヤジさんに聞くとこだったよ」

 とラーメン屋から飛び出してきた客。


「いや、お客さん、実は、我ながら今日のは、ずいぶん臭く仕上がったなって。あっはははは」

 とラーメン屋のオヤジ。


「きゃはははアタシは、お客さんの体臭キツイなって……」

 とファッションヘルスの女の子。


「何言ってんだ! 俺は、この女、くっさいすかしっ屁をしやがるって……」

 と客。


「それにしてもくっせーなっ」


「このあたり一帯、臭いのかな?」


「友和さん、いったい何の臭いなの?」

 とaタイプ。


「やっぱこれは、うんち、だろ? うんち警報。なんちゃって」

 と友和。


「きゃははは。あのオジサン〝うんち警報〟だってえ」

 とファッションヘルスの女の子。


 悪臭の中、地鳴りのような音が聞こえてきた。


 ──ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ~


「嫌な感じ」


「ダンナ、これは、ただ事じゃないぞ!」

 とエンタメが言った。


 次の瞬間、


 ──ザッパーン! ドドドドドド~


 なんと、水が、いや、真っ黒な泥水が一気に押し寄せてきた。

 真夜中の鉄砲水。これはたまらない。


 大通りは一瞬にして川となった。


「きゃー助けてー」


「うわあー! ウッソみてー!」

 人々の悲鳴も濁流の音にかき消された。


 ──ザザー! ゴボゴボゴボ! ザザー! ザザー! ゴボゴボゴボ!~


 ジャック・ルビーの店先に出ていた連中は、外灯や電信柱にしがみつき、何とか踏みとどまった。

 善行が水の勢いにひっくり返って、店の中へと押し戻されて行く。


 ポストにしがみついているエンタメが叫んだ。

「aタイプ! ダンナ! 早く車に乗るんだ!」


 水はあっという間に付近一帯を満たした。

 マスターとロリ山田と谷垣は、ビルの外側の非常階段に上がり、ずぶ濡れの服をしぼっている。


 せっかくのクリスマスだというのに、誰もが濡れ鼠となり、ぶるぶると震えている。

 街角のスピーカーから、女性アナウンサーのインフォメーションが流れた。


 ~ピンポロリ~ン~

 子ノ渡市よりお知らせです。

 子ノ渡市役所、生活土木部、河川管理課よりお知らせします。先程、上子かみこわたの砂防ダムに大量の汚物が流れ込んだとの報告がありました。

 その結果、砂防ダムが詰まって、川の水が溢れ出した模様。

 市民の皆様、落ち着いて下さい。

 水位はこれ以上あがる事はありません。これは一次的なものです。

 繰り返します。水位はすぐに下がります。

 どうか落ち着いて下さい。引き続き事情が判り次第お知らせします。

 ~ピンポロリ~ン~


 友和とaタイプそしてエンタメは、やっとの思いで車のドアを開け、大量の汚水と共に座席へ倒れ込んだ。

 乗り込むと同時に、なんと、エンタメの個人タクシーは空中に浮上した。空飛ぶタクシーである。


 ブルブルと車体を震わせて、マフラーから汚水をジャージャー吐き出した。

 そして、濡れ鼠の友和とaタイプを後部座席に乗せたまま、砂防ダムの上空へ向って飛んで行く。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ